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新型コロナウイルス感染で2戦不戦敗も…。堀江翔太、隔離期間の「進化」示す。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ユニット練習ではラインアウトの動きを入念に確認(筆者撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響でジャパンラグビーリーグワンの第1、2節を不戦敗としていた埼玉パナソニックワイルドナイツが、1月17日に活動を再開した。

 22日に埼玉・熊谷ラグビー場でおこなわれる、横浜キヤノンイーグルスとの第3節を見据える。

 18日の全体練習後、元主将の堀江翔太がオンラインで心境を語った。

 チームは開幕戦の4日前にあたる1月3日、新型コロナウイルス感染症の定期自主検査を実施。翌日には3名の陽性疑い判定が確認された。さらに5日には計9名が陽性となったうえ、他選手全てが濃厚接触者として認定された。活動停止とともに、東京・国立競技場での開幕戦(対クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の辞退を決めた。

 以後は11日までに計31名の陽性者が発生。16日の第2節(グリーンロケッツ東葛/熊谷)も中止となり、それまでの2試合は不戦敗扱いとなる。15日の検査で全員が陰性となったことで、17日に活動を再開させた。

 日本代表として過去3度のワールドカップに出場した36歳は、有事に「頭を切り替える」こと、本番前に「不安要素」を認識することの重要性を強調した。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——開幕戦の直前に活動停止が決まって。

「まずは(皆が病を)治すというか、身体を第一に考えるのが大事。そこで何ができるのかを僕は考えていました。リーグワンが始まって、1、2節、試合は見ていなかったです。観ると疲れそうなので。まず、動かなあかんと、コンディションが下がらないように意識しました。

 いままででこういう感じの経験と言うたら、トップリーグがいきなり中止になったことがある(2020年2月下旬)。まず、頭を切り替えて、コンディションを下げないようにする。(常に指導を受ける)佐藤(義人)トレーナーに、最小限、重りなしの状態でも、コンディションが落ちにくいメニューを組んでもらって、それをやっていました。熊谷の、10キロのお米(の袋)をもらって、使っていました。それを用いた、僕の身体に合ったトレーニングがあるので。

 意外と疲れも抜けましたし、その期間中にレベルアップしたところもあるのかなと。背中、あとは内側広筋と言って、膝の上の内側の筋肉ですね。結構、やり込んだので、いい貯金がたまったかなと思います。怪我が少なくなるのが、でかいかな。それと、次の動作に移るための瞬発(力)は、より一層、よくなったんじゃないかと思います」

——隔離期間中、他の選手に連絡を取ることは。

「そんなに多くはしてないですよ。まぁ、(松田)力也とか、谷(昌樹)とか、もともとよく面倒を見ていた後輩には『大丈夫?』と連絡を取ってはいました。ただ、いきなり36歳から連絡が来ても困ると思うので、いきなり連絡しても困らん奴を選んで!」

——そして今週、久しぶりにラグビーができた感触は。

「2週間も空いたので、皆、思い出しながらやっているという感じですね。より一層、コミュニケーションを取って確認しながらやっている状況です。週末へコンタクトだったりをしながら、(ぶつかり合う感覚などを)掴んでいけたらいいなと思っています。

 まずは、自分たちの頭が戻るように色んなことを入れ込んでいる状態です。もしかしたら、そこまで余裕がない感じかもしれない。ただ、ラグビーの試合ができるのが楽しみな選手は多いと思います」

——周りには何と声をかけているか。

「僕は何やかんや言うて頭をパンクさせるのもかわいそうやし、まず自分からやっていこうと。率先して動ける人間だと思うので、プレーをしながら、声を出していこうかなと。

 ミスっても『思い出してね』という感じで、プレー中の声は多くしようとはしています。2週間、離れていた分、そういう部分(声の掛け合い)が少なくなってくるのかな、と。『離れているから、(意識などの面で)こうしたほうが、ああしたほうが』とはあまり意識せず、プレーのなかでの『こうした方が良い』という、(互いの動きを伝え合うなどの)プレー中の声を意識して出そうとはしています」

——リーグワン優勝への自信は。

「自信はありますけど、不安も半分ぐらいあって。やってみなわからない。うちは代表選手が多い分、チームになり切れるかというところでは、開幕をやってみて『どんな感じか』と、試合を重ねながら成長するものだと思っていて。特に代表選手が入った時に(チームのラグビーにフィットするように)頭を切り替えるのが凄く難しくて。

 ただ、2週間の隔離、きょうの練習で、頭は切り替わったと思います。何となく不安要素もありますけど、自信のほうがちょっと増えてきたかなと。(よくなる)兆しが見えてきたというか…。全員が(等しく)間をあけた分、頭がリフレッシュした。(連係の確認でも)何となく、ちぐはぐしたところがなかったです。

 僕も含め、みんな、飛んでる(忘れている)部分があったんです。ただ、何年間かかけてやってきたことって、2週間ぐらい何もせんと入っても――最初はちょっと躓きますけど――すぐに『あぁ、それそれ』と入って(思い出して)来るんですよね。いいチームになりつつはあるかな、と思いますね。

 実際、試合をしてみな、わからないですけどね。試合をしていくなかで色々とコミュニケーションを取っていきながらやっていきたいです。多少、不安というものを抱えながら試合をした方が良いと、僕は思っている。そういう要素を踏まえながら、1歩、1歩、進んでいきたいです」

 前身のトップリーグでは、最終年度を含め5度の優勝に輝いていたワイルドナイツ。悲運を乗り越え、ようやく新リーグ初陣を迎える。

 チームを率いるロビー・ディーンズ監督は、「今季のテーマは『目の前にある機会を最大限に活かす』『エンジョイ』です。毎週、毎週、目の前の試合を戦う大切さが身に染みています」と話す。

 堀江はファンに向け、「観に来てくれる人が楽しめるようなラグビーはしたいです。多分、元気な選手が試合に出ると思うので、是非、楽しんで帰って欲しいです」とも述べる。「自信」を落ち着きに、「不安」を緊張感に変えるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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