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台風による停電どうする? 発生前の備えと発生後の注意点

中澤幸介危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長
(写真:Wakko/イメージマート)

過去最強クラスとされる台風10号が北上中です。気象庁などは最大級の警戒を呼び掛けており、早めに対策をとることが大切です。特に停電すると生活にさまざまな影響が出ます。雨戸をしっかり閉め、物が飛んでいかないように家の周辺を片付けるとともに、停電に備え、水道水を多めにためておく、お風呂場に水をためる、備蓄の点検をする、懐中電灯を身近に準備しておく、靴を近くに用意しておく、スマートフォンなどを充電しておく、さらに暴風域に入る前に洗濯や炊飯を済ませておくなど、今できる対策をしてください(急な物品の買い占めなどは決して行わないようにしてください)。また、停電復旧後の通電火災にも十分注意し、ブレーカーを落とすなどの対応をとってください。九州地方だけでなく、西日本や関東でも大雨による被害は考えられます。全国的に注意が必要です。

停電で起こりうること

今や私たちの生活に電気は欠かすことができないものです。その電気がもしも突然止まってしまったら、どんなことが起こるのでしょうか?

・電灯の明かりはもちろん消えます

・固定電話は、昔の黒電話以外は使えなくなります

・パソコンのインターネットも、ルーターやWi-Fiが使えなければつながりません

・公共交通は途絶し、道路交差点などの信号は消えます

・店舗は陳列棚の冷蔵や冷凍が切れ、レジも使えなくなり閉店が相次ぎます

・非常用発電施設がないガソリンスタンド、ATM、その他多くのサービスが停止します

・夏季、エアコンが使えず熱中症の危険が高まります

・防犯システムやガス漏れ警報機は作動しない場合があります

・酸素呼吸器など電源を使う医療機器を身につけている人は、生死にかかわる事態になりかねません

・ガスの供給が止まったり、給水ポンプが止まって水道が使えずトイレも水が流れなくなります

・駐車場などの電動シャッターは開かなくなります

台風により、家の周辺は飛来物が散乱し、木が折れ、もしかしたらあなたの家も窓が割れるなど大きな被害が出るかもしれません。

事前にできる対策

こうした事態に備えるには、具体的に何をすればよいのでしょうか。

例えばご飯を多めに炊いておく、お風呂や洗濯を先に済ませておく(その後お風呂に水をためておく)、水道水をペットボトルやバケツに多めにためておく、冷蔵庫は低めの温度に設定しておく(停電しても温度を保てるように)、スマートフォンやその他予備バッテリーを充電しておく、自宅の被災に備え、暗闇でも安全に家の中を歩けるように靴を身近に用意しておく、非常用持ち出し袋を用意しておくことなどです。

車をお持ちなら、普段からガソリンや軽油をなるべく満タンにしておくことで、停電時には有効なバッテリーとして活用することができます。

停電時の注意点や有効な対策

いざ停電が発生した場合は、まずは自分の安全を確保し、被害を拡大させないこと。その上で生活のことを考えましょう。

画像制作:Yahoo! JAPAN/原案:中澤幸介
画像制作:Yahoo! JAPAN/原案:中澤幸介

(1)身の安全を確保する

もっとも大事なことは自分の安全の確保です。突然の停電により、夜なら真っ暗になります。懐中電灯を身近な場所に置いておくことは防災の基本ですが、見える範囲は限られるため周囲に十分注意してください。慌てて動き回れば、つまずいて思わぬケガをする危険性があります。外出中なら、信号機が突然消灯することが考えられますので、夜に限らず走行中の車への注意が必要です。飛来物が散乱していたり、側溝やマンホールの蓋が雨や風で外れている可能性もあります。

停電対策ではありませんが、強風が収まるまでは窓は開けないでください。開けてしまうと、その隙間から風が吹き込み、障子やふすまを吹き飛ばしたり、天井を持ち上げ屋根ごと吹き飛ばすような被害になることもあり危険です。屋根は内側からの風圧に耐えられる構造ではありません。熱中症も心配ですが、水分を定期的に補給し、暑ければ濡れたタオルで顔や体を拭ってしのいでください。ラジオなどで暴風域を抜けたことを確認してから窓を開けるようにしましょう。

(2)被害を拡大させない、別の被害に巻き込まれない

次に考えるべきことは、被害を拡大させない、あるいは別の災害に巻き込まれないようにすることです。近くで火災が発生している危険もありますし、風で物が壊れかかっていることもありますので、常に五感を使って周囲の状況が危険でないかを確認します。ラジオやスマートフォンがあれば、必ずニュースや行政からの注意情報も確認するようにしてください。

