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フランスでも動じない。松島幸太朗、代表合流への思い語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
日本代表のエースはフランスでも活躍(写真:REX/アフロ)

 ラグビー日本代表の松島幸太朗が6月14日、オンライン取材に応じた。今季加入したフランス・クレルモンで過ごした同国トップ14でのシーズンを振り返り、今後の代表活動へ加わるタイミングなどについて語った。

 クレルモンは現地時間12日、ボルドーとのプレーオフ準々決勝で敗退。日本代表は26日のブリティッシュ&アイリッシュライオンズ戦などに向けまもなく渡英予定で、松島の合流も期待されている。

 会見では、海外でプレーする際の精神的な負荷について言及。意外な回答を口にした。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——どんなシーズンだったか。

「年間を通して、たくさん試合に出たので、その分たくさん経験できましたし、フランス代表が各チームに散らばっているので、そうした相手とたくさん試合をしていますし、他の元代表もたくさんいる。個人的には凄くいい経験ができたかなと思います。

こっち(フランス)にいるとスター選手が身近にいて、試合をする回数が多くなるので、そうした意味で免疫がついた。フィジー人、サモア人もいますし、そうした意味では貴重な体験だったのではないかなと思います。

生活面ではあまり外に出られなかったので、あまり影響はしていないですけど、チームメイトとはすぐに仲良くなりましたし、その意味では充実はしていました」

——トッププレーヤーと戦い続けた「経験」とはどんなもので、どう活きそうか。

「何をしてくるかわからないチームが、トゥールーズだったんですが、そうしたチームに(対して)どうアタックされるかを予想しないといけない。そうした対応力というところで、良くなってきたのかな、と思います。

圧倒的に違うなと思ったのは、フィジカルの部分ですかね。イングランドの全チームとやったわけではないので簡単には言えないですけど、他のリーグのチームと数試合やった感覚では、トップ14の方がフィジカルで強い印象があった」

——海外でプレーし続けることで、新たな心理的なプレッシャーはあったか。

「プレッシャーは…あんまり、なかったですけど、やっぱり、途中、シーズン半ばの1、2月はモチベーション的にしんどかったのはあります。長い、というのもありますし、ずっと高いレベルのラグビーがしたい思いがあるので、そこで『失敗したくない』というところ(気持ち)が出て、堅く行き過ぎた…といったことがあった。シーズン中のメンタルの使い方とかは、終盤は、よくなってきたかなと思います」

——戦前に準備してきた対策ではカバーしきれない事態にも「対応」できる力がついたと。

「どの場所でスクラム、ラインアウトがおこなわれるかにも関係しますけど、両ウイングの立ち位置だったり(が変化する)。結構、デュポンが変則的な動きをするので、やっていて楽しいですけど、対応という意味では苦労しました。まぁ、うまく対応できたのかなと」

 そう。同じ日本代表の姫野和樹もあるとしていた、海外でプレーする際の心理的な負荷が、松島には「あんまり、なかった」とのこと。ただ、常に高いレベルでプレーしたいという心理があったため、大胆さを損なうタイミングがあったようだ。

——長丁場のシーズンで思ったこと。

「シーズン、1年間通して、チームとして安定させるのって大変だなというところが凄く勉強になって。例えば最初のほうに下位にいて、プレーオフに行けるか行けないかという風になったチームもあった。順位の変化、下位チームが1位のチームに勝つことが全然、あるトーナメントだったので、観ている人は楽しいと思うんですけど、やっている方は気持ち的なアップダウンがあるかな、とは思います」

——自身の成長点は。

「プレーで成長したのはキックですかね。タッチキックを任されたり、そうした部分でもどうキックしたらいいか、キックするときに考えたりしながら、計画性を持ってキックするというところがよくなってきたのかなと思います」

——キック。タッチキックを任されたわけは。

「練習が終わった後も(個人で)練習を(した)。(変わったのは)キックに対する考え方。前まで特に考えなかったところ、『ここだったらこういうキックを…』と考えるようになってきた。選択肢がより増えてきた感じがします。

