北摂のスーパー大乱戦~ドラッグストアにホームセンターも続々参戦

駅前再開発が進んだJR岸辺駅前(撮影・筆者)

・「勝ち組の自治体」のスーパー大乱戦

 大阪府吹田市。この5年間で人口は約1万人増加し、「勝ち組の自治体」などと呼ばれるほどだ。市内の公園には、子供たちの声が響いている。

 大阪万博記念公園や千里ニュータウンがあることで有名だが、良好な住宅地としても人気がある。しかし、この10年ほどは、オールドタウンとまで揶揄されていた千里ニュータウンの老朽化した団地の再開発が進み、今では新たな街並みが拡がっている。

 この吹田市を含む北大阪・北摂地域には、スーパーやドラッグストアの新規出店が相次ぎ、大乱戦の様相を示している。

『スーパー、ドラッグストア、ホームセンターがひしめき合う』

赤い〇が半径2.5キロ。スーパーやドラッグストアがひしめき合う。(作成・筆者)
赤い〇が半径2.5キロ。スーパーやドラッグストアがひしめき合う。(作成・筆者)

・旧国鉄操車場跡地の再開発

 吹田市の中でも、特に人口が増加している地域が、大阪と京都を結ぶJR京都線沿いのJR吹田駅からJR岸辺駅の周辺だ。

 かつては、「東洋一」とも言われた旧国鉄操車場跡地50.2haのうち、23.0haがまちづくり用地として再開発が進んできた。ここには吹田市民病院、国立循環器病センターなど医療機関や商業施設、大型マンションなどが建設された。

 さらに、旧国鉄官舎跡地、日本生命グラウンド跡地、国家公務員宿舎跡地、大阪府警警察待機宿舎跡地など新たな住宅開発が進んでいるほか、パナソニックが工場跡地を再開発し、全国で3例目となるサスティナブル・スマートタウンの開発も進んでいる。

・大型開発+世代交代

 地元不動産会社の経営者によると、「この地域は、大型開発だけではなく、1970年代に造成された戸建て住宅の世代交代が進み、比較的手ごろな価格で分譲住宅が販売されている。鉄道やバス路線が充実しており、医療機関や文教地区として人気がある」と説明します。

 再開発が進み、人口増加が進むに連れ、消費市場が拡大することに期待する流通系企業が次々に進出している。コロナ禍によって、飲食業やアパレル小売業などの苦戦が伝えられているが、一方で外出自粛のための「巣籠需要」が拡大し、スーパーやホームセンターなどの売上げは堅調だ。

・大阪府外からの進出

 大型、中堅のスーパーやホームセンターなど次々と進出が進む。特徴的なのは、大阪府外に本社を持つ中堅スーパーの進出だ。

 JR岸辺駅の両側に出店しているのは、滋賀県に本社を持つ総合スーパー平和堂だ。2005年に駅南側の工場跡地に出店し、さらに北側に国立循環器病センターや吹田市民病院が移転開業するのに併せて、2018年に出店。

 2019年には、京都府に本社をもつスーパーさとうが、スーパーマーケット「フレッシュバザール」千里丘店を出店。さらに、今年2021年7月には、首都圏を地盤としてきたビバホームが毎日放送跡地に地域最大級のホームセンターを出店する。

 さらに、吹田市に隣接する摂津市鳥飼や茨木市彩都には、岡山市に本社のある大黒天物産が格安スーパーのラ・ムーを進出させている。

 「地方部の人口減少は、次第に深刻化しており、これ以上、地方に留まっているのでは、事業展開には限界があり、まだ可能性のある都市近郊部に地方スーパーが進出を仕掛けている」と大手流通企業の従業員は、説明する。

・迎撃態勢の地元勢

 迎え撃つ地元のスーパーも、積極的な出店を進める。地元吹田市に本社を置く佐竹食品株式会社は、岸辺駅前の平和堂スーパーに隣接する場所に2017年11月に岸辺店を開業。さらに、サタケビエラ千里丘店をJR西日本の商業施設に開業。同社は、神戸物産が展開する業務スーパーのフランチャイズを子会社で展開し、格安スーパー部門でも出店を進める。

 吹田駅前の旧国鉄官舎(JR西日本社宅)跡地に、JR西日本が初の「駅ソト」開発として手掛けたショッピング・モール「吹田グリーンプレイス」に出店したのは阪急阪神東宝グループのスーパーマーケット・阪急オアシスだ。さらに、JR岸辺駅前にパナソニックなどが開発中の「吹田市岸辺中5丁目プロジェクト(Suita SST)」への出店も発表されている。

吹田グリーンプレイスは、JR西日本が初の「駅ソト」として開発した。(撮影・筆者)
吹田グリーンプレイスは、JR西日本が初の「駅ソト」として開発した。(撮影・筆者)

