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全勝対決の「学び」とは?/リーグワンD1第9節ベスト15【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
激しい局地戦の連続。球を持つのはデアレンデ(写真提供=JRLO)

 今季のリーグワン第9節きっての激闘は、やはり埼玉パナソニックワイルドナイツと東芝ブレイブルーパス東京の全勝対決だろう。

 前に出る突進役へ、防御の援護役がしつこく絡む。その優劣が、次のプレーへかすかに影響を与える。ひとつひとつの局面が目の離せぬものとなった。

 ブレイブルーパスの森田佳寿コーチングコーディネーターはこのように述べる。

「本当にアームレスリングをしているようでした。お互いにプレッシャーをかけ、アタックでプレッシャーをかけ、ディフェンスでそのプレッシャーを(跳ね返して)、モメンタム(勢い)をシフトして、どちらかがミスをすればそこに付け込んで…と、本当にモメンタムの取り合いでひりひりするような、いい、ゲームだったなと」

 結果は一昨季まで2連覇の埼玉パナソニックワイルドナイツが36―24と勝利した。

 風上の前半を19―10とリードし、風下で迎えた後半も無理に攻め込まずにキックを多用。看板の組織防御でペースを掴んだ。

 24―10から29―10とするまでの50分頃の流れはまさにそれ。ワイルドナイツはこの日、時間を重ねるごとにタックラーの質を良化していた。

 逆にブレイブルーパス陣営は、キックを使わず攻撃で局面を打開しようとしたことを悔やんだ。それでも、そのまま突き放されはしなかった。

 60分にイエローカードで数的不利を背負い、万事休すかと思われたところから挽回したのだ。

 接点周りを中心に強いランナーが突進を重ね、ワイルドナイツの反則を誘うことでトライチャンスをもぎ取った。

 おかげで29―24と一時5点差に迫ったとあり、今季中に覆せないほどの差は感じなかったのだろう。森田はこうも述べた。

「(相手の)モメンタムをどうシフトするか、いいモメンタムを重ねたところでどうスコアまで持っていくかというところで、ワイルドナイツの選手はゲームの握り方がうまかった。その瞬間がゲームの肝だというところをピンポイントで掴みにくる。そこが彼らのチームとして成熟されているところでしょうし、それで彼らはいい成績を残しているんだろうと感じさせました。僕たちがスコアした後、どう(キックオフレシーブから陣地を)脱出していくか…。ディフェンスでいいブロックがあったなかアタックで彼らにプレッシャーをかけていくところでの実行力…。ゲームで多く見られた規律の部分…。この肝の取り合いで、ワイルドナイツさんに多くを取られた。ポジティブないい学びになりました」

 プレーオフでの再戦へ4強入りが必須ななか、レギュラーシーズンは残り7試合。連戦のさなかとあり、選手の状態を管理しながらの勝ち点確保が求められる。

 ブレイブルーパスはロックのジェイコブ・ピアス、ナンバーエイトのリーチ マイケル主将ら複数の主力候補が怪我で抜けているが、森田は「そう遠くないうちには戻ってくる」と述べた。

リーグワン ディビジョン1 第9節 結果

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 27―31 トヨタヴェルブリッツ

横浜キヤノンイーグルス 34―17 静岡ブルーレヴズ

東京サントリーサンゴリアス 34―14 花園近鉄ライナーズ

埼玉パナソニックワイルドナイツ 36―24 東芝ブレイブルーパス東京

三重ホンダヒート 14―24 リコーブラックラムズ東京

三菱重工相模原ダイナボアーズ 14―43 コベルコ神戸スティーラーズ

リーグワン ディビジョン1 第9節 私的ベストフィフティーン

1,高尾時流(コベルコ神戸スティーラーズ)…スクラムを優勢に運び、地上戦でも身体を張った。

2,坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…相手司令塔のリッチー・モウンガへ突き刺さる強烈な一撃をはじめとした好タックル、中盤からのビッグゲインなどで存在感を発揮。

3,パディー・ライアン(リコーブラックラムズ東京)…スクラムで好姿勢を保ち、チョークタックル、ダブルタックルで攻めの勢いを断つ。

4,マックス・ダグラス(横浜キヤノンイーグルス)…チョークタックルを連発。特に67分ごろには自陣ゴール前で決めてピンチを救った。

5,ワイサケ・ララトゥブア(コベルコ神戸スティーラーズ)…自陣深い位置で効果的なロータックルを重ねるなどぶつかり合いで奮闘。

6,姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)…25、40分頃にはバッキングアップで危機を脱し、再三の接点へのアプローチで向こうの攻めを鈍らせた。

7,ラクラン・ボーシェー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…ターンオーバーの口火を切るタックルを複数。それ以外の場面でもよく刺さり、攻撃中の接点への援護でも渋く光った。

8,シャノン・フリゼル(東芝ブレイブルーパス東京)…ナンバーエイトで先発。接点周辺などで強烈な突進を重ね、幾多のタックルでも威力を発揮。

9,小山大輝(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…後半開始早々、敵陣22メートルエリアで好機を掴んだ。スクラム脇を自らのサイドアタックで切り裂き、以後、強い突進役に球を託しながら、最後は自ら大きな弧を描くようなランと繋ぎでフィニッシュをおぜん立て。リードを保った際にはゆったりとさばいた。

10,ブリン・ガットランド(コベルコ神戸スティーラーズ)…防御に仕掛けながらのオフロードパスで先制点をおぜん立てし、自らのトライなどで12―7とリードして迎えた27分には防御へ仕掛けながらのパスで左大外の空洞を攻略。追加点を挙げた。続く36分には自陣からの攻撃で大胆なキックパスを2本、通し、勝負を決定づけた。

11,松永貫汰(コベルコ神戸スティーラーズ)…キックパスをもらってタッチライン際を快走し、防御に囲まれながらも外へ出されずラックを作れたのは36分。ボールキープしたのは。中央突破でも光った。

12,梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)…中盤で相手にタックルを放ってはすぐに起き上がり、右タッチライン際へ回り込んでは味方のターンオーバーボールをもらい快走。そのまま先制トライを決めた。以後もキックチャージからのフィニッシュ、鋭く間合いを詰めてのタックル、防御を引き寄せながら繰り出すパスで好循環を生んだ。

13,ダミアン・デアレンデ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…全勝対決に臨むクラブのインサイドセンターとして防御網への突進、穴場を切り裂くラン、カバーディフェンス、ジャッカルとMVP級の働き。

14,根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…緊急出場から気を吐いた。空中戦に競り勝ったり、タックルを浴びながらボディバランスを整えて鋭く走ったり。

15,松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)…タックラーを振り切ってのフィニッシュ、ハイパントキャッチとラインブレイクの合わせ技、防御の死角へのパス。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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