台風5号がゆっくり北上 寿命は過去の「超級怪台」の記録(19日6時間)に迫る

気象衛星赤外画像(平成29年7月30日21時)

 台風5号は、7月21日9時の発生から10日目で、小笠原近海をゆっくり北上の見込みです。

北上の傾向がではじめた台風5号

 台風5号は台風6号と、その後は四国沖にあった低気圧(寒冷低気圧)と相互作用(藤原の効果)をおこし、複雑な動きをしました(図1)。

図1 台風5号と台風6号、寒冷低気圧の移動(7月25日21時頃)
図1 台風5号と台風6号、寒冷低気圧の移動(7月25日21時頃)

 そして、台風5号は上空に強い風が吹いていない小笠原近海で動きが遅くなりました

 台風は、上空の風に流されて動きますが、地球の自転の影響により、北へゆっくり向かう性質も持っていますが、この性質は、風が強い台風(発達している台風)ほど大きくなります。

 小笠原近海は海面水温が高い海域ですので、台風5号が海域に留まっている間に豊富な水蒸気の補給を受けて発達し、タイトル画像にあるように、台風5号にははっきりした目が見られるようになりました。

 この発達のために、台風5号が北へゆっくり向かう性質が強まっています。

 台風5号の大きな予報円が重なり、台風がどこを目指しているのか分からない予報が続いていましたが、30日夕方頃からの予報では、台風5号に北上の傾向がでてきました(図2)。

図2 台風5号の進路予報(7月31日0時の予報)
図2 台風5号の進路予報(7月31日0時の予報)

 とはいえ、上空で強い西風(偏西風)が吹いているのは、東北地方の上空と、台風5号とかなり離れていますので、台風の動きはゆっくりで、5日先でも日本の南海上にあり、超級怪台と呼ばれた昭和61年の台風14号の記録(19日6時間)に迫る長寿になりそうです。

台風の発生と消滅

 気象庁では、天気図上で最初に台風を解析したとき、その天気図の時刻をもって台風の発生時刻としています。

 したがって、北西太平洋を広くカバーする「アジア太平洋天気図」を作成している3時、9時、15時、21時の4つの時間に台風発生が多くなります。

 また、日本付近の天気図である「極東天気図」は、3時間ごとに作成していますので、日本付近で発生する台風については、0時、6時、12時、18時に発生ということもあります。

 厳密にいうと、天気図上で初めて確認された時点では、台風になってから、ある程度時間がすぎています。その時間は、どの位かはわかりませんが、少なくとも前の天気図が書かれた時刻までよりも短い時間です。

 台風の消滅も同じです。

 存在していた台風が、天気図上で最初に台風ではなくなった(熱帯低気圧に変わった、温帯低気圧に変わった、気象庁の担当領域である北西太平洋域外に達した)時間が、台風の消滅時刻です。

 消滅時刻も「アジア太平洋天気図」や「極東天気図」の作られる3時間ごとの時刻が多いのですが、発生と異なるのは、日本に接近・上陸した台風については、1時間ごとに「台風天気図」を作っていることです。まれに、 前記の3時間ごとの時刻以外で消滅ということがあるのはこのためです。

 天気図上で初めて確認できなくなった時点では、台風でなくなってからある程度すぎています。しかし、この時間も、前の天気図が書かれた時刻までよりも短かい時間です。

 つまり、発生でも実際よりやや遅め、消滅でも実際よりやや遅めです。

 台風発生の日時から台風消滅の日時までが「台風の寿命」です。台風発生後に一時的に熱帯低気圧に衰えていた期間も含めて台風の寿命です。

長寿台風

台風の寿命が長い台風を、長寿台風といいます。

長寿台風の寿命について、具体的な定義はありませんが、平均寿命が約5日ですので、10日の寿命があれば、長寿台風と呼んでいいのではないかと思います。

気象庁ホームページには、台風の統計をとりはじめた昭和26年(1951年)以降の寿命が長い台風のランキングがあります(表)。

表 長寿台風のランキング(気象庁ホームページより作成)
表 長寿台風のランキング(気象庁ホームページより作成)

