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72時間の壁を超えても諦めないで救助活動を―能登半島地震

中澤幸介危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長

令和6年能登半島地震の発生から72時間が経過した。一般的に被災後の3日を過ぎると生存率が著しく低下すると言われおり、72時間の壁は、災害における人命救助に関する用語となっている。72時間の根拠の1つとされるのは、1995年に発生した阪神・淡路大震災である。消防による救出者のうち、生存者の占める割合について日を追って見ると、早く助けるほど生存の確率は高く、被災当日の1月17日は救出者の75%(4人に3人)だったのが翌18日は24%、3日目は15%と推移し、4日目以降はわずか5%にまで低下してしまった。それ故、3日目に当たる72時間が生存率を大きく左右すると言われるようになった。

国土交通省近畿地方整備局の資料より
国土交通省近畿地方整備局の資料より

ただし、この人数はあくまで消防による救助活動の数字で、阪神・淡路大震災でガレキの下から救出された約1万8000人の約8割は、発災直後に近隣の住民による懸命な救出活動によって助け出されている。

また、生存している人は、当然、助けを求めるために声を出すなど、救出されやすい状況にあるだろうし、消防や自衛隊も、救出しやすい人から救出するであろうから、救出者に占める生存者の割合が日を追うごとに低くなるのは、当然とも言える。

実際、東日本大震災における自衛隊による人命救助者数の数を見ると、概ね発災から72時間が経過した段階で、自衛隊が救助できた人数が大きく減少していることが分かる。

2012年防衛白書の資料より抜粋
2012年防衛白書の資料より抜粋

つまり、救出者に占める生存者の確率は別として、生存者を救える数というのは、発災後の救助活動の人員と密接に関係し、いかに迅速かつ大規模な人員を人命救助活動に投入できるかで、活動の成否が分かれる。

今回の能登半島地震では、道路が寸断され、また大規模な火災が発生したこともあり、本格的な救助・救出がスタートするまでに時間を要した(個人的な感想になるが、初動に動員した緊急消防援助隊や自衛隊の数が少なすぎる)。その意味では、今なお生存者が多く取り残されている可能性もあり、引き続き早急な救出が求められる。

一方、水・食料を摂取せずに、72時間を超えると生き残ることが難しいことは、Rule of threes (survival) などと呼ばれ、72時間の壁のもう1つの根拠にもなっていることも確かだ。

詳細は下記記事を参照。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/805b7600fb0d5604dfa9300a2866ac3b0fe74e78

被災地での救助活動は難航しているようだが、救助にあたるすべての方に深く敬意を表するとともに、1人でも多くの方が救出されることを願う。

危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長

平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト平成25年度事業継続マネジメントを通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務アドバイザー、平成26年度~28年度地区防災計画アドバイザー、平成29年熊本地震への対応に係る検証アドバイザー。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」「LIFE~命を守る教科書」等がある。

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