Yahoo!ニュース

辻雄康、日本代表デビューも「悔しい気持ちでいっぱい」のわけは?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
NDSのメンバーで臨んだ慈善試合で活躍。この試合の直後、代表本隊に昇格。(写真:つのだよしお/アフロ)

 ラグビー日本代表が今秋のツアーに向け、段階的に活動を再開させた。

 6月からの約1カ月強は、ふたつのチームを同時並行で動かし、主力組が対フランス代表2連戦に臨んでいる。その折、今年、初代表入りを果たした辻雄康が、実感を語っている。

 辻は東京サントリーサンゴリアス在籍の26歳。身長190センチ、体重113キロで、現在は海外出身選手の出場が目立つロックのポジションにあって、存在感を発揮する。

 今夏は予備軍にあたるナショナルディベロップメントスコッド(NDS)で活動をスタートさせながら、6月11日のトンガ出身者らとの親善試合(東京・秩父宮ラグビー場)でフィジカリティの強さをアピールする。

 すると、NDS組がウルグアイ代表戦に挑む18日よりも前に、別動隊として動く主力組の日本代表へ参加。7月9日のフランス代表戦で途中出場を果たした(東京・国立競技場)。

 チーム解散後の7月下旬、社業の合間を縫って単独取材に応じている。年長者の凄み、国際舞台への思い。話題は多岐にわたった。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——代表活動を振り返って。

「最終的には、代表に呼ばれて1キャップ(テストマッチ=代表戦出場の証)を獲れたという実績があって、世間的にはよく頑張ったと言われることもありますが、実際にジェイミー・ジョセフヘッドコーチに対してアピールできたかと言えば、試合では何も残せていない(出場時間が限られた)。悔しい気持ちはいっぱいです。次にチャンスをもらえるのなら、もっとアピールしたいです」

――NDSから代表本隊へ、他選手よりも早めに「昇格」した時の思いは。

「呼んでいただいてありがとうと感謝している気持ちなのですが、まだ代表メンバーでもないですし、自分の立場を理解して、アピールしていかなくてはいけなかった。道をこじ開ける、ではないですが、アグレッシブにボールキャリー、コンタクトをしっかりやっていこう…という気持ちでいました。それが自分にできる最大限のことなので、そこしか、意識していないというか。『(試合に)出られてよかった』ではなく、結果にこだわらなければと思っていた。そこにコミットできるため100パーセントの準備を、自分のなかで頑張っていた感じです」

――他のNDS組は6月18日のテストマッチ出場を目指すなか、辻選手はより激しい競争のもとで初キャップを目指すことになりました。

「キャップは大切かもしれないですが、NDSの最終目標は、ワールドカップで結果を残すことだと思うんですよ。そこに向かうためのチャンスをもらえたという意味で、(早期の本隊への昇格は)プラスに捉えています。その時、確かにキャップは取りたかったですけど、それよりもありがたいチャンスをもらえた感覚ではありました」

――宮崎の本隊合宿で得た学びは。

「全員がコミュニケーションを取れる。堀江(翔太)さん、坂手(淳史)さんが細かいところまで、最後までコミュニケーションにこだわる。隣とコミュニケーションを取って喋る。…ここを、学ばせてもらいました。自分に足りないところでもありました。

 オフフィールドでも、オンフィールドのプレーに関してさまざまなシチュエーションを想定して話していく感じでした。『こういう時はどうするの?』とコーチに対して質問していく姿勢もありました。それを聞くことによって、積極的に発言するタイプではない自分も、『あ、そういうことなのか』と理解することもできましたし、周りの意思統一もしっかりとできたのかなと思っています。『同じ絵を見る』といった感じの言葉をたくさん言っていたので、それを意識しているのだろうなと感じました。

 コンタクトシチュエーションでの強度もNDSとは全然、違ったところです。

 あとは、全員がリーダー。NDSにもそういうところはありましたが、(本隊では)さらにそこ(個々のリーダーシップ)のレベルが違っていた。これは、自分が上がったばかりだったからかもしれないですが、ひとりひとりのオーラ、その人たちについていきたいなと思わせる先輩方の態度というところは、本当にすごいなと素直に感じました」

――テストマッチレベルでリーグワンの時のようなパフォーマンスを発揮するには。

「テストマッチでやるには、もちろんフィジカル。それを起こすためのスピードをひとりひとりが持ってなくてはいけない。レベルが高くなるほど、そこ(フィジカリティとスピード)で通用するか、しないかが変わってくるので、もっと伸ばさなくてはいけないという素直な気持ちがあります。

 また、毎週、毎週、対戦相手によって(チームの)フォーカスポイントが変わりますが、それに対する理解の切り替えのスピード(を速めたい)。そして、理解したことを無意識レベルでおこなっていくスキルも(高めたい)。簡単に言えば、言われたことをすぐにパッとできるか、という話ですが、そこがまだまだ足りないので、修正したいです。

 自分は結構、反復して覚えるタイプ。ですので練習の初めにミスをしてしまうことがある。それを本当に少なくしていく必要があるし、そこをすぐできるような選手が(試合に)使われるし、首脳陣、チームメイトの信頼も厚くなると思います」

 功績を残したことに喜ぶよりも、自分に課したハードルを越えられなかったことを悔やんでいた。

 元プロテニスプレーヤー、松岡修造氏のおいとして知られる。著名な血縁者が話題にされることへの思いを聞かれても、その向上心をにじませる。

「逆に言うと、そういうところで注目されるような選手なので、まだ。それじゃなかったとしてもメディアに名を連ねられるよう、しっかりと頑張っていきたいという風に思っています。

 そういう風に書かれるのは、まぁ、記者さんの自由じゃないですか。それを僕が止められるわけではないですし。自分は、自分がしなくちゃいけないことを自分でやる。そういう(家族に関する)質問があるなら自分は素直に答えるというだけです」

 実直なタフガイ。今秋に開かれるニュージーランド代表などとのゲームでも、出番を得ることができるだろうか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事