女流名人を奪還 藤沢里菜女流二冠、好調のワケは「心技体」が揃った?「『技』は違いますが……」
上野愛咲美女流名人に藤沢里菜女流本因坊が挑戦した「女流名人戦博多・カマチ杯」三番勝負は、2連勝のストレートで藤沢が勝利し、通算6期目の女流名人を奪還しました。
藤沢は今年、勝ち星ランキングでも18勝4敗(5月3日現在)と全体のトップを走るほど好調をキープしています。
そのワケは何なのでしょうか。生活の変化も話してくれました。
女流名人戦は2局とも、藤沢里菜さんの形勢が悪くなることのない完勝でした。
上野愛咲美さんを相手にこんな勝負ができるとは、「強い」という言葉以外見つかりません。
強さを感じたのは、里菜さんが新しい面を見せてくれたからです。
里菜さんは後半に強いというのは評判で、とくに半目勝負は14連勝していたほど、無類の強さを見せていました。
反面、戦いのイメージはあまりなかったのですが、ハンマーパンチの愛咲美さんを相手に、戦いを仕掛けるなど、今シリーズは積極的な姿勢が印象的でした。
里菜「前よりは戦いが増えました。打ちたい手が思い切った手が多くなったことで戦いが多くなりました。若干意識しているところもあります。自分が強くなるためには戦いの部分に伸びしろがあるのではないかと」
ご本人も自覚があるようです。
この理由はなんでしょうか。
里菜「昨年くらいから囲碁が前より好きになってきたと感じて……」
あれ、子どものころから碁が大好きというイメージがありますが。
里菜「子どものころは打つのが楽しくて、プロになっても楽しいだけで。負けると苦しくて。10代の頃から当たり前に囲碁があって。でもどんな仕事でも大変ですよね。苦しいとか言っていられない。そんなことを考えているうちに、なんか1周まわって、囲碁って面白いなとふと感じるようになって。無心に、打ちたい手を打つようになりました」
それはいつ頃ですか。
里菜「昨年秋のアジア大会の前くらいからでしょうか。6月にあった呉清源杯(世界戦)でベスト4に入ったあたりです」
生活など環境に変化はあったのですか?
里菜「半年くらい前から早寝早起きをするようになって。よく眠れるのです。普段はもう夜10時~10時半には寝ています」
それが好調の要因ですか?
里菜「自分では好調と思っていなかったのですが。
1年位前から朝起きたらすぐ、顔を洗って30分くらい歩くようにしました。とても気持ちいいなと幸せを感じています。
あとピラティスを週に1回ペースで1年くらいやっています。心も体も整い、リラックスできて最高です。
また、忙しくなると外食が多くなってしまっていたのですが、最近、月に1回くらい母が冷凍したおかず、ロールキャベツやキッシュ、ヒジキ煮、お魚、汁物などを送ってくれるようになって。感謝しています。囲碁以外の面が充実してきました」
「心技体」が揃ったという感じでしょうか。
里菜「あ、心と体は充実していますが、『技』はまだまだ。違います。
あと、2カ月前に犬を飼い始めました。プードルとポメラニアンのミックスで、『ぽんちゃん』といいます。可愛くて守らなければという気持です。ぽんちゃんのママとしての責任があるので、『犬の気持』など読んで、ご飯を1日3回あげて、お水、トイレを変えて……。これまで自分のこと以外やることがあまりなかったのですが、「命」のことなので一生懸命やっていて、自分が成長している感じがあります」
仲の良い徐文燕二段の師匠・光永淳造六段から問題を出してもらっているそうですね。
里菜「ヨセの問題を毎日朝、ここ1年、送っていただいています。13路盤で、すぐできるものありますが、1時間~1時間半かかるのもあって。初めて見た筋もあるので、深いな。まだまだ色々な筋があるんだと思いました。問題を解くことによって自信がついたようで、これは大きいことです。でも最近、ヨセになりません」
毎日の積み重ねを続けているのですね。
一般棋戦や世界戦での優勝等々、里菜さんには達成していただきたいことがまだまだあります。
今後もご活躍を期待しております。