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「早番前は何度も目が覚める」子どもの命を預かる激務、持ち帰り仕事も・ベテラン保育士と本音対談②

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
(写真:イメージマート)

2日、フジテレビ系でドラマ「お迎え渋谷くん」(京本大我、田辺桃子)が始まった。保育士の体当たりの仕事ぶりや持ち帰り仕事についても、リアルに描かれている。筆者は2023年、Yahoo!ニュース特集にて、保育士の働き方や再就職支援について取材した。
その中で出会ったベテラン保育士のAさんは45年あまり保育士として働いた。筆者も保育園に5年間、お世話になり、いま思い出しても涙が出るほどありがたい。食事や散歩、季節の行事、友達や保護者との関わりなど、財産がたくさんある。一方で保育士が足りない、仕事がきつい、置き去りなどのニュースを見るたび、苦しくなる。厚生労働省の資料では、2020年の保育士登録者は約167万人で、働いている従事者約64万人を差し引くと、潜在保育士はおよそ100万人いる。令和4年版「厚生労働白書」を見ると、退職理由としては、「人間関係」「給料が安い」「仕事量が多い」「労働時間が長い」が多い。再就業する場合の希望条件としては「通勤時間」「勤務日数」「勤務時間」が多く、柔軟な働き方を希望している。保育士の働き方の歴史や現状について、Aさんと本音で語り合った対談を、連載で紹介する。
連載①はこちら

(以下、「」内はAさん、【】内はなかの)

【連載1回でお話があったように、勤務自体がきつい、給与が上がらないことが課題なのですね】

 「保育士って、精神的にも肉体的にも、ものすごいことが要求されますでしょう?子どもの命を預かってるわけですから。保育園は一日、生活の場なので、子どもは朝7時から夜7時まで預かり、延長保育もやっている。生活の場なんです、子どもにとったらね。だけど、私たちの労働時間は一応8時間で区切るので、いろんな時差勤務をするわけですよね。早番、遅番と」

【我が家も公立保育園にお世話になったので、よく分かります、先生たちが大変なのは。時差で組んでいくのがハードなんですね】

 「人間の体なので。早番で鍵を開けなきゃいけないと、夜中にプレッシャーで何回も目が覚めますよね。遅番で遅く帰ったら、独身で自由な時代はいいけど、家族がいるとその対応とか考えなきゃいけない。私は働きたいと思って自分でやりくりし、夫や家族の協力を得ながらやってきました」

【ご家族がいらっしゃるんですね】

 「子どもは1人なんですよ。ずっと仕事してきたので、2人、3人、子どもに兄弟が欲しかったって言われましたが。土日も家で指導計画を作ったり、誕生日カードを作ったり。今でこそ、パソコンでぱぱっと、園便りもできるけれど、昔はガリ版刷りでした」

【お仕事を頑張ってからの子育てですね】

 「結婚も30前にやっと。32歳ですね、子どもが生まれたのは」

【大変でしたね。産休や育休は取ったんですか】

 「育休は、1年は取らなくて10カ月かな。今は育休も公務員の保育士は、子どもが3歳になるまでに延びたんですね」

【お子さんがいても、皆さんと同じ勤務をするわけですよね】

「もちろんそうですね。朝早くもあれば、昔は会議は全部、時間外だったので。職員会議と、それから乳児と幼児とわかれての担当とかと、保育討議とかも。時差勤務を考えると、定時で帰れるのは、週1日あるかないかでした」

【お子さんのことは旦那さんの協力で?】

 「たまたま夫の実家が近くだったので、夫の両親、おじいちゃん、おばあちゃんに見てもらった。あと、おじいちゃん、おばあちゃんが転勤でいなかった時は、おばちゃん。今で言うベビーシッターさんとして、近くのおばちゃんにお願いして。そう、近所のおばちゃんです」

【公的な保育ママじゃなくて、個人的に】

 「昔はなかったんです」

【近所のおばちゃんにお願いして。大変ですよね、よそのお子さん育てるために】

 「はい。自分のエゴっていったらそうかもしれないけど、やりたいのでやってきました」

【家族とか近所の人の協力なしでは、とても続けられない仕事っていうことですね】

 「できなかったです。続かないですね」

【サービス残業も増えて。お飾り作ったり、イベントの準備とかしていると、定時では終わらないと聞きました】

 「そうそう。日常の普通の保育だけじゃなくて、伝統行事、誕生会、運動会、発表会、卒園式。1年間、何もない時ってない感じですよね」

【それでも両立して、お子さんも育てて、働き続けてすごいですよね】

 「そんなことないです。だから病気する暇がなかった。私、一度も病気で休職はしたことがなかったですね。でもだからそのツケなのかどうか分からないんですけど、退職した年に、おなかが痛くて病院に駆け込んだら、腸閉塞(へいそく)とがんが見つかって入院、手術しました」

【それだけ無理していたんでしょうか】

 「やっぱり無理してきたのかな。その時、ちょっと思いました。自分では頑張ってきたつもり、普通かなと思ったんですけど。治療して、がんも切除して、再発もなく今は元気に、やりたかったことをやっています。ずっとピアノが弾きたかったので、毎日、ピアノを弾いて。あとは、図書館から本借りて読んで、ぜいたくな時間です」

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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