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台風接近の数日前からやっておくべき対策「被災地などでは避難準備を」

中澤幸介危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長
台風15号の被害にあった千葉県鋸南町の住宅地(筆者撮影)

大型で猛烈な強さに発達した今年最強の台風19号が、10月12日からの3連休、日本列島を直撃する可能性が高まっている。政府は8日、各省庁の担当者を集めた関係省庁災害警戒会議を内閣府で開き、台風への備えを呼び掛けた。気象庁によれば、12日(土)の午後から13日(日)の午前にかけて東日本に最接近する可能性が高い。それまでの数日間にやるべきことは何か? 台風15号での被災地はどうすべきか、考えられる対策をまとめてみた。

数日前までに実施しておくべき対策

台風が来ることが確実になった時点で対策を開始すればいいと考えている人もいるかもしれない。しかし、その時点ではすでに間に合わないことも多い。例えば水や食料、乾電池など生活物資の買い出し。日常的に備蓄しておくことが望ましいが、台風15号での経験もあり、今回は、災害の直前に買い占めに走る人が多いことが予測される。確実に台風が来るかどうか分からなくても、備蓄量に不安があるのであれば、数日前の時点で購入しておいたほうがいい。ガソリンなど車両燃料も同じで、台風の接近直前、あるいは被害が出た後では入手できなくなる可能性が大きい。

被災地は避難準備を

先日の台風15号により大きな被害を受けた被災地で考えるべきことは、まず、自分の命をしっかり守るということ。被災した家でもそこに居たい気持ちは分かるが、台風が接近する中で、すでに屋根が大きく被災しているような家で過ごすことは危険だ。今のうちから避難所の場所を確認したり、非常用持ち出し袋の中身を見直すなど、避難所や安全な場所にある身内の家などに移れる準備をしておくことが大切だ。大雨が降り出したり強風になってからの移動は困難なため、早めの行動が求められる。

避難などで家を空ける際には、あらかじめブレーカーを切ってから出ていく(台風15号でも通電火災があったが、停電になる可能性が高いため)。ブルーシートがかかっていても、ブルーシートが吹き飛ばされる可能性もあるので、濡れて困る家電などはビニールで覆っておく。

行政に求められる対策

もちろん、行政は避難所を早めに開設する必要がある。その際、台風15号では、体育館で窓が割れたり、壁が剥がれ落ちる被害もあったため、避難所となる施設では、窓が割れない対策を施す必要がある。また、台風15号では、被害状況の確認に時間を要したため、防災無線をチェックしたり、防災無線が使えなくなることも想定して、改めて被害状況の確認の方法などを今の段階から再確認しておくことが重要だ。都道府県などが主体となって市町村やライフライン業者、関係機関らとの事前協議会を開き、対応を再確認しておくこともできる。台風の特徴は、来るタイミングが分かることである。

被災地に限らず、自治体はぎりぎりになって避難情報を出すのではなく、数日前から避難所を開設しておくぐらいの対策をしてほしい。

台風15号で被災した南房総市の富浦中学校の体育館(筆者撮影)
台風15号で被災した南房総市の富浦中学校の体育館(筆者撮影)

台風が確実に来ることが分かったら

あらゆる施設において、窓を守ることは台風対策の基本となる。台風15号の被害では、瓦や植木鉢が風で舞い、多くの施設の窓や壁を破壊した。割れた窓からは強風が入り込み屋根を吹き飛ばした事例もあった。

新しい住宅でも窓が被災することで屋根が吹き飛ばされた住宅がある(筆者撮影)
新しい住宅でも窓が被災することで屋根が吹き飛ばされた住宅がある(筆者撮影)

風が強まる前にはシャッターや雨戸を締め、鍵もしておく。もしシャッターや雨戸がなければ、養生テープで窓全体を補強する(タテ、ヨコ、ナナメと、できるだけ窓全体がカバーできるように数本ずつ貼り付ける)。あるいは、窓に段ボールや板を貼る。網戸は外してしまっておき、万が一、窓が割れた場合に備え、カーテンもしめておいた方がいい。台風の接近する時間帯が昼間だと、外の風景が気になるが、シャッターや雨戸は台風が通過するまでは開けるべきではない。

停電や断水対策も重要だ。千葉県では大規模な停電で浄水場までもが被災し水道水が出なくなる地域があった。もちろん、マンションでは停電で水道が使えなくなる可能性が高い。スマートフォンや蓄電池はフル充電をしておく、常にお風呂に水を入れておく(台風が来る時間が分かれば、その日は台風接近の前に入浴を済ませ、お湯を張り替えておく)、炊飯器も台風が接近する前に焚いておく、冷蔵庫は最も温度を低くしておく(停電したらしばらく開けないことで長期保存が可能になる)、洗濯も台風前に済ませておく、など。

その他、強風で飛んでいきそうなものがあれば、しまっておくことや、しっかり固定しておくことも重要だ。被災した建物で瓦礫類が散乱している状況なら、ブルーシートで覆い土のうで固定するなど、最低限被害を拡大させない対策を急ぐ必要がある。その他、個人でできる対策は以下の通り。

・雨戸にガタツキやユルミがないようにする

・アンテナやプロパンガスボンベをしっかり固定しておく

・物干し竿をしまう

・植木類をしまう、庭木に支柱を立てて補強する

・自転車を固定してく

・ゴミ箱や看板などもしまっておく

・外に洗濯機を置いている場合は、水を十分に張って重くした上でフタを閉じ、フタをテープで本体に留めておく

最後に注意してほしいのは豪雨や高潮による浸水などの被害だ。台風15号ではこの高潮により、神奈川県内で沿岸部の企業や商業地で被害が相次いだ。東京都が2018年3月30日に発表した「想定し得る最大規模の高潮による浸水想定区域図」では、最悪の場合、都内東部を中心に17区に浸水が広がり、23区の3分の1にあたる約212平方キロメートルが浸水するという想定となっている。あらかじめハザードマップなどで自分のいる場所の浸水リスクを把握した上で、自治体の避難情報に従い、あるいは大雨・暴風になる前に、それぞれの判断で早めに避難をすることが重要だ。

これらは対策の一例だが、台風による被害をイメージして、今のうちからできる対策をしておくことが大切だ。被害を受けてしまってから時間を巻き戻すことはできない。

危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長

平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト平成25年度事業継続マネジメントを通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務アドバイザー、平成26年度~28年度地区防災計画アドバイザー、平成29年熊本地震への対応に係る検証アドバイザー。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」「LIFE~命を守る教科書」等がある。

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