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野球を愛し、記録を愛し、韓国の球場も愛した千葉功さん(元パ・リーグ記録部長)を悼む

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
「記録の手帳」連載2500回記念祝賀会での千葉功さん(写真:ストライク・ゾーン)

1975年から21年間、パ・リーグの記録部長を務め、雑誌「週刊ベースボール」では「記録の手帳」を2897回連載した千葉功さんが26日に亡くなった。85歳。

千葉さんとの出会いは2003年、筆者が企画しガイド役を務める韓国プロ野球観戦ツアーの第1回に千葉さんは一般参加者として申し込みをした。

「アメリカの球場はほとんど行ったから、今度は韓国の球場に行きたいと思ったんだよ」

千葉さんは翌04年にもツアーに参加し、毎試合、1球1球真剣にスコアブックに記した。千葉さんは当時オープンしたばかりのソウル郊外・インチョン(仁川)広域市にある、インチョンムナク(文鶴)球場(現インチョンSK幸福ドリーム球場)をとても気に入っていた。

「あれだけ見やすくて設備が整った球場は日本にもそうはないよ。また行ってみたいね。ソウルに移動するのは面倒だから、インチョンに泊まって3試合くらいゆっくり見たいね」

インチョンムナク球場の記録室からグラウンドを眺める千葉さん(写真:ストライク・ゾーン)
インチョンムナク球場の記録室からグラウンドを眺める千葉さん(写真:ストライク・ゾーン)

その時、千葉さんは70歳間近。しかしワールドシリーズにも一人で見に行くなど活動的だった。

「本当は家内も連れて行きたいけど、一人の方が気を遣わずに球場に行けるからね。自分でホテルを予約するし、チケットも自分で球団に連絡する。困ったことはインターネットで調べれば大丈夫」

今ほどインターネットでの情報収集が容易ではなかった2000年代初頭、千葉さんはインターネットを使いこなしていた。白い眉毛のその姿はおじいちゃんという雰囲気だったが、野球への情熱はまったく衰えていなかった。

2003年当時、SKに在籍していたエディ・ディアス(元広島)と千葉さん(写真:ストライク・ゾーン)
2003年当時、SKに在籍していたエディ・ディアス(元広島)と千葉さん(写真:ストライク・ゾーン)

千葉さんは未熟な筆者の質問にいつも丁寧に答えてくれた。09年、KBOリーグはチーム勝率の計算方法を変更し、それまでの「勝利数÷(勝利数+敗戦数)」ではなく、「勝利数÷試合数」とした。つまり引き分けを負けと同等に扱うということだ。このKBOリーグの変更について意見を求めると、千葉さんは語気を強めた。

「なんでそうなったの?日本でも引き分けを0.5勝として計算したことはあるが、負けと同じに扱ったことはない。引き分けと負けが同じなのは理解できない。これは1年でやめた方がいい。韓国のマスコミは反対していないの?」

「引き分け=負け」で勝率を計算した09年のKBOリーグはKIAが81勝48敗4分けで1位、SKが80勝47敗6分けで2位。しかしそれまでの計算方法であればSKが1位だった。千葉さんが「やめた方がいい」と言ったこの勝率の計算方法は翌10年も採用されたが、11年からは再び「勝利数÷(勝利数+敗戦数)」に戻った。

ソウル・チャムシル球場の記録室でグラウンドを眺める千葉さん(写真:ストライク・ゾーン)
ソウル・チャムシル球場の記録室でグラウンドを眺める千葉さん(写真:ストライク・ゾーン)

毎年、年賀状にはお孫さんの成長とご自身の近況が記され今年は「闘病生活が4年目となるも苦痛もなく穏やかに過ごし、オリンピックのテレビ観戦、野球に夢を馳せたい」と綴っていた。

17年前の5月、千葉さんは69回目の誕生日を韓国で迎えた。観戦ツアーの参加者たちとビアホールでお祝いすると、生ビールを勢いよく飲み干し、「野球を見て、うまいビールを飲んで気分がいい。もう死んでもいい!」と言って豪快に笑った。球界関係者という驕りなく、ファンたちと楽しそうに野球談議に花を咲かせていた。

野球を愛し、記録を愛し、野球を愛する人を愛した千葉功さん、本当にありがとうございました。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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