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好調ブレイブルーパス、もしクロスボーダー戦出るならベスト組む?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター

 もしあなたならベストメンバーを組んだのだろうか。

 リーグワン1部で今季ここまで6戦無敗、東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダーヘッドコーチがこの件で話したのは、2月19日だ。クラブ主催の定例会見で、同月に初めて実施の「クロスボーダーラグビー2024」(CBR)について話題が及んだ時である。

 南半球のスーパーラグビー・パシフィックのチーフス、ブルーズが来日し、国内リーグワンの前年度上位4強勢のうち2チームと計2試合を実施するのがCBR。この国に世界トップ級のクラブが訪れる面白みこそあったが、開催時期、双方にとっての位置づけの違いなどが議論を招いた。

 リーグワンにとってはレギュラーシーズンの只中で、スーパーラグビーにとっては開幕前。非公式戦とあり、どちらにとってもいかに陣容を整えるかで意見が割れるのは自然だった。

 埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズヘッドコーチは、4日、ベストメンバーでチーフスを38―14と下した後に述べた。

「クロスボーダー戦の開催のタイミングは、(両軍の)プレーオフの後がいい。2月はリーグワンの月だと思っている」

「今回、日本人選手へ求めるものが、フェアではなかった。まず、試合の実施時期です。この時期にやることは、すべてのパーティに対してルーズ(負け)です」
参考:ワイルドナイツ指揮官のロビー・ディーンズ、チーフス撃破の直後に提言。【ラグビー旬な一問一答】

 来季以降の開催については白紙の状態だが、もし今季と同じ形式の場合は目下12チーム中2位のブレイブルーパスも無関心ではいられまい。

 ブラックアダーは元ニュージーランド主将の52歳。かつてディーンズが指揮を執っていたニュージーランドのクルセイダーズで主将を務めていたことでも知られる。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——CBRへの所感は。もし来年の今頃に似た形式でおこなわれた場合、ブラックアダーさんはどうしますか。

「大会期間中にCBRをやるのは、いい面、悪い面があります。リーグワンが最優先であるべき。今回、日本のチームがCBRに善意を持って、ベストメンバーを揃えたのに対し、ニュージーランド(チーフス、ブルーズ)はプレシーズンの一環とありベストではなかった。

 何を優先するか、という話になる。リーグワンと、(スーパーラグビー側にとっての)プレシーズンどちらを優先するか? クラブチーム側、リーグ側、ユニオン側が話し合ってどんなやり方がいいかを検討すべき。…答えになっていますか?」

——今回もしブレイブルーパスが出ていたら、ワイルドナイツのロビーさんと同じようにしましたか。

「やはり、バランスになるかと。ロビーさんはベストに近いメンバーを組んだことで勝ちましたが、怪我のリスクはあるわけで。その後、彼は自分の意見も述べていたようではありますが。…CBRに参加しなかったチームにとって、この時期はプレシーズンのようなタイミングになりました」

 会見では日本代表の話題にも触れた。

 2月11日には、前日から2日続けておこなわれた日本代表のエディー・ジョーンズ新ヘッドコーチのクラブ首脳向け説明会に参加。その様子について話した。

「前向きな点としては、ほぼ全クラブのヘッドコーチやそれに値する人が来たこと。話の内容は、エディーさんの持つ今後のビジョンを共有し、それに対してどんな変化を加える必要があるかの話をしました。いいコネクションを築き、認識を共有できたのは好材料です」

 チームは今季、15シーズンぶりに開幕6連勝を飾った。13年度以来2度目の就任となったリーチ マイケル主将らリーダー陣の提案により、第3節を前に準備のプロセスに微修正を加えている。

 リーチの説明。

「一番、変えたのはフィジカルのところ。生コンタクト(タックルを交えて全力でぶつかり合う練習)の回数と、それをどこに持っていくか。もともと東芝はフィジカルのチームだから、それをなしにはできない。だから(土日の試合に向けて)月、火曜にフィジカルを上げて、水曜はオフ。木曜日は小さいフィジカルのドリルをなくして、(ポジションごとの確認作業の後に)ほぼ試合と同じフルコンタクトを8分間。アタック、ディフェンスで何でもあり。それで自分たちのフィジカル、メンタリティを仕上げる。それまでは全部の練習を100パー(セント)、100パー(セント)、100パー(セント)でやって、試合当日に疲れがあった。100パー(セント)を作るエリアを短くした」

 練習強度にメリハリをつけることで、本番を最高潮で迎えられるという。

 リーグ再開後は第11節まで5連戦とあり、リーチは言う。

「ここまでの4 週間が正しいかどうかがわかる」

 まずは次の第7節にフォーカスが当たる。相手は昨季3位の横浜キヤノンイーグルスだ。

 24日、東京・秩父宮ラグビー場でぶつかる両者は、前年度の対戦では48―59でイーグルスが勝利。現在、同部はファフ・デクラーク、ジェシー・クリエルといった現役南アフリカ代表戦士が故障離脱中だが、ブラックアダーは気を引き締める。

「(イーグルスは)タフで、フィジカルなチームであり、アタックのストラクチャーを持っている。バラエティも持っている。そして開始から勢いを持てるチーム。去年、自分たちはそこでやられた。相手に大きな選手に怪我人が出ていると認識しているが、彼らはよくなっている。タフなテストになる。我々にとって今季で一番タフなテストになる。本当の意味での準備がしっかりできている必要がある。勝つにせよ、負けるにせよ、重要な学びが待っている」

 試合における見どころは「遂行力」と指揮官。デザインされた攻めをスコアに直結するためのスキル、コミュニケーションが肝となる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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