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最速デビューが悔しそう。天理大学→クボタの藤原忍、「僕の力不足」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
同僚のピーター・ラピース・ラブスカフニ(左)とオンライン取材に応じた。

 新年度だ。2月に開幕した国内ラグビートップでは、4月3、4日の第6節から2021年度入部の選手が試合に出られる。

 シーズン終盤から既存のレギュラー組へ割って入るのは、そのクラブが強豪であるほど簡単ではなさそう。それでも開幕5連勝と勢いに乗るクボタにあって、2021年度組の1人が最速のデビューを果たした。

 3日、東京・秩父宮ラグビー場でのサントリー戦で途中出場したのは藤原忍。2020年度は天理大学で、同大史上初の大学日本一に輝いたスクラムハーフだ。

 身長171センチ、体重76キロと小柄も、素早いテンポでのパスさばき、鋭いサイドアタック、防御への意欲でかねて注目されていた。

 くしくもプレーが解禁される第6節以降はサントリー、トヨタ自動車と順に対戦。両軍とも優勝候補に挙げられるうえ、スクラムハーフにはそれぞれ流大、茂野海人と現日本代表を擁していた。サントリーに至っては、控えのスクラムハーフに昨年代表候補に入ったと見られる齋藤直人もいる。藤原はこの2試合で結果を残し、今春以降の代表入りを目指していた。

 ファン待望のデビュー戦。しかし、試合後の本人は悔しさを押し殺すような談話に終始した。出番を得たのは26―33とリードされていた後半40分からで、「自信を持って任されるようなスクラムハーフになりたい」。マスクの奥で唇を噛んでいたような。

 

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「僕はリザーブで後半の数分くらい、出させてもらったんですけど、それまでクロッツ(ライアン・クロッティ、ニュージーランド代表48キャップのセンターでこの日はリザーブスタート)とスターティングメンバーが試合をしている間、リザーブがどんな仕事をせなあかんのか』を話し合いました。惜しい結果で負けてしまったんですけど、こういう接戦の時、フラン(・ルディケ)ヘッドコーチに自信を持って任されるようなスクラムハーフになりたい、と、思いました」

――出場するまで、何を思っていたか。

「試合に出るまではどういう展開に(なっているかを見た)。接戦になっていたので、たぶんピッチの選手には焦りもあるやろうし、そこを落ち着かせるためにはコミュニケーションを取ろう…と、考えながら過ごしていました」

――早く出たいな、とは思いませんでしたか。

「出たかった気持ちはあるんですが、そこは僕の力不足で、まだ…何て言うんですかね…まだ、信頼を得れてないんで、そこは日頃の練習からしっかりやっていきたいです」

――クボタで先発した井上大介選手、サントリーの流大選手、齋藤直人選手といったスクラムハーフのプレーについて。

「えー…やっぱり、皆とコミュニケーションを取るあれは3人ともあるし、周りを見て判断して動かしたり、時間配分だったりは、全然、違うなと思いました」

 チームに合流した3月時点では、代表入りを争う若手スクラムハーフの話題に触れ「(自身も)負けているとは思わない」。強気の姿勢も魅力だ。資質が高く買われてのリザーブ入り。早期の投入や先発機会の獲得には、本人の言葉通りクラブ内での「信頼」が不可欠となるか。いわば積み重ねの問われる領域だ。

 もっとも、試合中にクロッティのような名手から学べるのは貴重な機会と言えそう。早稲田大学から2020年度に入社の岸岡智樹も、ベンチでのクロッティとの情報交換をプレーに役立てているそうだ。

 この日は別会場で、藤原の天理大学の同級生であるシオサイア・フィフィタが、下部トップチャレンジのゲームに近鉄のアウトサイドセンターとして先発。新人たちのバトルは始まったばかりだ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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