夏の台風は、台風の移動に関係が深い上空の流れが弱いことなどから著しく不規則な進路をとることが多く、その場所が海面水温の高い海上であるなら長寿台風となります。

これによると、一番長寿の台風は、昭和61年(1986年)の台風14号で、寿命は19日と6時間です。

この台風は、台湾で「超級怪台」と呼ばれ警戒した台風です。

昭和61年の「超級怪台」

昭和61年8月18日に南シナ海で発生した台風14号は、北西に進みながら発達し、 20日には向きを北東に変え、発達したまま台湾の西海岸に上陸しています(図3)。

図3 昭和61年の台風14号の経路
図3 昭和61年の台風14号の経路

台湾に上陸する台風のほとんどは、東海岸に上陸です。1~2割程度は南シナ海から上陸するものがありますが、ほとんどが発達していない台風です。

台湾中央気象局によると、発達した台風が台湾の西海岸に上陸したのは、明治29年(1896年)の同局開設以来、初めてです。

そして、膨湖、雲林、嘉義の3県を中心に死者63名、行方不明者28名などの大きな被害が発生しています。

台風第14号は、台湾に大きな被害をもたらしたばかりでなく、接近したフィリピンや上陸したベトナムでも大きな被害が発生しています。

台風第14号は,日本や中国を覆う高気圧に北上する進路を阻まれたための迷走でしたが、この間、大陸に上陸せず南の暖かい海上にあったことが長寿の原因といえます。

図4は、台湾中央気象局が発表した台風第14号の経路と8月28日21時45分発表(図中とも現地時間、1時間を加えると日本時間となる)の台風の進路予報です。

図4 台湾中央気象局が発表した台風14号の経路と予報
図4 台湾中央気象局が発表した台風14号の経路と予報

日本の解析と多少異なり、台湾に2度上陸したと解析されていますが、強力な台風で、しかも長期間にわたって台湾近海で怪しげな動きをした台風であったためと思われますが、台湾の新聞では台風14号を「超級怪台」と報じています。

台風5号の名前は「ノルー」

気象庁では毎年1月1日以後、最も早く発生した台風を第1号とし、以後台風の発生順に番号をつけています。

同時に、台風委員会において、各国提案をもとに話し合って決めた表に従って台風に名前をつけています。この名前は、台風防災について各国が協力して行おうとするシンボル的な存在です。

台風5号には、韓国が提案した「ノルー」という名前がついています。

「ノルー」朝鮮語ですが、ヨーロッパから朝鮮半島にかけて生息する鹿の仲間である「ノロジカ(Reo Deer)」の意味です。

台風には従来、米国が英語名(人名)を付けていましたが、北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する各国の政府間組織である台風委員会(日本含む14カ国等が加盟)は、平成12年(2000年)から、北西太平洋または南シナ海の領域で発生する台風には同領域内で用いられている固有の名前(加盟国などが提案した名前)を付けることになりました。

出典:気象庁ホームページ

土用波と台風情報に注意

 太平洋の海辺のレジャーでは、風が弱いのに大きな波がおしよせる「土用波」に注意です。

 土用波は、遠方の台風で発生した波浪が、波頭が丸くて周期が長いという特徴をもった波である「うねり」となって日本近海にやってきたもので、台風5号による土用波が太平洋沿岸に入ってきます。うねりは、海岸地形の影響を受けやすく、場所によっては極端に高い波となることもあり、油断できない波です。

 昔の人は、原因がわからず、土用の頃から起きる現象なので「土用波」と呼び、注意してきました。

 大きな予報円は、今の台風進路予報の限界であり、「台風進路予報が難しいので最新情報でチェックが必要」という、利用者の重要な情報を含んでいます。

 台風の進路が定まらない状況はしばらく続きますので、台風情報に注意しなければならない一週間になります。