キリスト教禁教下で天気予報方程式の基礎を作ったニュートンの誕生祝い
リンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を発見したとされるアイザック・ニュートンは、物理学において様々な物理方程式を作っています。
物体は力の作用をうけない限り、静止の状態あるいは等速直線運動をするという「運動量保存の法則(慣性の法則)」などです。
このため、物理学においては神様のような人です。
明治初期にニュートンの誕生を祝う
明治初期、多くの外国人が日本に招かれ、若者に西洋の学問を教えていますが、当時は、多くの人は江戸時代からのキリスト教は禁教という考えを持っていました。
明治政府も明治元年に「切支丹邪宗門厳禁」の高札をだし、諸外国の反発でこの高札を明治6年に撤廃したものの、キリスト教の活動を公式に認めるのは、明治32年の「神仏道以外の宣教宣布並堂宇会堂に関する規定」からと言われています。
教師である外国人はクリスマスを祝うパーティを開くことができても、生徒である日本人は参加できませんでした。
そこで、物理学を学んでいた東京大学(明治10年に開成学校と東京医学校が一緒になって誕生)の生徒は、物理学の偉人であるニュートン誕生を祝い、先生との交流を深めたと言われています。
ニュートンが誕生したのは1642年(寛永19年)12月25日、つまり、クリスマスの日だったからです。
これが、東京大学理学部などで行われている「ニュートン祭」の発祥と言われています。
キリスト教禁教があっても、物理学をより深く学んで近代日本を作っていった明治時代の人々の知恵を感じます。
気象学は物理学の一分野
気象学は物理学の一分野です。
地球の大気は引力によって地球に留まっていますし、さまざまな大気の動き(風)などは、ニュートンやその後継者たちが作った様々な物理方程式によって説明することができます。
物体に働く力の単位をニュートン(N)といい、圧力の単位はパスカル(Pa)といいます。
1ニュートンの力が1平方メートルにかかると、1パスカルの圧力になります。
気象学では、気圧をパスカルで表すと数値が大きくなるので、パスカルの100倍(ヘクト)という単位を使っています。
10万800パスカルでは使いづらいので、1008ヘクトパスカルというわけです。
天気予報は天気予報の方程式をコンピュータで解いて行う
将来の大気の様子は、3次元の格子点ごとに、風向・風速、気圧、気温、水蒸気量等で定量的に表し(図)、その格子点上に表された値をもとに、ニュートンや、その後継者が作った様々な物理方程式を使った天気予報方程式を計算することで求めることができます。しかし、様々な物理方程式は、複雑に組み合わされており、天気予報方程式は、数値解析という手間のかかる手法でしか解くことができません。
数値解析という手法を使うことから数値予報と呼ばれますが、数値予報は手作業ではまずできません。このため、大型のコンピュータが必要で、コンピュータの飛躍的な発展とともに大きく進化しました。今では数値予報がないと天気予報ができない時代になっています。
数値予報は、昭和30年にコンピュータを世界で最初に作ったアメリカの気象局で実用化され、日本では、昭和34年に当時の世界最大級の大型コンピュータを導入し、業務として数値予報をおこなうようになりました。アメリカ、スウェーデンに次いで世界で3番目という早い導入です。
戦後の貧しい時代であっても、日本の気象学の将来を見据えて数値予報に目をつけ、高価なコンピュータを工面して購入し、数値予報を導入していった昭和初期の人々の知恵を感じます。