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日本代表候補合宿では「耐えられるか」を見る。タタフ不在についてジョセフ説明。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
テストマッチ(代表戦)に臨む際のジョセフ(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 サバイバルレースが始まっていた。ワールドカップフランス大会を1年後に控えたラグビー日本代表が、9月5日、大分県別府市での候補合宿を本格化させた。

選出された52名のうちほとんどが練習施設に現れ、その過半数が実戦形式練習に臨んだ。

 怪我から復帰した松島幸太朗が、リーグワン新人賞になった根塚洸雅とカウンターアタックを繰り出す。22歳にして正司令塔候補となった李承信が、防御の裏へ絶妙なキックを転がす。フランカーのベン・ガンターが、地面に倒れた相手が持つ球を引き抜く…。

 稲垣啓太、坂手淳史主将らが奥側で別メニュー調整のように映った。しかし、実相は違った。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、このキャンプを「3チーム制」で動かすと説く。

「52人にしっかりと準備をさせる。コロナの状況がどうなるかもわからないので、選手層を厚くすることを最優先に考えています」

 10月1日以降の対オーストラリアA・3連戦(JAPAN XV名義で臨む)に向け、いまいる52名が40名もしくは40名弱に絞られる。それまでの間、選手は実績、年齢を問わず3つのグループにわかれる。

 指揮官は2日に実施したメンバー発表についても、補足説明を施した。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——練習を終えて。

「選手たちはエキサイティングな気持ち。若い選手も、中村亮土、姫野和樹のような久々の選手も、いい1日を送り、いい練習をしています」

——選手に期待することは。

「きょうは朝7時半から午後4時半頃まで練習をおこなうビッグデイでした。私たちが選手に要求すること、選手たちについて試すことは、高いインテンシティ(強度)のなかで耐えられるかどうか。そこを見ていきたいです」

 確かに実戦形式のセッションは休憩をはさまずに長く、続いた。終盤、選手たちは疲弊しながらも懸命に身体をぶつけ、ボールを追いかけていた。

——他方、ジムでトレーニングしていた選手もいましたが。

「そういうわけではなく、今回は3つのグループにわかれて活動しています。いっぺんに練習ができるのは(15対15で)30人までなので、(各組の入れ替え選手を含めた)約30人が練習し、それ以外は別の場所で。(3つの組を)ローテーションさせながら動いています。そのため、彼ら(あまりグラウンドに出なかった面々)は別メニューだったわけではありません。怪我人に関しては、時間をかけながらその場に戻していく。一方、新しい選手もいる。彼らにできるだけ早く自分たちのラグビーをやらせられるようにしなければいけない」

——激しい競争の只中。挑む若手選手やそれを受けて立つ経験者の姿をどう見るか。

「いずれもやる気があり、強度の高い練習ができた。経験のある選手はこのようなトレーニングにある程度、慣れている。今後、そこで一緒にプレーした若い選手が、明日の練習でも一貫性を持ってきょうのようなプレーができるか、観察していきたいです」

——ワールドカップまであと1年。この時間をどう見ますか。

「今年はすでに4試合、おこなえて(※1)、これから6試合が予定されている(※2)。プログラムとしてはいいシーズンが送れている。そして代表活動を終えると、(国内の)リーグワンのシーズンがあります。ワールドカップまで…と考えると、いい試合のスケジュールが組めていると思っています」

※1 対ウルグアイ代表2連戦、対フランス代表2連戦。その他、トンガ出身選手らとの慈善試合も組まれた。

※2 対オーストラリアA・3連戦の後は、ニュージーランド代表、イングランド代表、フランス代表とテストマッチをおこなう。

 最後に、ファンが気になる事案にも触れた。

 今回、夏の対フランス代表2連戦で活躍したテビタ・タタフが選外となっているが…。

——これから追加招集される選手はいますでしょうか。多くのファンはタタフ選手の不在が気になるようですが。

「コンディション不良のため、彼は選びませんでした。このレベルになると、責任を持って、(求められる日までに)フィットネスを合わせないといけない。彼は(今回)それができなかった」

 この候補合宿に先立ち、8月下旬に体力テストのキャンプがあった。そこに参加し、今回の合宿には呼ばれなかった選手も複数名いて、タタフはそのひとりだった。

 ジョセフは選手の主体的な態度を重んじる。初めて8強入りしたワールドカップ日本大会の前にも、経験豊富な海外出身選手のメンバー入りへフィットネステストの数値目標を課したことがある。

 今回のタタフも、次のワールドカップで必要な選手となるための宿題が与えられているのかもしれない。

 ジョセフはこうも述べた。

「彼はポテンシャルが高く、私たちにとって大きな存在でもあります。コンディションが整うのなら、どこかで…という可能性もないとは言えません」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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