被災した中小企業は何をすべきか 社員の雇用と生活を守るための事業継続

(写真:ロイター/アフロ)

西日本を中心とした豪雨災害により、企業にも大きな影響が出ている。洪水や土砂崩れにより施設そのものが被災してしまった企業も少なくないだろう。被災した企業は今後どのように復旧を行えばいいのか。

最後に改めて解説するが、どんな立派な事業継続を達成しても、社員の心身の健康がないがしろにされたのでは意味がない。復旧して、その後も継続的に企業が成長していくために最も重要なのは社員である。その社員一人ひとりが大切な家族を持ち、被災して生活に不安を抱えながらも必死に仕事をしている。その社員を守ることこそが、事業継続の目的となることを経営者は忘れてはいけない。

中小企業の災害対応の主な流れと留意点をまとめてみた。

復旧方針を決め周知する

災害が発生した場合、企業では、直後の行動として、社員の安全確保、緊急避難、被害拡大防止の緊急措置、安否確認、救助救出といった、いわゆる初動対応が必要になる。その後、対策本部を設置して、復旧作業を行うことになるが、その際、重要になるのが復旧方針を決め全従業員に周知することだ。事業の早期再開に当たっては経営者の決断と実行のスピードが大きな意味を持つ。とりわけ、経営者が従業員に対して事業再開の具体的な目標を宣言することは、全社や協力機関の意識を高める上で大きな意味を持つ。ただし、二次災害の防止や周辺地域への影響を忘れてはならない。

2011年の東日本大震災で、津波による壊滅的な被害を受けながらも1週間後から活動を再開し、早期に復旧を果たしたリサイクル廃油業者のオイルプラントナトリ(宮城県名取市)は、自社工場が使えない中、創業の地でもある空き民家に本社機能を移し、被災後に復旧方針を以下のように決めた。

1.二次災害の防止

2.社会的要請

3.社員の生活の確保

同社では、まず、自社が二次災害を引き起こさないように、地域に流れ出たタンク類の回収に取り組むことを活動の最優先に掲げ、さらに、当時、陸に打ち上げられた船からのオイルの回収などが社会的な安全を確保する上で急務となったことから、自治体などから要請を受けた場合、それらを優先的に行うことを決定した。企業は地域社会の一員であり、社会のために事業を継続することが社員のモチベーションをも高める。その上で、社員の生活の確保のため、自社の事業の回復を掲げた。

この方針に基づき、同社では、以下のような復旧プログラムを策定している。

・被害状況の検証

・施設、設備関係業者への応援要請

・復旧にかかる見積もり作成依頼

・部品調達の必要なもののリストアップ

・部品調達の容易性のチェック

・部品調達困難物への対処策検討

・タイムスケジュールの策定

被災状況を確認する

復旧で最初に行うのが被害状況の確認。その際、何がどう被災したのかを撮影して記録として残しておいた方がいい。その上で、それぞれについて、どの程度の復旧費用・復旧時間が必要になるかをメーカーや建設会社などに問い合わせながら確認をしていく。BCP(事業継続計画)をあらかじめ策定している企業なら、取引先などをあらかじめ整理しているため連絡はスムーズに行えるはずだが、BCPを策定していなければ業者を調べながら連絡を取ることになる。もちろん、火災保険(水災特約付)に加入していれば、保険会社にも連絡をして、保険の手続きを進める。

復旧の優先順位を決める

復旧にあたっては、まず、何の事業から優先的に再開するのかを決めることが重要になる。インフラが大きく被災し、社員も十分集まらない中では、すべての事業を同時に再開させるのは難しいためだ。これも、BCPを策定している企業は、あらかじめ「重要業務」として決めているはずだが、それでも、実際には、重要業務を決めていたとしても、その時々の状況に応じて、何の事業から再開するかは顧客の要望や需要により異なり、計画通りにはいかないことも想定されるため、改めて見直してみることが必要になる。

BCPを策定していない企業でも、顧客への影響、社会的な影響、市場への影響、あるは法規制による制約などを鑑みながら、どの事業を優先的に再開させるかを決定することになる。

例えば、先のオイルプラントナトリは、東日本大震災時、ガソリンや重油が社会全体的に不足していたことから、重油再生業務を優先して復旧させ、それ以外のプラスチック再生事業や研究事業などは停止させた。

現地での復旧か代替生産かを決める

事業再開にあたってもう1つ重要になるのが、事業再開の具体的な方法を決定することだ。BCPの策定では、自社が事業不能に陥った事態を想定し、現地での早期復旧、あるいは別の場所での代替生産など、いくつかの事業継続方法を考え準備しておく作業がある。が、BCPを策定してない企業なら、その場で復旧方法を決めて取り組むことになる。

仮に代替生産方法を決めていないとしても、協力会社などで自社の代わりに製品を製造してくれるような企業があれば、現地が被災した状況でも事業を継続させることは可能だ。例えば建設会社や工務店で自社が被災してしまっても、協力会社から重機などを借りて、顧客対応にあたることは理論的には可能になる。先に紹介したオイルプラントナトリは、自社での重油再生処理ができなくなったため、その業務を県外の同業者に委託した。

資金の確保

大きな課題となるのが事業継続のための資金だ。保険に加入していれば、一定の被害費用については保険が適用されることになるが、入っていない場合は貯金を切り崩すか、融資を受けることになる。すでに中小企業庁では、災害救助法の適用を受け、(1)特別相談窓口の設置、(2)災害復旧貸付の実施、(3)セーフティネット保証4号の適用、(4)既往債務の返済条件緩和等の対応、(5)小規模企業共済災害時貸付の適用、のいわゆる5点セットの支援を打ち出している。

http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/2018/180709saigai.htm

今後、東日本大震災や熊本地震で行われたグループ補助金が適用されるかが注目されるが、こうした国や県、市町村の低利融資、利子補給、補助金などの制度だけでなく、取引銀行に相談することによって全面的なバックアップの約束を得たという事例もあるので、さまざまな機関に相談して情報を収集した上で対応を検討することが大切だ。ただし、融資を受ける際には、当然ながら、将来の返済の局面についても考えておかねばならない。

最も重要なのは従業員の健康

復旧において最も重要になるのが従業員の心身の健康だ。自社の復旧作業に加え、顧客への対応など、従業員には平時とは比べ物にならない負担がのしかかる。家庭も顧みずに会社のために働き続ける場合がある。

2016年の熊本地震で被災しながらも顧客対応にあたったある工務店では、無理にでも全従業員に定期的に休みを取らせるようにしたという。また、別の企業では、全社員を集めて悩みを話し合う機会を設けたり、アンケートなどで社員の不安を聞き取ったという話も聞く。東日本大震災や熊本地震では、被災の大きさから、社員が会社や生活に対する不安を抱き、退社をしたという話も何度か耳にした。その意味でも、トップは社員を不安にさせないように、しっかり方針を示し激励し続けることが重要だ。

最後に、大きな被災から立ち直った企業には、かならずといっていいくらい取引先や同業者の支援がある。支援物資の提供、代替生産、機械設備や工具の提供などさまざまな支援が考えられる。業界全体で被災企業を支えていくことが重要だ。