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京都産業大学の伊藤鐘史監督、1年で退任の思いを語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は2015年。左から2番目が現役時代の伊藤監督(写真:ロイター/アフロ)

 元ラグビー日本代表で京都産業大学の伊藤鐘史監督がわずか1シーズンで辞任すると、3月6日までにわかった。

 当該の報道を受け、本人が取材に応じた。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――今回のことで、対外的に伝えられることはありますか。

「そもそも契約の内容は毎年更新の1年契約でした。今月末の任期終了をもって辞任ということは事実。辞任理由はと問われると、いろんな思いというか、事情があるので、少し言えない部分が多いのでコメントはできないです。ただ、僕にとっては次が大事になる。今後もラグビーの指導者として生きていきたいと思っているので、チャンスをいただけるチームがあれば、そこで自分の実力を発揮したい」

 現役を引退した2018年に母校の京都産業大学でフォワードコーチとなり、かつて指揮官と主将の間柄だった大西健前監督のもと得意のラインアウトを教えた。

 大西前監督の退任を受け2020年度から監督になると、ウイルス禍で活動を制限されるなか中長期的な強化計画を立てた。伝統のスクラムやモールを重んじながら、複層的な攻撃ラインを鋭い出足で動かす「アクセルラグビー」を唱えた。

 大学選手権3回戦では慶大に14―47と敗れたが、2019年度も日大に19-24というスコアで屈し、3回戦敗退を喫している。

――報道を受け、他チームからのオファーはありますか。

「と、いうことを願っています。実は大学側には、もう少し早めに退任のニュースリリースをして欲しいとはお願いしていました。でも、どうもラグビー部のほうで、新旧交代の体制発表を一緒にして欲しいという思いがあって。もっと早くから3月の退任は決まっていたのですが、何も動けない状態がずっと続いていた。ようやく、メディアリリースでオープンになった。お声掛けをいただけると、ありがたいなと」

――それまでは、水面下で周りに進路の相談をすることも叶わなかった。プロ生活をする身としては難儀な状態です。

「そうなんですよ。本当、辛かったんですよね。不安になってくるじゃないですか。コロナ禍で人と会うこともできないし。今月末退任の今月上旬発表なので、ギリギリです。もう、ここまでずれてしまったら、4月1日からの契約を取りたいという話ではない。そんなに焦っても他のチームも事情はあるでしょうし…。興味を持っていただけるチームがあればありがたいなと思っています」

――カテゴリー、業種は問わない。仮に他の関西の大学から声がかかっても、交渉のテーブルにはつく。

「問わないです。そんなことを言っている場合でもないです。ジャンルだとかにこだわりはまったくない。お話があるなかで共感できる部分があれば、制限なく受けたいと思っています」

――現役引退後2年間のコーチ生活を経て、1年、監督を経験されました。

「3年間、学生ラグビーに関わって、すごく勉強になりました。学生とともに成長させてもらえた。自身の選手としての経験則でものを言っても、人の心には響かないと学びました。様々なスキルレベル、志の選手がいるなか、その人に合った伝え方、接し方がある。時には厳しく、時には褒めないといけない。子育てと似ていると思いました。間違いなく、コーチとして成長した実感はある。培っている実力を発揮できる場が欲しい。それがいまの気持ちです」

 選手時代から苦難を乗り越えてきた。

 リコーの社員選手から神戸製鋼のプロ選手へ転じた2009年度、当時の国内トップリーグにあった移籍規約に基づき1年間の出場停止も余儀なくされた。

 それでも31歳だった2012年春には、長らく目指してきた日本代表デビューを果たし、2015年のワールドカップイングランド大会では歴史的3勝を支えた。

 今回の辞任に関しては、全ての領域において自分に実力が足りなかったとの旨で語り、明日を見据えた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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