ローソク火災に注意

明かり取りにローソクを使う方もいますが、災害に起因する停電の場合、ガス漏れの可能性なども考慮して火を使うことはできるだけ控えてください。電池式の懐中電灯やランタンを使うとよいでしょう。

一酸化炭素中毒に注意

可搬型のエンジン発電機は便利ですが、排出ガス中に高濃度の一酸化炭素を含むため屋内やテント内での使用は厳禁です。北海道の胆振東部地震でも一酸化炭素中毒で亡くなられた方がいました。

復旧時の通電火災に注意

停電解消時の通電火災を防ぐため、アイロンやドライヤー、電気ヒーターなどの電熱器具・装置は停電中はスイッチを切るとともに、電源プラグをコンセントから抜いてください。停電中に自宅等を離れる際は、ブレーカーを落としてください。特に浸水被害が出ている家では、給電再開時に、漏水などにより電気機器が破損したり、配線やコードが損傷していると出火の原因になります。建物や電気機器に外見上の損傷がなくとも、壁内配線の損傷や電気機器内部の故障によっても、再通電後、長時間経過した後、火災に至る場合もあるので、煙の発生などの異常を発見した際は直ちにブレーカーを落とし、消防機関に連絡してください。

食中毒に注意

停電が長期間にわたる場合には、食品の腐敗により食中毒などの危険も高まるため食事には十分注意してください。

犯罪被害に注意

防犯にも注意が必要です。被災地では停電中の性犯罪や盗難事件が報告されています。暗闇ではなるべく一人で出歩かないこと。戸締まりはしっかり行うこと。大切なのは、停電時の行動1つ1つが、別のリスクをもたらすということを覚えておくことです。

(3)生活に必要な電源を確保する

安全を確保して被害の拡大防止に十分注意した上で、生活に必要な電気を確保します。とは言っても、停電時にコンセントから電気を調達することはできません。発電機があればいいですが、無い場合には、なるべく電気を使わないよう心掛けましょう。内蔵バッテリーや電池で動く電気機器は、節電しながら重要度・優先度を考えて使うことが大切です。

スマホは節電、冷蔵庫は開閉控える

スマートフォンは画面をできるだけ暗くし、画面の自動オフまでの時間を短くします。低電力や省電力モードがあればそれを選択し、ブルートゥースを切ったり、余計なアプリを落とすことも有効です。冷蔵庫はなるべく開閉しないことで冷気を保ち食べ物をより長く保存することができます。

自動車の空間や電源を活用

強風が収まった後には、自動車の電気を使うというのも有効です。熱中症の恐れがあれば車に入って車載エアコンで暑さをしのげますし、ラジオも聞けます。本来はたばこに火をつける装置である「シガーソケット」から電気を取り出せます。12ボルトの直流の電流が流れていて、ここにUSBソケット変換アダプターを差せば、USB端末の端末(スマートフォンやタブレット)類は使えます。

シガーソケットに差し込むタイプのインバーターを利用すれば、家庭と同じ100ボルトの交流電源に変換でき、家電が使えます。使える電力の量はインバーターの出力と車のヒューズの容量によって決まります。ヒューズが壊れると買い替える必要がありますから、出力の大きな家電には使わないことがポイントです。

ちなみに、使用したい電気製品の消費電力や起動電力は、車に限らずあらゆる発電機を使う際に確認すべきことです。また、1500ワットや3000ワットのインバーターを車のバッテリーに直接つなぐ方法もあります。一方、ハイブリッド車の多くには、100ボルト・1500ワットまで使える電源が標準(またはオプション)設定されており、これでほとんどの家電を使える可能性があります(詳しくは車の説明書などを読んでください)。

電気自動車をお持ちなら、車から電気を引き込むV2Hという方法があります。「クルマ(Vehicle)から家(Home)へ」を意味するこの言葉は、電気自動車に蓄えられた電力を、家庭用に有効活用する考え方のこと。一般的な電気自動車は、家のコンセントから電気をもらって充電しますが、V2Hがある場合は、電気自動車の大型バッテリーを自宅の蓄電池のように扱うことができ、停電が起きた場合にもかなりの家電製品を使えるようになります。

心身に負担をかけず復旧を待つ

こうした注意や対策を強いられる中で、停電はいつまで続くのか、は何より気になる問題です。電力会社などから発表される復旧のめどは、正確でない場合も少なくありません。長期間に及ぶことも想定し、なるべく心身に負担をかけないよう心掛けながら復旧を待ちましょう。

危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長

平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト平成25年度事業継続マネジメントを通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務アドバイザー、平成26年度~28年度地区防災計画アドバイザー、平成29年熊本地震への対応に係る検証アドバイザー。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」「LIFE~命を守る教科書」等がある。

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