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「怒りロジン」を投げた外国人投手の処分決定 ぶつけられた球審は3日後に息子がドラフト指名の激動の日々

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
処分を受けたマイク・モンゴメリー(写真:サムスンライオンズ)

韓国野球委員会(KBO)は9月14日に賞罰委員会を開き、サムスンライオンズのマイク・モンゴメリー投手(32)に対して審議した。モンゴメリーは10日のKTウィズ戦で球審に対し暴言を吐いて退場を宣告され、その後も球審にロジンバッグを投げるなどの威嚇行為を行った。

KBOは罰則内規7項に基づき、モンゴメリーに20試合の出場停止、制裁金300万ウォン(約28万2,000円)を科した。

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10日のKT戦に先発したモンゴメリーは、4回表2死ランナーなしの場面で8番チャン・ソンウへの2ボールからの3球目に空振りを奪ったところで、キム・ソンチョル球審(49)から「12秒ルール(※)」の1回目の警告を受けた。

モンゴメリーはチャン・ソンウへの5球目をピッチャーライナーに打ち取り4回表が終了。感染症予防によるロジンバッグ共用を避けるため、モンゴメリーは他投手と同様にマウンド上のロジンを手に取り三塁側ベンチへと下がった。

その際、モンゴメリーは球審に向かって暴言を吐いた。それを受けて球審は退場を宣告。するとモンゴメリーの怒りが爆発し、同僚に囲まれる中で制止を振り切ってロジンを投げた。それが球審の右腰に直撃し白い粉が飛び散った。

怒りが収まらないモンゴメリーは球審に向かってFから始まる7文字言葉を発し、捕手のカン・ミンホに帽子で口を押さえられた。そしてホセ・ピレラ外野手(元広島)に押し出されるようにベンチの中へ。それでもモンゴメリーの興奮状態は続き、ユニフォームの上着を脱いでグラウンド上に投げ込んだ。

映像:YTN news

この日のモンゴメリーは4回77球を投げて被安打2、四球3、三振4、失点1という投球内容だった。

今回の一件についてチーム内の話をまとめると「モンゴメリーは球審へのストライク、ボールの判定に不満がある中、12秒ルールの警告を受けて集中力が切れ、感情のブレーキが利かなくなった」、「6月の途中入団以来、結果が思うようについてこないことにストレスが溜まっていたのではないか」と推察している。モンゴメリーは先発として7試合に登板し1勝2敗、防御率は5.23だ。

一方、背中越しにロジンをぶつけられたキム・ソンチョル球審は、この3日後にも大きな出来事があった。自身の息子のドラフト指名だ。

13日に行われた「2022KBO新人ドラフト」でキウムヒーローズが7ラウンド(全体順位66番目)で指名したのが、キム・ソンチョル球審の息子で徽文(フィムン)高校3年のキム・リアン捕手。思わぬ形で注目された同捕手についてキウム球団は「安定した守備力が長所」と指名理由を挙げている。

※12秒ルール

KBOリーグの試合スピードアップ規定。投手が走者がいない際に12秒以内に投球しなかった場合、球審は1回目に警告、2回目からはボールの判定を下し、投手には罰金20万ウォン(約1万8,800円)が科せられる。時間の計測は投手がボールを手にした後、打者が打席で準備をした時に開始し、投手が投球動作に入った(軸足と逆の足を上げた)時までとする。計測は二塁塁審のストップウォッチで行う。

◇KBOリーグに審判と選手が親子で在籍するケースには、カン・グァンフェ審判(53)とNCダイノスのカン・ジンソン内野手(27)などがある。KBOリーグの内規では選手と親子関係にある審判を球審に据えないとしているため、カン・グァンフェ審判はNC戦では球審を担当していない。

またカン・グァンフェ審判は東京オリンピックにKBOリーグの審判員として初めて派遣され、ノックアウトステージの日本-アメリカ戦で球審を務めた。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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