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日本代表指揮官に復帰のエディー・ジョーンズ、時代の変化にどう対応?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 日本代表のエディー・ジョーンズ新ヘッドコーチは、昨年末の就任を前後して国内の各カテゴリーのゲームを視察。折に触れメディアにビジョンを説く。

 1月15日のブリーフィングでは、万事における速さで局面を凌駕する「超速ラグビー」というコンセプトを紹介。その流れで質疑に応じた。

 その折、話題に挙がったのは、時代の変化だ。

 ジョーンズは2012年からの4年間、日本代表を指揮。選手に献身を課し、15年のワールドカップイングランド大会で歴史的3勝を掴んだ。

 以後はイングランド代表、オーストラリア代表の指揮官を歴任し、今回、公募のプロセスを経て再登板。以前といまとで選手の気質は変わったかもしれず、ジョーンズ氏のアプローチが当時とどう変化するかにも注目が集まっていた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——やりたいことを浸透させるための選手との接し方、アプローチについてどう考えていますか。8年前までの「第1次政権」時にそこまで意識しておらず、これから絶対に意識するようなことはありますか。また、日本でプレーする選手の気質の変化はどう感じますか。

「全てが変わったと思うんです。

世界一いい組織とは、その組織の価値観を明確にしている。その核は変えず、付加価値を追加していくわけです。環境の変化によって、付与するものを変える。

日本ラグビー界には核となる価値観がある。ハードワークする選手。集中力のある選手。そこに、追加すべきものを足していくのですが、いまの若い子たちは、本当に(以前と)違います。

世代を見ていくとわかります。

30年前、私がラグビー選手だった時、学校の先生もやっていました。学校が終わるのが待ち遠しかった。早くトレーニングに行きたかった。練習に行きたかった。私は常にラグビーのことを話したかった。

その後、最初にプロフェッショナル化が起こった。お金が発生する。これにより『凄くいいな、大好きなラグビーをしていて、お金をもらえるんだ』となった。その頃には、まだ楽しい要素が残っていた。

ただ、いまのプロフェッショナルな選手にとって、ラグビーは仕事です。お給料をもらうための仕事。自由な時間ができたら、『自由な時間ぐらい、ラグビーの話はしたくない』と思う人が多いんです。ですので、これからもっともチャレンジングな試みになるのは、もう一度、ラグビーを愛してもらうよう促すことだと思うんです。

本当にラグビーに対して愛があるというのは、本当のトップ選手からしか見られません。いまの若い選手に育んでもらうべきことは、ラグビーへの愛、ラグビーへのハングリー精神なのです。『もっとよくなりたい』という気持ちです。『仕事だから、果たさなければならない』ということではなく、です。

これは日本だけの問題ではなく、世界にとっての課題だと思います。

(改めて)ご質問の答えですが、多くのことが変わりました」

——エディーさんほどラグビーに没頭している人は、世界中を探してもそう多くはない。それを踏まえ、これから集める選手へ「ラグビーを愛してもらうよう促す」。具体的にどんなことをしたいですか。アイデアは。

「まず、期待値を提示します。期待値は何か。『日本代表でプレーしたければ、その一部になりたい、関わりたいと思うなら、本当に特別なことをしないといけない。それは、自分自身のなかで特別なものを発見できる機会だ』と伝えることです。そういう機会があるんだと気づかせるための、環境づくりもしたいです。加えて、それに適した選手を見つけることもしたいです」

 ハードワークを課すと同時に、ハードワークで得られる利益も明示すると言いたげだ。日本代表のためにすべてを捧げたいと、万人に思わせるためにどう動くか。注目が集まる。

 改めて、ジョーンズの視点で「本当にラグビーを愛している」と呼べる選手は、トップ級のひと握り。多くの選手をその基準に到達させるべく、最初のスコッドにはロールモデルとなる選手を加えるつもりか。だから最後に「それに適した(日本代表での努力が素晴らしいことだと伝えられる)選手を見つけることもしたいです」と述べたのではないか。

 別な質疑で、目指す選手像について聞かれる。

「どのスポーツでも、どの国でもそうですが、ハードにファイトする(のが大事)。懸命に取り組んで、ある一定のところに辿り着くと、人は満足するわけなんです。それは自然なあり方でもあると思います。しかし、椅子の前に座り、前のめりにして準備していないと、それは私たちのチームにとっては何の役にも立ちません」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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