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八王子で開催される2023World Spintop contest~中小企業が挑戦する地域連携

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
こま回しに夢中になる子供たち。(画像提供・ 株式会社そろはむ)

・八王子で開催される2023World Spintop contest

 今週末、八王子市で今週末23日と24日両日、「こまの世界大会」が開催される。開催するのは、八王子市に本社のある中小企業だという。一体、どんな世界大会なのか、東京都八王子市株式会社そろはむの代表取締役社長、長谷川貴彦社長にインタビューしてみた。

 この大会の正式名称は、2023World Spintop contest。開催場所は、八王子市の東京たま未来メッセ。しかし、いったいどういう大会なのか。

 「2000年にアメリカ・フロリダ州オーランドで第1回目が開催され、今年で24回目を迎えます。主催のは、International Top Spinners Association、略称ITSAと言います。」

・最初は、ヨーヨーは1000人、コマは20人

 アメリカが発祥なのですね。かなり規模的には大きなものなのでしょうか。

 「えっと。実はヨーヨーはかなり盛んで、2015年に日本で世界大会が開催された時は1000人以上集まりました。その大会と同時に開催されたのが、このコマの大会で、こちらはそうですねえ、20名くらいだったでしょうか。」

 たった20名ですか。

 「ヨーヨーに比べるとのこまは歴史が浅くまた広く知られている割に競技として取り組んでいる人が少なかったのです。

最初は20人くらいでしたが、その後、だんだんと参加者が増え、今回はヨーヨーの大会から独立し、初めて12月に八王子でこま単体の世界大会が開催されることになったのです。」

・今回は、競技参加者は100名 

 今回は、どれくらいの人数が見込まれますか。世界大会というのですから、海外からも参加者がいるのでしょうか。

 「競技としての参加者は約100名を見込んでいます。参加国としては、イタリア、メキシコ、スペイン、フランス、アメリカ、台湾です。6月と10月にもスキルトイのイベントを開催したのですが、親子連れなど多くのお客様にきていただきました。今回の世界大会も、観客もかなり来ると見込んでいますので、にぎやかな催しになると思います。」

 2023年の6月と10月に八王子で開催されたスキルトイのイベントでは、多くの家族連れや老若男女、多くの人が集まり、手ごたえを感じていると言う。八王子市内の多くの企業の強力も得ており、世界大会の開催への準備を進めてきた。

2023年6月に開催されたスキルトイの催しには、多くの家族連れや老若男女が集まって、コマやヨーヨーを楽しんだ。(画像・筆者撮影)
2023年6月に開催されたスキルトイの催しには、多くの家族連れや老若男女が集まって、コマやヨーヨーを楽しんだ。(画像・筆者撮影)

・ヨーヨー好きが高じて、玩具メーカーを創業

 ヨーヨーやコマというと子供のおもちゃであり、少子化が厳しい日本市場では中小企業の廃業や撤退も進む分野だ。そんな中で、なぜコマの世界大会なのか。

 「実は私は、ヨーヨーが大好きで、ヨーヨーの世界大会において2002年・2005年・2011年と3度のチャンピオンの座を獲得しました。その後、日本人初の「ヨーヨーマスター」の称号も手にしました。ヨーヨーや、コマ、けん玉などは古くから親しまれ、そして世界中で楽しまれているもので、子供が簡単に遊べる一方で、高い技術力を必要とする高度な遊びができるスキルトイと呼ばれるものなのです。子供からお年寄りまで、それぞれのやり方で楽しめる。その中でコマは日本の伝統的な遊びでもあり、取り組んでみたのです。」

 長谷川社長は、スキルトイにほれ込み、スキルトイの企画から開発、販売までを一貫して行っている玩具メーカーを、2011年に自ら八王子に創業した。

・コマ好きの人のお祭り

 大会には、どんな競技があるのですか。

 「コマの大会は、大きく二つの部門に分かれており、一つは規定の技をする部門、もう一つは音楽に合わせて、ちょうどスケートのフィギアのようにパフォーマンスや美しさを競うフリースタイル部門があります。特にフリースタイルは紐で回すということ以外に、形や素材に制限はありません。大会の名は冠していますが、できるだけ、自由に楽しもうということです。言ってみれば、コマ好きの人のお祭りです。」

