Yahoo!ニュース

慶應義塾大学、劇的勝利! 逆転ペナルティーゴールと好守を振り返る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
左から北村、相部、栗原監督(写真は会見画面を筆者が撮影)。

 今季の大学ラグビー界にあって、いまのところ最上級の劇的な結末が迎えられた。

 11月1日、東京・秩父宮ラグビー場。日本最古豪も昨季は大学選手権出場を逃した慶應義塾大学が、加盟する関東大学対抗戦A・第4節で昨季全国2位の明治大学と激突する。

 10―12と2点差を追うノーサイド直前、1年生の山田響がペナルティーゴールを決めて13―12と逆転した。歓喜の輪ができた。

 チームは終始、組織的に前に出る防御を貫き、要所でのジャッカル(接点の球を奪い取るプレー)で明治大学の反則を誘発していた。

 試合後、栗原徹監督と相部開哉主将、北村裕輝が会見した。北村は昨季ヘッドコーチ就任の栗原監督曰く「僕が感じた中でのマン・オブ・ザ・マッチ」。再三の強烈なタックルで相手の好ランナーのミスを誘った。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

栗原

「こういうコロナ禍の状況で試合が無事におこなわれた。協会関係者、明治大学ラグビー部、レフリー陣に感謝申し上げます。この環境でシーズンがスタートし、無事に明治大学と対抗戦ができたことが何より嬉しいですし、果敢にチャレンジした結果、勝利しましたが、何より選手全員が精いっぱいチャレンジしたことが嬉しいです。本日はありがとうございました」

相部

「チャレンジャーマインドで挑みました。自分たちのやることにフォーカスし、やり切れて、勝ち切れたことは最高の結果。課題は多くあったので、修正していければと思います」

北村

「本日はディフェンスで勝つと全員で話していて、それを一体となって出せて、この結果となったかなと思います。日吉(本拠地グラウンド)に戻ってしっかり練習し、次に備えたい」

――試合終了間際、山田響選手がペナルティーゴールを託して成功に導きました。

相部

「響は前半からタッチキックで失敗していましたが(ペナルティーキックをタッチラインの外へ蹴り出すべきところ、インゴールへ蹴るシーンがあった)、自分は彼のキックを信頼しています。彼をキッカーにしているということは、彼がチームで一番、キックがうまいということ。彼が失敗したということは、慶大が失敗したということ。彼1人の責任というより、(蹴らせた)自分の判断が間違っていた、というか、自分たちの力がそこまで及んでいないということ。なので、落ち込む必要はないと声をかけていて。最後に任せた理由に関しましても――彼には重いプレッシャーを与えてしまったとは思っていますが――彼自身は大舞台を経験しているので、そこに対する信頼があった。また、普段の立ち振る舞いを見ても、彼には逆境を乗り越える力はあると思ったので、任せました。

(ゴールが決まった直後は)実はまだ時間がまだ残っていると思っていて、次のプレーで時間を使うためにどうしようかを考えていました。なので、ちょっとびっくりしたんですけど、終了の笛が鳴った瞬間は我慢し続けてよかったというか、報われたというか…。自分たち23人だけでなく、部員全員の努力が報われたと思いました」

北村

「80分間、それが最後のプレーだとわかっていたので…。苦しい時間帯、うまく行かない時間帯もありましたが、これまで準備してきてよかったという気持ちになりました」

栗原

「ゴールが入る前に、我々スタッフ陣は握手をしていました。それは勝ったからではなくて、ここまで精いっぱい、皆、頑張ったので。僕は、(ゴールが)入っても入らなくても満足できる試合でした。ただ、皆が喜んでいる顔を見ると、入ってよかったと思いました。あそこまでの80分の努力に素晴らしいと思っていました。

(山田にとっては)入っても入らなくても、いい経験になるなと思って。すべてを成長の糧にしてもらえればと思っています」

――タックルが印象的でした。

栗原

「慶應義塾大学には120年の伝統があります。僕が何も言わなくても、タックルをします。先輩方の重みが彼らの身体に乗り移ったのではないかと思います」

相部

「80分間、一体となっていいディフェンスをし続けられたと思っています。自分たちのフォーカスしていたことは、前に出て相手にプレッシャーをかけ、時間とスペースを奪うこと、明治大学さんはワイドなアタックをするので、それに対していいスペーシングをしてシャットアウトすることでした」

――北村選手は特に、強烈なタックルを決め続けていた。覚えている一撃は。

北村

「正直、あまり覚えていないんですけど、正面に立った選手を絶対に止めるという気持ちで、タックルしました」

――昨季、大学選手権へ行けなかった分、新チームよりは他部より早くスタートしていた。いま、その積み重ねが活きていると感じることは。

栗原

「活きていると感じるのは選手だと思うので、北村に…」

北村

「今年のチームは去年大学選手権に出場できなかったことで早くスタートしたわけなのですけど、その時期、基礎を重点的にやりまして。タックル、パス、ハンドリングの基礎がしっかり身について、きょう、そこが出たのかなと思っています」

相部

「昨年度(大学選手権に)出られなかったのをポジティブに考えれば、今年の準備期間が早く始まった。コロナ禍によって各チームの準備期間が短くなったなか、自分たちは12月に始めた分、基礎、土台を固められた。それが活きてきていると感じています」

栗原

「4年生が主体的に部の運営をやってくれました。そのおかげで、自ら考えて動くことが例年よりもできてきているかと思います。この勝利は4年生の努力の勝利と感じています」

 敗れた明治大学では箸本龍雅主将らが好ジャッカル連発も、攻撃中の接点に手こずった。

 田中澄憲監督が「慶應義塾大学のこの一戦に賭ける思いを学ばせてもらった。戦うエリアは自陣が多かった。敵陣へ入る部分は、こちらの意図しているところではうまく行かなかった」と試合運びについて反省した。

 箸本は「全体的にブレイクダウン(接点)はプレッシャーを受けた。そこを課題に取り組んでいたのですが、まだまだ自分たちに甘さがあった。高めていけるところがある。次は日本体育大学戦。日本体育大学さんがどうというより、自分たちがどうすべきかにフォーカスし、課題を修正したいです」と前を向いた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事