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天理大学、初の日本一の声。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真提供は日本ラグビーフットボール協会

 天理大学ラグビー部が1月11日、大学選手権で初優勝した。

 東京・国立競技場で2連覇を目指す早大を55―28と圧倒。接点で圧力をかけ続け、多彩な攻撃で加点した。日本代表候補と見られるシオサイア・フィフィタもラン、パス、キックと躍動した。

 試合後、小松節夫監督と松岡大和主将が会見した。

小松

「今日はありがとうございました。…まぁ、いままで何回か決勝で負けていまして、きょうも決勝ということで。いままでのうちのチームは東京での大きな試合でなかなか実力を発揮できなくて悔しい思いをしてきました。きょうは実力を出し切ろう、と送り出しました。強い早稲田さんのアタックで崩れかけたところで、ディフェンスで走って、何回もタックルして、起き上がって…ということが勝因に繋がった。学生たちはハードワークし、実力を発揮してくれた。素直に嬉しく思います」

松岡

「きょうの試合は早稲田大学さんのアタックへ自分たちがディフェンスで前に出てプレッシャーをかけようと。準備したことが出せた。23人が80分間通して身体を張り続けた。ディフェンスで全員が我慢した結果の勝利だと思います」

――今年のチームの強さは。

小松

「過去に決勝に出たチームと比べると経験値が高かった。彼ら(4年生)は1年生の頃から3回悔しい思いをしてきた。決勝に懸ける思いが過去2回に比べると強かった」

――5連覇中の関西学生Aリーグでは大差の試合が多かった。そんななか、強力と見られた関東勢とのゲームで高い質のプレーができた理由は。

小松

「まず、今年は試合経験がなかったので序盤はかなりバタバタして苦しみました。関西学院との試合あたりからうちの悪い部分が出て、ディフェンスの修正を。同志社大学との試合後もディフェンスの修正を。それに伴い、アタックの精度も上がった。

流通経済大学さん(流経大)の試合前の準備の段階で、『ディフェンスでは前に出よう』と若干、システムを変えました。逆に流経大さんのアタックを分析すると、フラットに走り込むアタックをしていました。こちらのディフェンスを修正しながら、アタックでも流経大さんのいいところを採り入れ、もともと天理がやっていたようにフラットに走り込もうと。そのあたりから試合をするたびに精度が高まっていった印象です」

――大学4年時の大学選手権に早稲田大学に敗れています。

小松

「一度、花園での大学選手権で早稲田大学さんに勝った。早稲田大学さんに勝つということは、そこで経験しています。ただ、大学選手権決勝で早稲田大学さんに…。うちは過去2回決勝で敗れていて3度目(の挑戦)ということでしたが、個人的には4度目という思いもありました」

――勝って泣くことはないと言っていた。悲願達成して。

小松

「嬉しさが勝ちまして、勝って泣くということはなかったです。学生たちの笑顔や涙を見て、幸せな気分です」

――過去は「出し切れなかった」。今日、序盤から勢いに乗った要因は。

小松

「いままでの経験です。昨日のミーティングでも学生たちが話しました。『自分たちには何があっても大丈夫。色んなことがある。ミスもある。トライも獲られる。でも、そこで過去と同じように負けるか、そうではないか…』。ここで、学生は修正力、崩れない強さを持っていた」

松岡

「明治戦から言っていたんです。『1つや2つ、ミスもあるし、トライも獲られる。引きずらず、切り替えてやっていこう。ミスに対しては15人全員がカバーしていこう』と。早稲田にも明治にも、全員が勝つマインドになって臨めた。それが試合の入りにつながったと思います」

――前半最後のスクラムの際、笑顔だった。

松岡

「レフリーともコミュニケーションを取っていて、次にどうしていこうかという修正ができていた。前3人がいいスクラムを組み、後ろがしっかり押す。ディテールを明確にして、押す。そこで皆を鼓舞してたというか、テンションが高かった。それで乗りに乗って、押せたと思います」

――春から夏にかけ関東勢と練習試合ができなかったが、上位校との接点でどう対抗しようとしたか。

小松

「具体的な対策はしていないです。まず流経大さん、明治さん、早稲田さんと選手権に入って(関東勢が)3つ。予備知識もなかったので、やってみないとわからないというマインドで戦いました。試合中のブレイクダウンを見て、何かあったら修正する…と。ゲームをしながら、何があっても対応するというマインドで戦いました。結果的には接点で前に上がることで強いブレイクダウンを発揮できますから、前に出て接点を上げる。そこで負けないように。それが、うまくいっていた。(攻撃中の2人目の援護を含め)接点へは走り込むように」

――フィフィタ選手のサンウルブズでの経験は。

松岡

「サイアが向こうで学んで持って帰ったことは、サイア自身がパスで周りを活かすということ。サンウルブズに行く前より、そこがものすごくよくなっている。サイア自身がパスをできるようになって、そこが相手チームへのプレッシャーになったと思います」

――関西勢が日本一になった価値。

小松

「関西のチームが同志社以来(選手権決勝で)勝ってないということで、決勝に行ったのも過去には同志社だけ(という時期もあった)。天理大学として、関西で2校目(の王者)になりたいという思いはありました。

 また、いままで(選手権で)準優勝して決勝で勝てていないチームが筑波大学さん、東海大学さん、天理大学とあり、まず天理大学がそこ(優勝)にたどり着きたいとも思っていました。

 大学ラグビーでは伝統校が強くて、たくさんの学校は優勝していないんですね。そこに仲間入りするのはハードルが高いなぁとずっと思って…。

関西のチームでも優勝できる。それを関西の学生たちにもわかっていただいて、全体的なレベルも上がると期待しています。我々が勝つことで関西の同じ仲間の励みにもなる」

松岡

「関西1位になるけど選手権になると関東には勝てないという声のなか、(優勝は)これから関西のラグビーを盛り上げる意味でもプラスになる。関東に負けじとくらいついていければチャンスはある。関西のラグビー選手に勇気を与えられたと思います」

――ノーサイドの瞬間。

小松

「『日本一や!』と思いました」

松岡

「めちゃくちゃうれしかったですね」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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