 海外からの選手も参加し、華麗な技と演技を楽しめるだろう。それが、さらに新しいファンを増やすに違いない。

八王子発のスキルトイは、新しい市場を創出しつつある。(画像・筆者撮影 2023年6月)
八王子発のスキルトイは、新しい市場を創出しつつある。(画像・筆者撮影 2023年6月)

・現代っ子もスキルトイ好き

 長谷川社長は、スキルトイの魅力として、「目標を掲げ、モチベーション高く、自分をコントロールしながら粘り強く、仲間と共に取り組むための姿勢や各種の力を身に着けていくところだ」と言います。

 同社では、八王子市内の学校を周り、スキルトイの魅力を伝える『あそびの出前』という活動も行っている。

 「子供たちは家にもこもって、テレビやパソコンのゲームばかりしているのだろうと考えている人が多いですが、放課後に生徒を預かる学童保育の場ではテレビもパソコンもありませんから、意外にコマやけん玉などアナログな遊びが人気なのです。そうした場に出かけて行って、私たちが技を見せて遊び方、楽しみ方を教えていきたいのです。」

 子供や若者だけではなく、高齢者も健康維持の面からもスキルトイへの関心が高まっている。そんな中で、『あそびの出前』は単にモノを作って、売るだけではなく、地域の中で中小企業が新しい繋がりを創出する試みだ。

・八王子の地元企業に製造してもらうMADE IN 八王子

 八王子市は、東京のベッドタウンとして有名なところだが、実は工業も盛んな土地である。

 「今回の世界大会も八王子の地元企業を中心に、32社が協賛してくれています。地域の中で地元企業が連携して、世界に発信できる大会にしたいと意気込んでいます。そして、私たちが企画、設計し、八王子の地元企業に製造してもらうMADE IN 八王子のコマもできました。オオルリと名付けたのですが、今回の大会でお披露目します。」

 オオルリは、高尾山や陣馬山にいる美しい八王子市の鳥だ。小さなコマから、八王子のものづくりが飛び立てばという願いも込められている。八王子のものづくり企業が参画することで、地元ブランドの新しい製品が生まれる。ここでも地域連携がテーマになっている。

MADE IN 八王子のコマ『オオルリ』(画像提供・株式会社そろはむ)
MADE IN 八王子のコマ『オオルリ』(画像提供・株式会社そろはむ)

・新しい地域振興の芽

 紐で回すという条件をクリアすれば、あとは自由というおおざっぱさ。まるで異種格闘技のような感じもするが、その点はどうなのだろうか。

 「24回目とはいえ、コロナ禍はオンライン開催でした。おもしろかったのは、これまで会場に行けなかったとか、まったく知らなかったという人がオンライン開催で参加するようになったこと。だから、それはそれで悪くないなと。まだまだ黎明期なので、やったもの勝ち。それもおもしろいでしょ。」

 スタートアップ、イノベーションなどなど賑やかだが、小さくとも、まずは自分とその仲間が楽しみ、地域内の連携を大切にしつつ、世界に発信していくことこそ、地域ブランディングでもあり、新しい地域振興の芽が出るだろう。

 「やったもの勝ち」これこそ、今の日本を元気にする合言葉ではないだろうか。中小企業が取り組む地域連携が、世界への発信を可能にする。難しい時代だからこそ、諦めるのではなく、前向きに「やったもの勝ち」。ものづくりに関わる企業経営者や関係者は、今週末、2023World Spintop contestの会場を覗いてみてはどうだろうか。

*大会名 2023World Spintop contest

日時 2023年12月23日(土)・12月24日(日) 2日間開催

時間 10:00~17:00

会場 東京たま未来メッセ(東京都八王子市明神町3丁目19-2)

入場無料

詳細はオフィシャルHP

神戸国際大学経済学部教授

1964年生まれ。上智大学を卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、山形県川西町総合計画アドバイザー、山形県地域コミュニティ支援アドバイザー、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

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