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TERUが描く変わり続けるバンドの姿――GLAY「G4・V-Democracy 2019-」レヴュー

宗像明将音楽評論家
GLAY(提供:ポニーキャニオン)

2019年7月2日にリリースされ、オリコンの週間シングルランキングで2位を獲得したGLAYの「G4・V-Democracy 2019-」。2006年からリリースされている、収録曲すべてがリード曲であるシングルのシリーズ「G4」の第5弾だ。「GLAYの4人」を強くイメージさせるタイトルである。

「G4」は、「GLAYによる4曲」を収録しているシリーズでもある。そして、「G4・V-Democracy 2019-」で注目すべきはTERUの活躍ぶりだ。GLAYは、「HOWEVER」「誘惑」も作詞作曲したTAKUROがソングライターというイメージが強いが、「G4・V-Democracy 2019-」では4曲中3曲の作詞作曲をTERUが担当しているのだ。編曲は、4曲ともGLAYと亀田誠治。

GLAY「G4・V-Democracy 2019-」(提供:ポニーキャニオン)
GLAY「G4・V-Democracy 2019-」(提供:ポニーキャニオン)

冒頭を飾る「JUST FINE」は、TAKURO作詞作曲による激しくもグラマラスなロック・ナンバー。ヴォーカルや楽器の音の輪郭がクリアなレコーディング、エンジニアリングにも耳を奪われる。

そして、続く「はじまりのうた」「COLORS」「YOUR SONG」の3曲はTERUが作詞作曲した楽曲だ。

荘厳な厚いストリングスで幕を開けるのが「はじまりのうた」。サウンドの奥で鐘の音が鳴るのは、「時を刻む優しい鐘の音が、街中に響いてる」という歌詞を踏まえたものだろう。そして、TERUのヴォーカルの高音も冴え渡る。ロックでありつつも清廉な楽曲だ。

ストリングスが響き、エレクトロニカな音もそっと鳴るのが「COLORS」。静と動が交錯する、エモーショナルなロック・バラードだ。TERUのヴォーカルも聴く者の胸に迫る。

「YOUR SONG」は、2018年にリリースされたシングル「愁いのPrisoner/YOUR SONG」の収録曲。今回はMISIAをフィーチャリングした新ヴァージョンだ。ブラスセクションやパーカッションは、ラテンをもイメージさせる。そして、終盤にかけてサウンドはゆっくりとアメリカ南部へと北上していき、MISIAのソウルフルな歌声で幕を閉じる。TERUとMISIAとのヴォーカルの掛け合いは、濃厚にして爽快だ。

2018年の秋、私はTERUにインタビューをする機会を得た。

「お金なんかどうでもいい、まっすぐ進みたい」―― GLAY TERU 、熱狂と冷静の四半世紀

「YOUR SONG」は、知的障がいのある人たちにスポーツを提供するスペシャルオリンピックス日本の公式応援ソングであり、「スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・愛知」の開会式でもTERUによって歌われた。ステージ上で歌うTERUのもとにアスリートの子供たちが集まる状況にもなったが、彼は子供たちの肩に手を回して歌い続けた。そのときTERUは「これだよ、これ!」と感じたと語っていた。

そんな経験をしたがゆえに、ここに再び収録された面もあるのかもしれない。

「G4・V-Democracy 2019-」は、デビュー25周年を迎えたGLAYの57枚目となるシングルだ。コラボレーションも含めると、デビュー以来GLAYはシングルをリリースしなかった年がない。これほどアクティヴなアーティストも珍しいだろう。動き続ける、変化し続けるGLAYをTERUが中心となって描いているのが「G4・V-Democracy 2019-」だ。

GLAY(提供:ポニーキャニオン)
GLAY(提供:ポニーキャニオン)
音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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