Yahoo!ニュース

エディー・ジョーンズが控えを指導のサントリー。中村亮土主将は決戦「楽しみ」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
バレット(左)とゲームコントロール。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 日本最高峰ラグビートップリーグのプレーオフ準決勝は5月15日からの2日間、大阪・東大阪市花園ラグビー場であり、史上最多となる6度目の優勝を狙うサントリーは16日にクボタと対戦。13日、インサイドセンターで主将の中村亮土がオンライン取材で意気込みを明かした。

 話題はクボタ戦の展望に加え今季好調の秘訣、最近クラブへ合流した大物指導者野エピソードなど多岐にわたった。

 中村は2019年、ワールドカップ日本大会の日本代表として全5試合に先発。インサイドセンターとして強靭さと防御力を長所とする。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――レギュラーシーズンで接戦を演じたクボタとの再戦です。

「前回のクボタ戦は厳しい戦いになりましたけど、今回は違った面白い戦いが見せられると思っています。お互いプレースタイルも似ているし、やってくることもわかっている。そのなかでの遂行力、勝負の分かれ目の判断が、大事になってくる。リーダーとしてその時々の判断は大事にしたいです。いちプレーヤーとしても、ここが勝負だと思っている。ベストパフォーマンスを出せる準備をしたいです。

(準決勝では)ここ2~3年勝てなかった神戸製鋼とやりたい気持ちはありましたが、試合を観ているとクボタの強さ、チームのまとまりは感じた、もう1回、ちゃんと準備して臨まないと厳しい結果になる。気を引き締めて準備に取り掛かっている段階です」

――今季は攻撃中、個々の判断が際立つが。

「積み重ねの部分で。これまでと何かを変えたということはないですが、ずっと僕が主将として言い続けたことは、『自分たちでサントリーのラグビーを作っていこう』と。コーチから与えられるだけではなく、細かい判断、ディテールのところは自分たちで作っていこうという話をしていて。そういうのがちょっとずつ表れているのかもしれないです。一概にそれだけ(が理由)とは言わないです。個々のスキルもレベルアップできた。それぞれの積み重ねがある」

――就任2年目のミルトン・ヘイグ監督は自主性を重んじる。前任の沢木敬介前監督、2010年から2連覇を達成したエディー・ジョーンズ元ゼネラルマネージャー兼監督(現イングランド代表ヘッドコーチ兼サントリー・ディレクター・オブ・ラグビー)らとはやや色が異なります。

「去年の途中で終わったシーズンの時は、正直、最初、戸惑いがあって。サントリーの選手は用意してくれたものに対しては全力で取り組みますけど、それ以外のことには主体性を持ってできなかった部分が見えた。だから今季、『自分たちで作っていこう』と意識してやっていた。それがいまになって表れてきたのかなと。スタッフの『選手たちにやって欲しい』という思いと、選手たちの『もっと自分たちでやりたい』というのが合致したのかなと」

――ヘイグ監督は、オーストラリア代表センターのサム・ケレビ選手の出場は難しいと話していました。当日、中村選手は若手選手とセンターのコンビを組みそうです。クボタの立川理道主将ら強力センター陣との対決へ。

「まぁあの、ハルさん(立川)がいるんで、負けられないですよね。はい。間違いなく、僕がずっと見てきたセンターなので、その選手が目の前にいるとなると、意識はします。

僕はいま、(早稲田大学卒2年目の中野)将伍と組むことが多いですけど、彼には僕に持っていないものがあるので、それを最大限に活かしてあげられればと思います。将伍がいるおかげで僕が活きてくるのかなという感じはあります」

――ニュージーランド代表スタンドオフ、ボーデン・バレット選手の存在感について。

「彼がストレッチするのを見ると身体が硬くて、これでも世界のナンバーワンプレーヤーになれるんだなと思いました。…すみません、冗談です! 

 基本的にキックの練習は時間をかけてやっています。僕らがグラウンドを上がって、シャワーを浴びても、まだキックを蹴っているという状態が毎日のように続いていて。キックは人より時間をかけている。あとはオンとオフの使い分けが非常にうまい。クラブハウスに来たらラグビーに集中していますが、変に長居しないというか。ダラダラいないですぐに帰って家族とどこかへ行ったりしていますね。切り替えがうまいなと思います」

――プレーオフトーナメント2回戦を前後し、ジョーンズさんがチームに一時合流しました。

「スタッフに緊張感がありました。…それまで(緊張感が)なかったということではないですが、より(引き締まった)。そう、(自身が)感じただけです! (練習の指導は)全体的にはそれまでの(既存のコーチ陣が統括する)流れと同じ。ただセッションのなかで、(いくつかあるうちの)そのブロックだけをエディーさんが仕切る、ということはありました。また試合前はノンメンバーの若手がエディーさんと一緒に汗を流すということはありましたけど。ぜぇぜぇ言いながら、楽しそうな顔で、ロッカーへ帰ってきました」

 名士が控えチームの練習を指導。何とも贅沢な時間だろう。話題は改めて準決勝に転じた。

――準決勝は無観客試合となります。

「僕、チームのメンバーにとっても初めてなので、どういう雰囲気になるか想像がついていない状態です。しょうがないことなんですが、自分たちにフォーカスをしながらやるだけかなという感じです」

――準々決勝が中止となったため、試合間隔が空いています。

「先週ぐらいまでは試合勘がどうのとか、リカバリーはうちの方が…とか、少しは考えていましたけど、今週に入ってからそんなことを考える暇がなく、そんなことどうでもいいというくらいで。選手のなかでもそういう話が一切ない。自分たちの準備にフォーカスを当てています。それがいいのかなと。現段階ではあまり気になっていない感じです」

――頂上決戦。ワールドカップでの経験が活きているところはあるか。

「どうなんでしょうかね。僕が次の試合でパフォーマンスがよかったら活きていると思ってください。…まぁ、今週に入って緊張感のある、負ける可能性も高い週に入ってきたので、この緊張感をチーム全員で楽しんで準備しようとは話していました。勝ってもこのメンバーでできるのはあと2週間しかない。1日、1日、大事に過ごしてラグビーがしたい」

――心境は。

「めちゃくちゃ楽しみです。もっと準備がしたいので、早く(試合が)したいとまでは言わないですが、この準備期間が楽しい。チームとしてもどんどん仕上がっている状態で、毎日、毎日、いい準備をしている段階なので。すごく楽しみです」

 充実した表情だった。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事