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日本代表候補ヴィンピー・ファンデルヴァルト、NTTドコモ好調の背景を語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 王子様キャラ。

 2017年度の国内ラグビートップリーグによるプロモーションビデオでは、そう紹介された。

(2分21秒頃から)

 長い金髪がトレードマークのヴィンピー・ファンデルヴァルトは2019年、ラグビーワールドカップ日本大会で史上初の8強入りを果たした日本代表の一員だ。約1年半ぶりに発表された2021年の代表候補にも名を連ねる。

 南アフリカ出身で、身長188センチ、体重112キロの32歳。ポジションは空中戦の軸となるロックに、肉弾戦で多く顔を出すフランカーだ。人垣へ何度も突っ込み、わずかずつゲインラインを前方へ押し込む。

「僕には、常に100パーセントを出し切りたいという思いがあって。少しでも後悔を残したくない。やり切るという思いで常にやっています」

 現在は国内トップリーグに参戦中。NTTドコモの一員として、クラブ史上初の8強入りに喜ぶ。5月8日、熊本・えがお健康スタジアムで強豪のトヨタ自動車とぶつかる。

「個人的にはNTTドコモにいままでいたなかで、一番いいパフォーマンスを発揮して、全試合に出たい。ノックアウトステージでもいい位置からスタートして、できることなら最後まで残れるように戦いたいです」

 本人がオンライン取材に応じたのは3月中旬。レギュラーシーズンで加盟するホワイトカンファレンス(※)において、初の開幕3連勝を挙げるなど好調を維持していた。好成績の背景や代表活動の思いを語る。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――ファンデルヴァルト選手が2013年に加わったNTTドコモは今季、好調を維持しています。開幕前の準備について教えてください。ヨハン・アッカーマンヘッドコーチの存在、大きいのではないでしょうか。

「コーチングスタッフも代わったことで、1人ひとりがどの選手をも一番いい状態でやれるよう、(力を)引き出してくれています。またチームの文化が大きく変わりました。何より選手たちが一番ハッピーな状態で練習ができているのがいい。ヨハンは来て間もない頃から、『お互いのために全力で助け合おう、ポジティブでいよう』と常々、言っていて、それが浸透している。最初の時期におこなった滋賀キャンプでやったことのないハードワークをした。そこではチームでのアクティビティも色々とありました。皆のつながりが強固になったと感じました」

――「ハードワーク」。中身は。

「合宿では特にコンタクトとフィットネスを両方やる感じが多い。フォワードは、モールをやって、ブレイクアウトをやって、走って戻る。そしてレスリング…みたいに。それが試合に出ています」

――公式戦が始まれば。

「TJ・ペレナラ、マカゾレ・マピンピというワールドカップ優勝経験のある選手がいる。その経験をチームに持ち込んでくれているのが大きい」

――「経験」とは。

「やっぱり、勝ち方をわかっている。勝つために細かいことをやらなきゃいけない。それは、お互いのために働く、ということです。それぞれが自分のベストを尽くす。試合に出ない選手たちが出る選手たちのために全力で練習をする」

――いまのNTTドコモでは、試合のメンバーから外れた外国人選手がタフな練習でも全力を出し切る。そう聞きました。

「チーム内での競争率が高まっていて、常に試合に出ている人たちも自分のポジションを失ってしまうと思うし、出られていない選手は出られるように努力しています」

――マピンピ選手はワールドカップ日本大会の準々決勝で対戦して以来の再会ですね。当時について話すことはありますか。

「僕のなかでは負けた記憶なので、あまり話したくなくて。だから、話していません」

――日本代表が素晴らしい結果を残したのは確かですが、やはり敗れた悔しさが残るのですね。

「そうですね。(決勝トーナメントへ進んだことは)嬉しかったですけど、負けは負け。素直に喜びきれないところがあります。ワールドカップの時の日本代表は素晴らしいチームだったので、もっとできるだけ長くラグビーがしたかった。振り返ると、あの大会で日本代表に勝ったのは南アフリカ代表だけ。そう考えると、南アフリカ代表は強いとも思いますね」

――2021年の代表活動への思いは。

「できれば入りたいです。そのためにはいいパフォーマンスをしなくてはならないのは当然ですが。現在、体調もよいと感じる。去年はラグビーをする機会が少なく、長く休めて身体がフレッシュな状態なのです。そのためフィットネス(持久力)的にも調子がいい」

――2020年も水面下で代表候補が編まれ、スタッフからトレーニングメニューを渡されていたと聞きます。

「大分、きつかったですね。僕が渡されたのはめちゃくちゃハードなメニューで、それを全てやるのに1日に6~8時間もかかるほどでした」

――そんな長時間…。どんなことをするのですか。

「…すみません、ちょっと、話を盛りました!」

 社会情勢の変化で巣篭り生活があったためか、現在は「体調もよい」と実感しているという。もともと苦しい時でも力を発揮するタフな選手が、万全のコンディションを維持しているのだ。好プレーが続くのは必然かもしれなかった。

※ 4月29日修正済み

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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