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三浦春馬さん急逝6か月…応援し続けるファンの「共感」「伝えたいこと」

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
第70回ヴェネチア国際映画祭(2013)で(写真:ロイター/アフロ)

三浦春馬さんが昨年7月に急逝して、まもなく6か月。最後の主演映画「天外者」(てんがらもん)が12月に公開され、劇場に何度も足を運ぶファンも多い。春馬さんを前向きに応援する一方で、傷ついた心を抱えるファンもいる。このたび、ファンのムーブメントと、心のサポートについて取材した(広がるグリーフワークの輪 、Forbes JAPAN)。記事はYahoo!ニュースに転載され、およそ300件のコメントをいただいた。その中から、記事への共感の声と、ファンが伝えたい本音を紹介する。

〇「泣いてもいい」に共感 

 記事では、東京新聞のメッセージ広告ジャックや、SNSで広がるファンの交流といった、春馬さんを前向きに応援するムーブメントを紹介した。合わせて、喪失体験との向き合い方について、心の専門家の助言を盛り込んだ。

 コメント欄には、記事の趣旨に共感する声や、感謝の言葉も寄せられた。すれ違いや誤解の生まれやすいネット報道の世界で、読者と取材者とのインタラクティブ(双方向)な関係を感じた。本来、ニュース記事の役割は、こうしたポジティブなものなのではないかと思う。

「不覚にもこの記事を読む今、涙が止まりません。東京新聞広告に参加させて頂きました。私の人生で、最初で最後の経験かな。春馬さんの主演映画を、沢山の皆さんに見て貰いたい!!その気持ちだけでした。天外者、本当に春馬さんの集大成の様な映画です」

「三浦春馬さんがいないという実感は正直、まだわいてない。いつまでわかないかも。でも、素敵な記事を読むと寂しくなって、自然と涙が溢れる。毎日、浮き沈みのあるこの感情。泣いても良いです、と言われてちょっとほっとしたのかも。素敵な記事をありがとう。そして、三浦春馬さん 素敵な仲間をありがとう。これからも、貴方の作品を愛して、貴方の生き方から学びます」

「とても良い記事でした。文章に愛が有るか無いか…伝わるものです。ナイフで心を切り裂くような酷い記事も多い中、寄り添おうとしてくれる優しさを感じました。春馬さんは言葉を大切にしていた。春馬さんは常にポジティブな言葉を使い、必ず人に伝えていた。人に優しく出来るのは、辛い思いも人一倍してきたからかもしれないですね」

「春馬さんの事を想う…。私にとってスターであり、英雄であり、尊敬できる人格者であり、カッコよくて、かわいくて…人生に彩りを与えてくれた人。でも今は胸にはポッカリ穴が空いてしまった。ヤフコメに春馬さんを想い、コメントを残すのは私にとってグリーフケアなのかもしれない。心を落ち着かせ整理する、春馬さんの生きた証を永遠に忘れない為の作業。笑われるかもしれないけれど、私なりに心を乗せて言葉を紡ぎ出そうと真剣に向き合っている。春馬さんに読まれても恥ずかしくない言葉を紡げるように…」

「>悲しさや思慕は、時間がたてばなくなるものではなく、

>どんなプロセスを経るかや感じ方は人それぞれです。

>感情を表し、仲間と分かち合い、専門家のサポートを受け、

>グリーフワークをしながら、「愛する人がいない、新しい世界」に適応していきます。

人それぞれということをハッキリ書いてくださってありがとうございます。周囲の人に話しても反応が薄くて、理解されていないのが分かり淋しくなります。春馬くんが亡くなってから、このようなコメント欄に投稿するようになりました。こうやって少しずつ、新しい世界に適応していくのでしょうか。同じ心境の仲間がいると思って、いつも励まされています」

〇「美談にしないで」本音の言葉も

 一方で、「伝えたい思いは、他にある」「美談にしないで」という意見もいただいた。

「三浦春馬くんは、容姿端麗、話し方にも品や心配りがあり、何よりも笑顔がキラキラして、素敵な俳優さん。癒やしや元気をもらった人も多いと思います。そんな象徴だった方が若くして亡くなられるのは、そう簡単に受け入れられず。例えば、遺書があり、彼が望んだ事が明確であれば、いつかは受け入れられるかもしれない。少なくとも、事務所から『遺書はなかった』と発表される前は、春馬くんの意思を尊重しようと思おうとしてました」

「喪失感が拭えず、なかなか前を向けずに沈む日も多い。だから、その気持ちを共有し泣いたり、心をさらけ出す事は大切な事。今は、泣いていいんだと、悲しんでいいんだと思います。グリーフワーク、いいと思います」

グリーフワークの輪の広がりは、故人を偲び、思いを共感できる唯一の心の支えとなっています。しかし美談で終わらせては故人に申し訳ないです。本当に春馬さんが在りし日に伝えたかったことは何だったのか…」

「春馬さんのファンは春馬さんが亡くなられた喪失感だけで、声を上げ、思いを共有している訳では、ありません。春馬さんの死に不信を感じ、納得していないのです。それを明らかにしてほしいと…説明してほしいと…願っているだけなのに」

○「大好き」と言える場があること

 筆者も、春馬さんが第一線で活躍しながら、若くして急逝したことに、衝撃を受けた一人だ。芸能界の働き方やメンタルサポート、社会とファンの心に与える影響の大きさなど、考えさせられることは多い。

 傷ついたファンに寄り添う記事を…と試みているが、全てを表現することは難しい。記事に寄せられた読者の言葉により、筆者が伝えきれなかった部分が補われたのではないかと思う。

 コメントの中で、「天外者」の上映を応援するメッセージや、「春馬さんが大好き」という気持ちを丁寧につづったものも目立った。緊急事態宣言を受け、映画館も厳しい状況にある中、SNSで温かな言葉が紡がれている。

 そのように、人それぞれ多様な考え方があるけれど、思いを発信したり、共感したり、モヤモヤをぶつけたり…表現し合う場は必要で、大切だと痛感させられる。

「素敵な俳優さんで、大好きでした。顔が好き!声が好き!スタイルも良い!演技が上手い!その程度の認識でしたが、真面目で真摯な生き方を貫いた方、優しく誰にでも分け隔てがなかった方、よく笑うお茶目な方と言うのは、後から知りました」

「真摯に頑張って生きて行こう。優しくなろう。人の批判の言葉を、褒める言葉に変えてみよう。褒める言葉はちゃんと言葉に出して伝えよう。そして『日本製』に書かれたお店を、コロナが落ち着いたら順に巡ってみようと思います。あの日からお花とお水とお線香をお馬さんの置物に供えて、ありがとうって言ってます。一面識もないのに不思議です。頑張ったねと伝えたいです」

(いただいたコメントは、苦しい思いを抱える人たちの心のサポートになればという趣旨で、抜粋して紹介させていただきました。ありがとうございます)

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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