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キヤノンの世界一戦士ジェシー・クリエル、2023年は町田からフランスへ?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:アフロスポーツ)

 試合後、「18~19針」は縫った。2021年3月14日、国内トップリーグの第4節でのことだ。

 ジェシー・クリエルはキヤノンのアウトサイドセンターとして強烈な突破を繰り出し、ヤマハを40―32で下している。もっとも試合中に額を大きく切り、戦後は自身のツイッターアカウントに縫い跡を大きく映している。

 当の本人が単独取材に応じたのはその数日後。東京都・町田市内の本拠地でのことだ。ワールドカップ日本大会で世界一となった南アフリカ代表の一員でもあるクリエルは、生粋のチームマンで知られる。

 この日もチームの通訳担当者が取材現場に到達するまで、日本語で現況を語った。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――日本語、お上手ですね。

「(日本語で)今週は3回、日本語のレッスン。日本語の先生は、安藤(東京外国語センターの安藤成樹さん)さんです。オンラインで。この状況は難しいね。コロナの前、日本語の先生はウチに来ていました。日本語の先生はめちゃめちゃいい人。いい友達」

――あなたの口から「この状況」という単語が出てくるとは…。現在のチームについて伺います。今季就任の沢木敬介監督について。

「(以後、英語で)非常にエキサイティングな試合を展開しています。やっているラグビー、凄く大好きです。彼にはすばらしいチーム、コーチ陣と仕事をされた経験がおありです(2015年まで日本代表のコーチングコーディネーターとして、現イングランド代表指揮官のエディー・ジョーンズヘッドコーチと働く)。私も選手として学ぶことが多いです。

 チームメイトからも学ぶことが多い。(代表経験の豊富な)田村優主将、田中史朗は色んな経験や知識を持っている。自分のプレーへもフィードバックをくれて、ボールを回すにあたってそのガイダンスで導いてくれる。ラグビーの知識を私個人としても広げられている。南アフリカと日本では、全く違う種類のラグビーがある。私はそれを学ぶことで、チームに貢献できる」

――いつまで日本でプレーしたいか。

「私はどちらかと言うと、ひとつのチームに長く在籍する選手です。ここではスペシャルなものを作れている。できるだけチームに貢献し、どれだけ時間がかかるかはわかりませんがこのチームでトップリーグ優勝を果たしたい。日本にも長く住みたい」

――日本のよさは。

「フィールド外でも色々と面倒を見てくれる。国も安全です。鍵をかけていない状態でも問題ないし、知らない土地を訪ねた時に少し外でジョギングするのも大丈夫!」

――南アフリカと比べ治安が良いと感じるのですね。では、2023年のワールドカップフランス大会への思いは。

「日本であったワールドカップはキャリアにおけるハイライト。これまで2回W杯へ出場していて、3回目も当然やりたい。ただラグビーをしていると、1週間というものが長い。先を見過ぎて何かをするのはいけない。今週なら今週の試合への準備にフォーカスをし、その積み重ねがワールドカップに繋がればいい。まず、自分で目の前のタスクに集中して、いいプレーをして、最終的にはワールドカップに出たい。そうしてチーム、ファンの皆さんに誇りに思われるプレーがしたいです」

――これらの話を踏まえると、2023年は町田の本拠地からフランスへ旅立つのが理想のようです。

「計画が完璧になれば、そうなりますね」

 心の奥底ではナショナルチーム入りへの炎を燃やすクリエルだが、「今週なら今週の試合へ準備にフォーカス」との態度も貫く。チームはまもなく、トップリーグのプレーオフトーナメントに参加する。25日、東京・江戸川陸上競技場での2回戦で(レギュラーシーズンの成績から1回戦は免除)、NTTコムとぶつかる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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