・ドラッグストアが勝敗の鍵を握るのか

 こうした乱戦に拍車をかけているのがドラッグストアだ。地元では老舗の種類に入るイズミヤ千里丘店は、従来の家庭用品や家電製品などの住居関連売り場を大幅改装し、4月からはドラッグストアのココカラファインが出店した。

 これまでもこの地域には、愛知県に本社のあるスギ薬局、東京に本社がありイオングループのウエルシア薬局、さらに横浜市に本社があるココカラファインが三つ巴の争いになっていた。

 「ドラッグストアが食料品などに力を入れ、ミニスーパーとなってきた。ドラッグストアで食パンまで売らないでくれというのが本音だ」とある中堅スーパーの従業員は苦笑いする。

 2020年10月にガソリンスタンド跡地に開店したウエルシア薬局吹田原町店は、イオン系である強みを生かし、酒類はもちろん惣菜や青果品まで揃え、営業時間も午前9時から午前0時までと深夜営業だ。スーパーのみならずコンビニとも競合する体制だ。吹田市内に住む大学生は、「ドラッグストアだと飲み物もお菓子も安い。コンビニに行かなくなってしまった」と言う。

郊外型住宅地であり自家用車保有率も高い地域だ。(撮影・筆者)
郊外型住宅地であり自家用車保有率も高い地域だ。(撮影・筆者)

・既存店は、調剤薬局を併設し対抗

 一方、スーパーに併設されていた既存のドラッグストアでは、差別化を図るために調剤薬局を開業している。昨年末から、関西スーパー佐井寺店に併設されているココカラファイン、ライフ岸部店に併設されているスギドラッグ岸辺店の両店が、調剤薬局を新たに設けた。

 この地域は、住民が増加していることもあり、個人医院の開業も相次いでいる。医薬分業が進んでおり、医者にかかって処方箋をもらうと、調剤薬局に行かねばならない。買い物のついでに立ち寄れるスーパー併設のドラッグストアに調剤薬局があれば、集客力のアップにつながる。さらに、こうしたドラッグストアでは金額に応じてポイントや割引券などのサービスを行っており、「個人経営の調剤薬局にとっては、影響は大きいでしょうね」とこの地域の医院の医師は話す。

・ホームセンターも乱入

 スーパー、ドラッグストアの混戦にさらにホームセンターも参戦している。大阪の地場企業であるコーナンやロイヤルホームセンターが出店してきた。いずれも大型で、家庭雑貨や食料品なども揃え、100円ショップを併設しているところもある。

 さらにここに新たな進出が計画されている。さいたま市に本社を置き、関東地方を中心に展開してきたビバホームが、2021年7月に地域最大規模のホームセンターを開業する。既存のホームセンターコーナン吹田インター青葉丘店に隣接したゴルフ練習場の跡地になる。このようにスーパー、ドラッグストアに加えて、ホームセンターも参入し、大乱戦の様相だ。

・新たな大規模開発も進展

 こうした多くの企業が積極的に出店するのは、活発な住宅開発と人口増が背景にある。一時期は「オールドタウン」とまで呼ばれた千里ニュータウン地域は、老朽化した住宅団地の建て替えが進み、若い世代の住民が増加した。また、旧国鉄用地だけではなく、工場跡地や世代交代によって売却された農地や竹林などで今後も住宅開発が進む。

 その中でも大型開発として注目されるのが、JR岸辺駅近くで、パナソニックなどの工場跡地にパナソニックが全国で進めるスマートタウンの三つ目となる、「吹田市岸辺中5丁目プロジェクト(Suita SST)」だ。来春(2022年春)には、ファミリー、シニア、単身者、高齢者向けと全世代に向けた総数365戸の集合住宅の他に、ウェルネス複合施設、複合商業施設、交流公園が建設される。大型商業施設も、阪急オアシスが運営すると発表されている。

1987年にオープンしたイオン南千里店(当時・ジャスコ南千里店)は、今年5月いっぱいで閉店する(撮影・筆者)
1987年にオープンしたイオン南千里店(当時・ジャスコ南千里店)は、今年5月いっぱいで閉店する(撮影・筆者)

・迎え撃つ地元資本の小売業、さらに個人商店

 日本国内の人口減少は、加速度的に進んでおり、小売業にとって新規に進出する余地は少なくなっている。そんな中で、この北摂地域は人口が増加し、小売業にとっては期待のできる数少ない地域となっている。

 しかし、この北摂地域は、従来「オーバーストア」状態が指摘されてきた地域だ。人口が増加傾向にあるとはいえ、今後、激しい生き残り競争が繰り広げられる。

 すでに店舗の老朽化などを理由に、閉店、撤退するスーパーも現れている。迎え撃つ地元資本の小売業、さらに個人商店が、こうした域外からの進出企業といかに闘うのか、これからが注目される。

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