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キヤノン・田村優新主将、指揮官交代で感じる変化。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は昨季(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 ラグビー日本代表としてワールドカップに2大会連続で出場中の田村優が2月15日、所属するキヤノンの主将としてオンライン取材に登壇。変わりつつあるチームについて語った。国内トップリーグは20日に開幕する(キヤノンの初戦は21日)。

 一昨季12位と苦戦してきたキヤノンは今季、元日本代表コーチングコーディネーターの沢木敬介新監督を招いていた。サントリーの監督時代に2度トップリーグを制した沢木監督は、田村を主将に抜擢。改革への意欲をにじませた。

 新たな役割を得た司令塔の田村は、妥協を許さぬ沢木氏の指導に「皆のスタンダードを高く維持してくれている」と喜ぶ。一方、さらなる強化には個々の「一貫性」を高める必要があると述べた。取材会では、沢木監督も田村への期待を口にした。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――主将として意識することは。

田村

「主将だから…というよりかは、日本人、外国人に関係なく、チームでやろうとしていること、いい悪い、もっとこうして欲しい…というものは伝えます。やる気がないのとかは、怒ります」

――沢木監督がチームに与える影響は。

田村

「皆のスタンダードを高く維持してくれている。皆、『自分たちが足りてなかったんじゃないか。いままでのキヤノンでやっていたラグビーが全然よくなかったんじゃないか』というところに――姿勢のところでは特に――気付いたんじゃないかと思います。

練習の後とかに個人練習はするようになりました。ちゃんと。去年まではクラブチームみたいで、大学生の方が頑張って練習してるんじゃないかなと思うくらいの感じだった。皆、自分の仕事をしてちょっとでもチームに貢献するために、必死になって練習を頑張っていて、それが自発的というか。まだそれができている選手、できてない選手はいますが、意識的に動いている選手が増えてきたと僕は感じています」

――ここからは沢木監督も交えて。沢木監督のキヤノンでの指導ぶりは、日本代表時代、サントリー時代と違うか。

沢木

「優から答えてよ」

田村

「どうですかね。サントリーや敬介さんのいた頃の日本代表に比べたら、(キヤノンは)そこまで力のあるチームじゃないと思うので、まぁ、我慢してもらっている部分はたくさんあるかなとは思います」

 画面の奥で指揮官が笑う。主将は続ける。

「(沢木監督が)ぶち切れて練習を終えるだろうなと思う時も、僕が『こんなの、やってて意味ない』と思う時もあります。ただ、それ(戒めのための練習中断)ばかりしていても成長もなかなかない、と、我慢してもらっているのかなと。まだ、理想に近づいていない。もちろん武器はありますけど、まだ、まだ、だな、とは、僕も見ていて思います。

僕も(高い理想を)求めたいですし、僕自身も頑張りたい。変わろうとしているチーム。急激な技術的な進歩はなかなか難しいと思うんですけど、取り組む姿勢とかでよかったり、悪かったりするところを、ずっと安定させられるようにはしていきたいと思います。

例えば日本代表だったら全員の目指すものが同じで、(態度の側面で)プロの集まりですけど、キヤノンでは社員選手もいれば、プロ選手もいれば、プロ選手のなかのプロ選手…という選手と、色んな立ち位置の人がいる。そこでの意識づけというか、同じラインに持って行くことには、時間がかかると思います」

――「理想」との差はどこに感じるか。

田村

「一貫性はないです。まだ。チームとして。爆発力は凄くあると思うんですが、それを安定して力を出し続けるというところが大事かなとは思います」

――「一貫性」。身に付けるには。

田村

「こればっかりは場数を踏むしかないかなと思います。練習でも一貫性を持つという訓練も必要。そこが、一番、時間がかかるんじゃないかと僕は思っているので。そこはちょっと辛抱強く…とは思っています」

沢木

「メンタルをしっかり整える、とは、よく言いますが、それがプレーの一貫性に繋がる。まぁ、いまは(開幕前のトレーニングマッチでも)ジェットコースターみたいな試合をしてます。いい時もあれば、悪い時もある。ここに一貫性を持ってこないと、勝てるチームにはなっていかない。訓練中です」

――ここからは沢木監督のみに伺います。改めて、田村選手を主将にした理由は。

沢木

「優が一番うまいからです。ラグビーが。僕がこういうオファーをいただいた頃から考えていましたけど」

――代表で一緒に戦っていた時代といまとで、田村選手に変化はあるか。

沢木

「2015年の時から知っています。それから比べたら、優、うまくなってんな、と思いましたけどね。視野が広くなり、スキルレベルが上がっている印象です。ただ、キヤノンでプレーするとあんま活躍しねーなって。去年まではね。

他のチームでは外国人の10番(スタンドオフ)が多いじゃないですか。そういう選手と比べても、ビジョン、スキルで言えば優はトップレベルです。本人がいるからあまり誉めたくないですけど」

――1月上旬、部内で新型コロナウイルス感染症の陽性反応者が増えたため活動が一時休止。開幕も予定より約1か月遅れました。

沢木

「延期になったり、中止になったりしたので、練習をやっていたら、選手のモチベーション(の維持)は難しかったとは思います。ただ、そんなにネガティブに捉えることはしていなくて。ポジティブに考えれば、準備期間を長く持てた。僕は(就任)1年目で、大きくラグビースタイルを変えている最中なので、プラスの方に考えるようにはしています」

 12月には沢木の古巣であるサントリーとの練習試合に快勝している。つぼにはまった際の攻撃力を示した。平時はスペースを攻め込む意識と技術を涵養。目標順位はあえて設けず、試合を重ねるごとに成長を実感したいと指揮官は言う。

 6月以降には2019年以来の代表活動が予定されるが、田村は「また、そんなこと聞くんですか。わからないです」とし、こう決意を述べる。

「(代表選手を)選ぶのは僕じゃないですし、先のことは何も考えてないです。まずは今週の試合にフォーカスしたいとは思っています」

 21日、東京・町田ギオンスタジアムでNTTドコモとぶつかる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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