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夜の稲妻雨招く、朝雷川越すな

饒村曜気象予報士
Thunders in the night(写真:アフロ)

夜の雷に対する諺

夜の雷に対する諺は、昔から数多く残されています。

例えば、「天気予知ことわざ辞典(1984、大後美保、東京堂出版)」には、

「夜の稲妻雨招く、朝雷川越すな」

「夜雷が起きれば雨多し」

「夜おこる雨は三日続く」

「夜鳴る雷は長雨」 

などが収録されています。

これは、夜に雷がなるときには、大雨が長く続き、大災害となる可能性が高いことの反映です。

新潟県の記録的短時間大雨情報

上空を寒気が通過中で、大気が不安定となった新潟県では昨夜から積乱雲が発達して雷がなって1時間に100ミリを超える豪雨となり、洪水被害が発生しています。

梅雨前線による雨ではありません。梅雨前線の北側にある上空に寒気を伴った小さな低気圧による雨です(図1)。

図1 地上天気図(平成29年7月18日6時)
図1 地上天気図(平成29年7月18日6時)

このため、記録的短時間大雨情報は、6回も発表となっています。

7月17日23時40分佐渡市両津付近約110ミリ

7月18日 2時50分三条市下田地区付近約100ミリ

3時00分長岡市栃尾付近約100ミリ

8時00分加茂市付近約110ミリ

12時00分小千谷市付近約100ミリ

13時30分小千谷市付近約100ミリ

そして、本日(18日)9時の洪水警報の危険度マップでは、図2のように、一部では「極めて危険」という危険度となっています。

図2 洪水警報の危険度分布(2017年7月18日9時00分)
図2 洪水警報の危険度分布(2017年7月18日9時00分)

夜に大気が不安定になる条件

大気が不安定になるのは、一般的には下層が暖められる(暖気が入る)場合と、上層に寒気が入る場合です。

日射によって下層付近が温められると大気が不安定になり、積乱雲が発達して雷雨となりますが、日が沈むと下層付近の温度が下がり、不安定が解消されて夜の初め頃には雷雨は止みます。

これに対し、上層に寒気が入って大気が不安定になる場合は、夜昼関係なく起きますし、上層の寒気の動きは一般的にはゆっくりですので、長時間にわったて大気不安定が続きます。

昔からの諺でいう「夜の雷」は、台風などにより下層に暖気が入っているときもありますが、多くは上空に寒気が入っているときの雷です。また、上空には強い寒気が入り、同時に下層の強い暖気が入っているときは、広い範囲の大雨に警戒が必要です。

大気が不安定になる条件は、下層暖気、上層寒気に加え、下層に湿った空気が入る場合と上層に乾いた空気が入る場合の4つがあります。

大気が不安定となる4つの条件のいくつかが重なるとさらに大規模なものになります。

気象衛星の水蒸気画像では、大気の中層から上層で水蒸気が多い場所が白く、少ない場所(乾いている場所)が黒く映ります。

黒く映る場所を「暗域」とよび、気象衛星で集中豪雨を監視するときの着目点となっています。

図3は18日9時の水蒸気画像ですが、新潟県の発達した雷雲の近くに日本海から黒い部分が伸びており、乾燥した空気も上空に流れ込んでいることを示しています。

図3 水蒸気画像(平成29年7月18日9時)
図3 水蒸気画像(平成29年7月18日9時)

寒気を伴った低気圧が東へ

昨夜から新潟県に大気不安定をもたらした上空の寒気は、ゆっくり東に移動し、関東地方や近畿地方でも午後から大気不安定よる局地的な雷雨となっています(図4)。

これは、梅雨前線による広範囲で降る、ほぼ一様な降り方の雨ではありません。

上空の寒気による雨ですので、範囲は狭いのですが、非常に激しい雨となります。

大気の状態が非常に不安定となっている関東や近畿などでは、これから18日夜にかけて中小河川の氾濫や落雷、竜巻などの突風に十分な警戒が必要です。

図4 予想天気図(7月18日21時の予想)
図4 予想天気図(7月18日21時の予想)
気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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