(任されたわけは)9、10番が左利きなので、左側にタッチキックを蹴る時はやってくれと言われる。カウンターの時のキックが結構、伸びるようになってきたので、そういうところが見られていたのかなと」

——持ち前のランについて。

「ランの部分は通用した時はありましたけど、簡単には抜けなかった。ラインブレイクの回数を来季はどんどん増やしていきたいとは思います。

 ミスマッチを見つけるだとか、フェーズ中に何のサインが出るかの速い判断、スペースをすぐに見極める、もっと早く判断するというところです。

 事前にコミュニケーションを取ることが当たり前のようになったと思うので、相手のアタックを予測したりとか、そういったところもよくなってきたかと」

——体重、筋量について。

「最大6~7キロくらい増えました。終盤くらいは身体もきつく、ウェイトもあまりしなかったので2~3キロ落ちて、結局、85キロくらいはキープしていましたね。そんなに(身体を)大きくするというより、ここ(フランス)のフィジカルに耐えられるようにした結果、身体が大きくなってきた。最大の目的は、耐えられる身体を作る、ということです」

——日本はトップリーグが新リーグに移行されます。フランスのラグビー事情で参考になる点は。

「どのトップ14のチームも、地域とローカルの人たちとの絆があって、やっぱり、チームに対する誇りが強くて、応援に対する熱量が凄く違うという感じもします。例えば、ワールドカップの日本代表に対してファンの人たちが熱くなったわけですけど、(フランスでは)そうした感じが毎試合あるという感じ。(社会情勢の影響で)僕の場合は最初の数試合と最後の準々決勝しか体感していないですけど、その数試合だけでも(感じた)」

——来季は。

「優勝を目指す。監督も変わるのでどういったラグビーをするのかも楽しみです。できるだけ多くの試合に出たい。来季も泥臭くやっていきたい」

——代表戦へ。

「新しいチームになっているので、連係の部分でどういった化学反応が起きるのかが楽しみ。皆と久しぶりに会う部分も。相手、ライオンズに関してはスーパースターばっかりいるので、そのことも楽しみです。

 サンウルブズとの試合を観た限りはそんなに戦術は変わっていない印象。多少、変わっているとは思うんですが、スムーズに行けるんじゃないかなと自分のなかでは思います」

——希望ポジションは。

「ずっとフルバックでやっていたので、フルバックで出た方がプレーはやりやすい。そっちのほうがいいかな、と思います」

——12日の強化試合は。

「ライブでなかったですが、後からフルで観ました。結構、プレッシャーがかかっているというのもありましたし、久しぶりの試合で当然ミスは予想できたと思うので、そこは別に気にしなくていいと思うんですけど、新しいプレーヤーのいいプレーがあったので、そこはいい材料なんじゃないかという思いです」

——一緒にプレーするのが楽しみな代表選手。

「アタックで言うんなら(シオサイア・)フィフィタがすごくいい突破を見せていたので、これから試合に出続ければそういった場面が多くなると思う。ラインブレイクできる選手はチームに必要なので、そういった選手をうまくサポートしていって、成長させていくのが大事だと思います」

——代表合流のタイミングについて。

「トップ14のプレーオフで他のチームで3名以上コロナが出た場合、自分たちが出ることになっている。そのために全部のチームのPCR検査が終わる木曜までまっていなきゃいけない。(代表へは)その前に行くか、その後に行くかは不明です」

——クレルモンが次戦に出場する場合も、代表に合流する予定か。

「いまはそういうところで話し合っていると思います」

——合流後は。

「フランスで経験できたことが自分には大きくかかわっていくと思うので、試合中で、どういう状況になるかはわからないですけど、負けている状況でも勝っている状況でもどう対応するかを、しっかり表現したいと思っています」

——試合へトライを獲るという意気込みは。

「バックスリーとしてトライは取っていきたいと思っているので、内側の選手にボールを要求する。どこが空いているかの情報を送って、スムーズに外にボールが流れるようにしていきたいです」

 世紀の大一番においても、淡々と職務を全うしたい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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