囲碁界勢力図を占う大一番 「十段」挑戦者決定戦 井山裕太棋聖と芝野虎丸名人が激突 両者の調子は?

国際棋戦の記者会見に臨む井山裕太三冠=2017年3月、大阪市。筆者撮影

村川大介十段(「十段」はタイトルのひとつ)への挑戦者を決める戦いが、1月30日に打たれる。

名乗りを上げているのが、井山裕太棋聖(本因坊、王座の三冠)と芝野虎丸名人(王座との二冠)だ。

井山棋聖がもうひとつタイトルを加えれば、第一人者の地位を確固たるものにできる。

芝野名人が三冠になれば、若手台頭の群雄割拠時代ではなく、芝野時代の始まりを意味することになるかもしれない。

どちらが挑戦者になるかは、囲碁界の勢力図を占う大一番といえよう。

両者の現在の調子はどうだろうか。

昨年苦しんだ井山棋聖

若手の台頭に抗する井山棋聖は昨年、五冠だったタイトルが三冠に後退。勝率も自己ワーストと苦しい1年だった。

しかし昨年末、天元位を防衛したあたりから調子が上向いている。

芝野名人への挑戦者を決める名人戦リーグは2連勝スタートしているし、年初から始まった河野臨九段を挑戦者に迎えた棋聖戦防衛戦も2勝0敗とリードしている。

世界ランカーを次々撃破

さらに、日本ではあまり報道されていないが、国際戦でも現在決勝三番勝負に臨んでいるのだ。

中国のインターネット対局サイト「野狐囲碁」は、世界ランキングの棋士が腕を磨いていることで有名だ。井山棋聖、芝野名人らはもちろん、若手の上野愛咲美女流本因坊や仲邑菫初段らもよく対局している。

そのサイトで「第1回野狐人気争覇戦」が昨年から開催されている。優勝賞金は50万元(約780万円)。これは早碁のテレビ棋戦、NHK杯の500万円、七大棋戦の十段の700万円よりも高く、ネット棋戦では破格といえよう。

野狐囲碁ランキング32位までの棋士が参加でき、ランキング30位だった井山棋聖は最下位グループから登場。世界の有名棋士6人を次々破って、ベスト4へ。準決勝三番勝負では陳耀ヨウ(火偏に華)九段(中国)を2連勝で下して決勝三番勝負に名乗りをあげた

相手は23歳の童夢成八段。

1月13日に打たれた第1局は、不正(AIカンニングなど)のないよう、それぞれ立会人をたてての対局となった。井山棋聖はホームグラウンドの日本棋院関西総本部でパソコンに向かい、井山棋聖らしい積極的な打ち回しで勝利。現在第2局の日程調整中とのことだ。

昨年は、らしくないミスで好局を落とすなどの敗戦が散見されたが、そんな不調からは脱したようだ。井山棋聖本人は「いっときよりは少しは上向いていますが、まだまだこれから」と話している。こんなに勝っていても、本調子はこれからだ、というのが本人の実感なのだろう。

虎丸名人は淡々と

名人戦前夜祭で挨拶する芝野虎丸名人=2019年8月、東京都文京区。筆者撮影
名人戦前夜祭で挨拶する芝野虎丸名人=2019年8月、東京都文京区。筆者撮影

一方の芝野名人も「野狐人気争覇戦」に参戦しているが、1回戦で負けている。

また、中国で春節にあわせて開催される「第8回CCTV賀歳日中韓新春争覇戦」に参戦。朴廷桓九段(韓国)、柯潔九段(中国)の新旧世界ナンバーワンとの3人での変則トーナメントに敗れ、3位となるなど、結果が出ていない。

しかし、本人は「相手が強く、この結果は仕方がない。いい経験になりました」。一喜一憂せず、淡々とできるメンタルが芝野名人の強さでもある。

国内戦では順調に勝っており、心配は要らないだろう。

十段戦挑戦者決定戦は一発勝負。両者とも十分力を発揮する好局が期待される。

結果は30日夕方にはわかるはずだ。

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「NHK囲碁講座」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。棋士の世界や囲碁の魅力を発信し続けている。著書に『囲碁ライバル物語』(マイナビ出版)、『井山裕太の碁 強くなる考え方』(池田書店)、『それも一局 弟子たちが語る「木谷道場」のおしえ』(水曜社)等。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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