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自由研究は「立ち寄り」社会科見学でばっちり ~ 沖縄編

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
緑豊かなヤンバル(山原)に囲まれた沖縄県名護市

 夏だ、海だ、沖縄だ!ということで、この夏、沖縄に家族旅行という方も多いでしょう。そんな沖縄でも工場見学ができます。リゾートホテル、ビーチ、水族館に向かう途中にちょっと「立ち寄って」社会科見学もしてしまいましょう。

・空港からすぐ、まず工場見学 スッパイマンの工場見学 上間菓子店

 紺碧の海が窓から見えると、ほどなく飛行機は那覇空港に着陸します。那覇空港からは、レンタカーを利用する人が多く、空港周辺には多くのレンタカー会社が並んでいます。さて、車も借りて、出発!なのですが、ここで先に社会科見学を済ませてしまいませんか。

上間菓子店
上間菓子店

 スッパイマンは、甘酸っぱい干し梅のお菓子です。沖縄土産としても、人気の高いスッパイマンを製造販売しているのが、株式会社上間菓子店です。

 もともとは、沖縄のイッセンマチャーと呼ばれる駄菓子屋で人気商品だった干し梅ですが、観光客のお土産などで全国に広がり、人気が出てきた商品です。甘酸っぱい干し梅は、東南アジア、中国などで食べられてきた伝統的な食べ物で、沖縄には台湾から輸入されていました。

 その後、台湾製には日本では使用が禁止されている甘味料が使用されていることが判り、輸入が途絶えます。上間菓子店が1981年(昭和56年)から、甘味料をステビアにして製造した「スッパイマン甘梅一番」の発売を開始し、これが観光客のお土産として有名となり、全国的に知名度が上がりました。

 さて、その上間菓子店は、那覇空港から車でわずか15分。沖縄自動車道に接続する那覇空港自動車道のインターにも近く、沖縄本島各地に向かう前に、立ち寄るには便利なところにあります。一見、普通の工場と事務所のように見える建物が、上間菓子店の本社と工場。駐車場も広々していますので、慣れないレンタカーでも安心です。

 工場見学は、10名以上の場合は、一週間前の予約が必要ですが、少人数の場合は当日でも受け付けてくれるそうです。台湾から輸入されてきた梅を洗浄、処理し、味をつけるための液に浸して、乾燥。検品して、包装という一連の流れを見学できます。

キャラクターが工場見学のお出迎え
キャラクターが工場見学のお出迎え

 工場には売店も設けられ、工場限定商品やスッパイマングッズなども売られていて、駄菓子屋に来ている気分になって、ついつい買い物もしてしまいます。

 工場見学に関しては、ネットに詳しく紹介されており、予約状況なども見ることができます。

 工場のすぐ近くには、道の駅「豊崎 豊見城市観光プラザ てぃぐま館」があり、ドライブに出発前に飲み物や食べ物、フルーツなどを調達するのに便利です。工場見学も済ませて、目指す観光地に出発すれば、宿題のことを心配しなくて、ゆったりリゾートライフが過ごせるのでは。(もちろん、帰りに道に宿題を思い出して、慌てて寄るにも便利です。)

・沖縄と言えば オリオンビール名護工場・オリオンハッピーパーク

 ヤンバルというのは、山原と書いて緑豊かな沖縄北部の地域を現わす言葉だそうです。名護市は、そのヤンバルと海に囲まれ、沖縄本島でも珍しい地下水が湧き出ていることでも知られます。その湧き水を使って、作られたのがビール工場です。

オリオンビール名護工場
オリオンビール名護工場

 まだ、アメリカの統治下にあった1957年(昭和32年)に、沖縄の地域経済復興のためには製造業の振興が必要だということから、具志堅宗精氏を中心に当時の名護町に沖縄ビール株式会社として設立されたのが始まりです。ビールの名称は、一般公募され、南国の沖縄のイメージに合い、夢や憧れを象徴していることや、当時のアメリカ軍最高司令官の象徴がスリースターだったことなどから、オリオンビールに決まったのです。そして、その後、社名もオリオンビールに変更されました。

 さて、ビール工場は、名護市中心部からすぐのところにあります。最近では、台湾をはじめとする東南アジアへもオリオンビールの輸出が増加している影響もあり、海外からの工場見学客も増加しているそうです。

 オリオンビールの材料には特徴があり、沖縄県産の米が使われているのです。工場では、ビールの製造工程が判りやすく説明されており、実際に製造している工程を間近に見ることができます。

沖縄の海を現わした工場
沖縄の海を現わした工場

 完成したビールを箱詰めする工程では、ロボットが忙しく動いています。ロボットなどのピンク色は、沖縄のサンゴ礁。床などの青い色は海や空を現わしているそうです。

 ホールには、沖縄県内に数多く存在した「まちやぐぁ」と呼ばれる雑貨屋を復元したものが展示されている。沖縄では、酒販免許が自由に取得できた時代があり、町々の小さな雑貨屋でオリオンビールが販売されたのです。展示品も数多く、オリオンビールと沖縄の歴史について、学ぶことができます。

まちやぐぁ
まちやぐぁ

 見学が終わると、お決まりの試飲。もちろんドライバーと未成年はアルコール飲料はダメですから、ソフトドリンク。売店では、オリジナルグッズなども販売されており、レストランも併設されています。

・通過するだけなのは、もったいない

 那覇市方面から美ら海水族館に向かう際に名護市中心部を通って行く。名護市中心部には、1921年(大正10年)から続く名護市営市場があります。名護市営市場では、野菜や魚、菓子などといった沖縄の食文化を伝える店や、飲食店が入っており、その中には、名護の工芸品や特産品を集めたセレクトショップ「Nago Grocery Store-ナゴグローサリーストア」のように、新しい取り組みをする店も入っていて、家族連れも楽しめます。

 港には、名護漁港水産物直売所があり、名護漁港食堂が設けられており、新鮮な魚介類が楽しめるようになっています。

 

 名護市は、沖縄の食文化、食品産業などを学ぶ立ち寄り「社会科見学」にぴったりの場所。ただ、水族館へ、ビーチへと通り過ぎるだけなのはもったない。

名護市営市場
名護市営市場

 

神戸国際大学経済学部教授

1964年生まれ。上智大学を卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、山形県川西町総合計画アドバイザー、山形県地域コミュニティ支援アドバイザー、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

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