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指揮官と若手がバトル? リーチ マイケルが語るブレイブルーパス劇的勝利の背景【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は第13節(写真:つのだよしお/アフロ)

 ホストゲームが終わってからのセレモニー。東京・味の素スタジアムに炎が舞う直前、東芝ブレイブルーパス東京の荒岡義和・代表取締役社長は言った。

「強い東芝ブレイブルーパス東京の復活です」

 5月1日のリーグワンの第15節で、近所同士で目下首位の東京サントリーサンゴリアスに27―3と快勝する。

 シーズンが成立した年度の公式戦でこのカードを制するのは、2015年12月25日にあった前身のトップリーグの第7節以来だ。不成立に終わった2020年シーズンの初戦を26―19で制した日は、前半29分にサンゴリアスから退場者が出ていた。今度のクラシコの勝利は、ブレイブルーパスにとっては格別だった。

 まだリーグワンのレギュラーシーズンは終わっていないが、12チーム中4位に浮上したのは確かだ。前年度まで4シーズン逃している、プレーオフ進出に大きく近づいた。

 キックオフを前に、ロッカールームでは「この雨は俺たちの味方だ」とスクラムハーフの小川高廣共同主将。かねてフォワードの強靭なプレーを強みのひとつとしているだけに、この日の悪天候を喜んでいた。

 いざ試合が始まれば、終始、持ち味を発揮した。

 多彩なパス、多角度的な走りを交えたワイドアタック、鋭い出足の防御と接点への圧力の合わせ技、勝負どころでのモール…。

 本来ならもっと連続攻撃をしたいサンゴリアスは、ブレイブルーパスのプレッシャーを前に攻め込んでからのミス、接点での反則を重ね、向こうの土俵に引きずり込まれた。

 プレッシャーを食らった側の心境は。敗軍のオープンサイドフランカー、小澤直輝は言う。

「多分、天候のこともあって、(ブレイブルーパスの)ディフェンスラインが思い切り上がってきていて、(サンゴリアスの)ボールキャリーのオプションを消していたと思います。うちも1対2(人数の多い相手に圧力をかけられる状態)みたいになってしまって、アタックのシェイプもあまりうまく作れないままアタックを繰り返してしまい、ゲインライン(攻防の境界線)を下げられたり、ターンオーバー(攻守逆転)をされたりした。(再戦までには)チーム全体として、中盤のエリアでどうアタックするかを考えなくてはいけないと思います」

 試合後、フランカーとして先発してプレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたリーチ マイケルが喜びを語る。日本代表で主将経験のあるリーチは、フッカーで先発の橋本大吾とともに会見し、練習中のエピソードを交えて勝因、今後の展望を語った。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「皆さん、こんにちは。きょうは雨がたくさん降って、それでもたくさんのラグビーファン(公式で10169人)が集まって応援してくれたこと、感謝しています。ブレイブルーパスとして、きょうは非常に大事な試合。勝てばトーナメントに行ける(可能性が高まる)。1週間の準備を大切にしてきました。すごいプレッシャーのなかで勝って、チームが成長した一日だと思っています。最後の試合へもいい準備をして、優勝に向けても準備していきたいと思います。ありがとうございます」

――ロッカールームの雰囲気は。

「元気ですね。3~4年、ずっと苦しかったなか、少しずつ形になってきて、結果もついてきて。きょうは喜んでいいと思います」

――府中ダービーでの勝利は久々。

「この5年のなかではベストかなと思います。雨のなかでのブレイブルーパスは強くて、雨が好きなチームなので。ドライでやっていくとさらに面白い府中ダービーになると思います。ただ、もしかしたら準決(勝)で再戦して、その日、また雨が降るといいなと思っています!」

――きょう、満足できるところは。

「ディフェンスで前に出て止めた、相手のモメンタムを止めたところは満足できる。あとはセットプレー、特にモール。ラインアウトの精度が上がってきたので、そこも満足できるところはあります。

 ブレイブルーパスはシーズンを通し、ひとつひとつの課題をクリアしてきている感じがします。特にフォワードのセットプレー(中盤戦からスクラムが改善傾向にある)。そうしていくと、チームの自信が高まります。(前年度に順位で上回られた)神戸に勝って、キヤノンに勝って…となると、やっていることが確かであるとわかって、自信がついていく。いいマインドセットを持って準備することが大事。そのなかで勢いを作っていく」

――強力なフォワードについて。

「ラグビーではフォワードが強くないと勝てない。いま、(ブレイブルーパスでは)ちょうどフォワードが強くなっていて、バックスでもトライを取る選手もいれば、前に出る選手も出てきています。去年あまり出ていないニコラス・マクカラン選手は今年、大ブレイクして、若手もどんどん出てきて、いいエナジーを出している。フォワードは助かっています。大吾と僕がスクラムを組んで、その後にトライを取ったり、前進したりしているところを見て、安心して、スクラム、組んでいます」

――接点で攻守逆転ができたわけは。

「ブレイブルーパスのなかでブレイクダウン(接点)は大事な部分で。実は、ヘッドコーチのトッド・ブラックアダーが週に2回、タックルスーツ(分厚い衝撃吸収素材によるウェア)を着て、ブレイクダウンの練習を。50歳なんですけど、マスクをつけて、タックルスーツをつけて、スパイクを履いてやっています。結構、強いですよ。修治にお願いして、後で見せます」

 その言葉通り、山野修治チーム広報は自身のツイッターで当該の写真をアップしている。

 リーチは続ける。

「(当該の練習を始めたのは)今年に入ってからです。全員が、1回ずつやらないといけない。(強いのは)そのおかげかな、と思います。結構、面白くて、激しくて、若手の選手もブラックアダーをぴんぴんにしないといけない(のけ反らせるという意味か)。だから、監督のおかげだと思っています」

 就任3季目のトッド・ブラックアダーヘッドコーチは、現役時代にニュージーランド代表の主将を務めたタフガイ。ウイルス禍で取材者の出入りが難しい都内の練習場で、若者と身体をぶつけ合っているのもイメージされやすい。

 一般的に、好プレーの要因はひとつでははい。ただ、抽象論で総括できそうな問いに具体的なシーンを提示するのは、語り手としてのこの人の真骨頂か。

 プレーオフ進出へ行くには、5月8日の最終節での白星が欲しいところだ。敵地ヤマハスタジアムでぶつかる静岡ブルーレヴズは第5節で下した相手だが、いまは当時と比べ防御力が増している。

 敗れても他会場の結果次第で願いが叶うとはいえ、勝負がついたわけではない現状下でどんなマインドが求められるか。リーチはこんな問答も重ねた。

――これからプレーオフ行きを決めるまでには、また、もし決めた場合にはどんなことが必要でしょうか。

「僕らはまだまだチャレンジャーなので、勢いをつけることは大事。この勢いをそのままに、波に乗っていくことが大事。そのままいつも通り、特別なことはせず、1週、1週、やっていくことが大事です。いまは、ノンメンバーがすごいいい練習相手になってくれています。チーム力は上がっている感じがします」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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