Yahoo!ニュース

日本代表の問題は「規律」と指揮官。リーチマイケル退場してサモア代表に敗戦。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真はオールブラックス・フィフティーン戦(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 どちらが負けてもミスのせいで負けたと悔やんでいただろう。

 7月22日のパシフィック・ネーションズカップ初戦で、日本代表はサモア代表に22―24で惜敗していた。

 ノックオン(落球)などを計測するハンドリングエラーの数は、負けた日本代表が12で勝ったサモア代表が15だ(J SPORTS中継参考)。

 さらに日本代表は、前半30分にナンバーエイトのリーチ マイケルを一発退場で失っていた。リーダー格のリーチに危険なタックルがあったため、チームは残る50分間を14人対15人で戦っていた。

「レッドカードが出たことで、チームとしてのある程度の方向性は決まってしまった」

 ジェイミー・ジョセフヘッドコーチがこう話したのは、試合後の会見時。フッカーの坂手淳史主将と登壇し、敗戦とその背景について話した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——感想は。

ジョセフ

「残念な結果になった。ひとり、いなくなると試合に勝つのは厳しい。リーチにレッドカードが出てから50分、クオリティの高いチームと戦うのは、難しい。ただ、そこでチームがどう対応していくかという点では、ポジティブだった。アンラッキーだったが、勝てるところまで行けた。ポジティブなところも、活かしていきたい」

坂手

「結果に関しては悔しいですし、がっかりしている部分はあります。皆の顔を見ても、そう思います。難しいゲームでした。ただ14人になった時、同じ絵を見続けられる時間は多くて。スリッピーなボールによるミスもありましたが、そこでもエナジーを落とさず、戦い続けたことは、自分たちにとってこれからに繋がる部分です。

 もうひとつの修正点はスクラム。修正するのに時間がかかった。もっと早く直さないといけなかった。プランとレフリーのちょっとした違いがあり、(微修正まで)前半25~30分くらいかかったのかな…。冷静になった後半には(より)修正できましたが、テストマッチに勝っていくには早い修正をして、もっと強くならなくてはいけない」

——危険なタックルでのレッドカードがあった。今後の対策は。

ジョセフ

「きょうはフォワードが頑張っていた。大きく、パワーがあり、ダイレクトに当たってくるサモア代表に対し、身体を張ってくれた。スクラムではアジャスト、調整すべき部分がありましたが、途中からウイングのジョネ(・ナイカブラ)がフランカーに入った。その分、(次の)ディフェンスは難しくなりましたが。

 ラインアウトでは相手ボールを捕れた。相手のフローを変えられた。

 最終的には運がなかった。最後は我々がペナルティをもらえてもよかった」

 メンバー23名の平均体重で7,8キロ、上回るサモア代表に、日本代表は目指すスタイルを貫くことで勝利を目指した。

 例えば、リーチを欠きながら10―10と同点で迎えた後半2分。

 ハーフ線付近左で相手のキックを処理すると、タップされた球を受けたウイングの松島幸太朗がラン。前進する。

 スクラムハーフの流大は、接点で圧を受けながらも右へパス。フォワード4名のユニットに突進させ、接点ができるやもう一度、右へ展開する。

 スタンドオフの李承信、フルバックの山中亮平が目の前の防御を引き寄せながら球を放ることで、右端のスペースでバトンを受け継いだセンター、中野将伍がノーマークに近い形で前進。敵陣10メートル線上右まで進むと、流が左へ折り返す。

 ボールは李を経由し、4名ひと組のユニットに渡る。

 そのうちもっとも右側後方にいたのは、ロックのアマト・ファカタヴァだ。

 ユニット間にパスが通るや、ゲインライン上へ一気に駆け込む。ユニット内の味方から短いパスをもらい、ラインブレイクを決めた。

 まもなくサモア代表がタックルした後に反則。着実にスコアを重ねたい日本代表は、李のペナルティーゴールで13―10とリードを奪った。

 それ以外のシーンでは、中盤からでも後方へのキックを多用。望む位置で球を得れば、外側および接点周辺のスペースへ球を運んだ。

 しかし試合全般を振り返れば、加速する攻めをミスで終わらせるシーンが少なくなかった。2点差を追うラストワンプレーでは、逆転を狙い敵陣でアタックも接点での反則により逸機。一部の選手はひどく落胆した様子だった。

 2人は続ける。

——14人になってから。

坂手

「プランに関しては、14人になってからも大きな変更はなかった。プラン通りに相手にプレッシャーをかけていこうと。ただ14人になるとスペースが空いてきて、ひとりひとりのタックルレンジが広くなるから、カバーして、繋がり合ってディフェンスをしようと話しました。ラインアウト、スクラムではアジャストが必要だったので、14人になった時のプランを遂行しました」

——ワールドカップ本番へどんな糧を得たか。

坂手

「きょうの経験はチームにとって大きなもの。もうこういうことが起きないのが理想ですが、次、こういうことが起きてもプランを遂行し続ける(のが大事)。またゲームに勝ち切るところまで行ったら、そこを勝ち切るための遂行力が必要だった。ラスト5分まで勝負を繋げましたが、最後の遂行力が足りなかった。これからの練習で、プランを理解してやっていきたい」

——きょうエラーが多かったことは、強化プロセスのなかではやむなしなのですか、それとも喫緊の課題として捉えていますか。

ジョセフ

「すぐに修正したい点です。ただミスを犯した選手には、リーダーの選手が多かった。

 ボールを落としたくて落とす選手はいません。福井翔大や長田智希といった若手はインパクトを与えた。そんななか、経験者がミスをしたことに関しては、彼らのなかで責任を取ってもらいたいです。

 取られたトライはチャージダウンとミスタックル。防御でも相手の攻撃にプレッシャーをかけられたところもあった。

 今後、スキル、規律はすぐに修正して、来週の試合に向かっていきたいです」

 サモア代表は、今秋のワールドカップフランス大会でも対戦する相手。会見後のミックスゾーンで、リーチは「勝つためには自信をつけることが大事」と話す一方、「負けから得るものはたくさんある」とも続けた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事