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2連覇目指す早稲田大学、充実の帝京大学破る。殊勲者は大学からラグビー始めた。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
左から坪郷、丸尾、相良監督(写真はオンライン会見画面を筆者が撮影)。

 関東大学ラグビー対抗戦Aの第4節が11月1日、各地であり、大学選手権2連覇を目指す早稲田大学は東京・秩父宮ラグビー場で今季充実の帝京大学を45―29で破った。試合後、相良南海夫監督、ナンバーエイトの丸尾崇真主将、マン・オブ・ザ・マッチに輝いたフランカーの坪郷智輝が会見した。

 早稲田大学は前半9分、敵陣ゴール前右のスクラムから簡潔にゲインラインを切り先制する(インサイドセンターの平井亮佑のトライとスタンドオフの吉村紘のゴールで7―0)。

 続く14分には、敵陣10メートル線エリア左のラインアウトの攻撃で一気にラインブレイク。トップリーグ注目のアウトサイドセンター、長田智樹が防御と入れ違いになるような形でパスをもらい、敵陣ゴール前右へ進んだ。最後は新人のフランカーの村田陣悟がトライラインを割り、12―0とした。

 対する帝京大学も新人フッカーの江良颯のジャッカルや突進、スタンドオフの高本幹也の鋭いパス、キックなどで徐々に盛り返す。19―19の同点でハーフタイムを迎える。しかし後半開始からやや反則を重ね、早稲田大学に好機を与えた。

 早稲田大学は同13分、連続攻撃からの長田のトライなどで26―19と勝ち越した。続く14分には、自陣10メートル線付近左のスクラムから攻め上がった。途中、ボールの扱いを乱しながらも、ウイングの槇瑛人に右タッチライン際を走らせる。33―19と、流れを大きく引き寄せた。

 早稲田大学は強靭さで鳴らす帝京大学へ鋭いダブルタックルを連発。なかでも坪郷は、7点差をつけて迎えた後半15分頃にロータックルで相手の落球を誘発。槇のトライのきっかけとなる自軍スクラムを獲得していた。

 後半25分にはトライも決めた坪郷は、大学でラグビーを始めたなかで今季1軍入りを果たした4年生。対抗戦初先発で初めてのマン・オブ・ザ・マッチに輝いた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

相良

「帝京大学さんの重くて力強いプレーにどうディフェンスで対抗するかをテーマに試合に臨みました。選手が接点を前に作ってくれて、我慢強くディフェンスをし続けての勝利だと思います」

丸尾

「対抗戦第4節が迎えられて嬉しく思います。この試合のテーマには接点の部分、我慢強くやり続ける部分を掲げて、それを早稲田全員が、出し切り続けたことが結果につながった」

坪郷

「主将が言ったように接点で勝つことはテーマにしていて、そこが僕自身の強み、チームの強みであって、そこで負けたらこの試合は勝てないと思っていた。そこで、勝ち切れたのが、帝京大学戦での勝ちにつながったと思いました」

丸尾

「過去3戦と比べても強度が高くなることがわかっていた。こちらから仕掛けるマインドを持ち続けたので、そこがよかったのかなと。(相手に)強かったですけど、それに、対して戦えたと思います」

――シーズン全体において、このゲームをどう位置付けていたか。

相良

「通常の年と違うなかでの対抗戦なので、自分たちの現在地を1戦1戦、測っていかなきゃいけない。きょうは重く、強いチームに対して自分たちの積み上げてきたものがどこまで通用するか、相手云々というより自分たちがどこまで出し切れるかを見ていたんですけど、選手はしっかりしたマインドを持って、前で接点を作って…。きょうのところはある程度、通用した部分があった。チームとして手ごたえを感じることのできた試合でした」

――試合中、ラインアウトからジャンプをせずに捕球してモールを組んだシーンがありました。

相良

「仕掛ける意味で、色々なオプションがあった。相手には(背の)高い選手がいたので、こういうプレーの選択をした」

丸尾

「Bチーム(控え)、コーチ陣の分析あってのことでした。非常にいいモールができたと思います」

――トライの取り方、工夫していた。

相良

「今回はトライの取り方は色々と考えてやった部分はありましたが、そういう形になった場面があった。今週、準備した成果かなと」

――4年生の意地を見せる試合だったのでは。

坪郷

「自分の持ち味はしっかり出せたと思います」

丸尾

「(笑いながら)もうちょい言えよ」

坪郷

「まぁ…次戦に向けて、もっと強度を上げて、準備していきたいと思います」

――坪郷選手起用の意図と評価は。

相良

「細かいことは抜きしにして身体を張ってタックルしてくれればと期待し、起用しました、初出場に動じず、4年の意地で身体を張ってくれた。いい働きをしてくれた」

――坪郷選手の人柄は。

丸尾

「優しい男です。それでいてプレーになると狂気じみた気持ちを出してプレーしてくれるのが坪郷のよさ。きょうが初出場、初秩父宮でしたけど、僕は何も心配していなくて、むしろやってくれるだろうと思っていました」

――そして、マン・オブ・ザ・マッチに。

坪郷

「前日、きょうとすごく緊張していたんですが、皆が励ましてくれて、リラックスして試合に臨めたのがいい結果につながったと思います」

――試合前の練習期、グラウンドに「緊張」の張り紙を貼っていた。

丸尾

「例年では早慶戦の時期(11月中旬以降)から出していますが、ここがまず、ひとつ目の勝負どころだと思ったので。グラウンドでもいい緊張感のなかで練習できたと思います」

 長田のようなスポーツ推薦入学による綺羅星と坪郷のような無印の星との融合が、早稲田大学の魅力。防御と相まって、クラブの文化を示した80分だった。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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