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無観客開催のトップリーグ準決勝で運営トラブル。改善に期待。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
激しい衝突が重なる好試合だった(写真:つのだよしお/アフロ)

 大阪・東大阪市花園ラグビー場の記者席が騒然としたのは、試合後のことだ。両軍の会見が、主催者側の準備不良ととられかねぬ理由で短縮したからである。その結果、当日締め切りのメディアに掲載される出場選手の肉声は想定よりも限られた。

顛末は

 5月16日の国内ラグビートップリーグの準決勝第2試合では、サントリーがクボタに26―9で勝利。前日の同会場であった同第1試合に倣い、試合後はオンラインの記者会見が開かれる運びとなった。

 今季のオンライン会見では両軍の監督(およびヘッドコーチ)、主将(およびゲーム主将など)に加え各1~2名ずつの選手が敗戦チームから順に参加していた。試合会場での対面取材は、一貫して禁じられている。

 今度の準決勝では、監督(およびヘッドコーチ)、主将(およびゲーム主将など)が敗戦チームから順に登壇の後、両軍の選手4名の会見が同時進行で開催されることになっていた。トップリーグ側は「より多くの選手を取材していただくため」と説明。2種類のURLを設定していた。

 この日は本来であれば、サントリーの擁するニュージーランド代表のボーデン・バレットが前半20分に蹴ったドロップゴールの意図、クボタが誇る南アフリカ代表のマルコム・マークスの去就など、SNS上のファンが期待するような質問を即時に聞くチャンスがあった。

 ところが実際は、会見直前になってトップリーグ側の用意した回線にトラブルが発生。会見の開始が大幅に遅れ、両軍の指揮官と主将の会見後は「時間がない」という理由でサントリーの4選手が同時に入室。質疑応答なしで退席した。同時進行するはずだったクボタの会見はおこなわれず、オンライン会議ツールのチャット欄にはメディアからの抗議が重なった。

 サントリーもクボタも普段は関東地区で活動する。長距離の移動を伴う試合の場合、帰りの新幹線の時間はあらかじめ決まっていることが通例だ。つまりーーここからが重要だがーー今回は、会見に出る時間のなかったチームや選手に過失はない。

 放送関係者によると、無線のWi-fiで複数の回線をつなぐと混線のリスクが高まる。「昨日(第1試合)も今朝も(回線は)問題なかったのですが…」と困り顔の関係者は急遽、グラウンドレベルの執務エリアからメインスタンド上段の記者席へ駆け上った。「出席予定選手への質問をメールで受け付け、返答をもらいます」と、次善策を提案してくれた。本稿筆者はまもなく、質問状を送付した。

 しかしそれから約1時間が経っても、少なくとも片方のクラブの担当者へはその連絡が伝わっていなかった。そこから約1時間半後、トップリーグ側から「本日中の回答が難しいかもしれない」という趣旨のメールが返信された。

 今季のトップリーグは開幕が予定より約1か月も延期され、短くなったシーズンにおいてもチケットの販売数は大幅に絞られた。感染症の拡大を防ぐ社会的責任を全うすることで、試合を観たくても観られないファンの数が増えたわけだ。

 まして今度の準決勝は無観客開催だ。背景には大阪府の「イベント無観客」との要請がにじむが、折からの緊急事態宣言が延期されると決まった5月中旬以降も会場の変更はなかった。各選手が首尾よくSNSを活用するなかでも、試合の報道価値は高まっていた。

目指すは日本最高峰

 トップリーグ側はこれまでも、各会場でこの手の回線エラーを頻発させていた。

 さらに各地でプレーオフ2回戦のあった4月24日には、五郎丸歩が今季限りで引退するヤマハと後に初の4強入りと勢いに乗るクボタとの試合を最大収容人数7000人弱(現況下ではその半分)という東京・江戸川陸上競技場で開催していた。

 開幕延期前にレギュラーシーズンの試合をするために予約していたという会場だったが、当日、トップリーグ側が記者席を18席しか用意できないために、複数の取材申請者へオンライン取材や他会場取材への切り替えを提案するという事態が生じていた。

 本稿筆者は、世界的な名選手への取材機会に深く感謝する一方、現状の放置はファン離れの遠因となりうると判断。今回の執筆に至った。転売の横行を招くなど観戦希望者の願いが叶いづらいチケットの販売方法も、問題の本質は今回の件とよく似ているのではないか。

 2022年1月からは現在準備中とされる新リーグが始まり、各クラブの収益化を前提により良質な運営が期待される。

 そして、最後のトップリーグの最後の決勝戦は5月23日、入場者数は5000人までと条件のついた東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれる。サービス業としての日本最高峰を目指す戦いは、きっともう始まっているはずだ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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