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敗戦から学んだ明治大学・山沢京平、新型コロナ禍に何を思う【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨季の選手権決勝は満員の国立競技場でおこなわれた(写真:つのだよしお/アフロ)

 明治大学ラグビー部副将の山沢京平が、練習再開前の6月までにオンライン取材に応じている。新型コロナウイルスの感染拡大下における過ごし方について語った。

 埼玉の深谷高校の2年時から高校日本代表入りした山沢は、優れたボディバランスとスペース感覚、パス、キックのスキルを長所として1年時から活躍。当時、トヨタ自動車を率いていた元南アフリカ代表指揮官のジェイク・ホワイトから「いますぐ(同部へ)欲しい」と讃えられ、一昨季は22年ぶり13回目の大学日本一に輝いた。

 昨季はグラウンド最後尾のフルバックから司令塔のスタンドオフにコンバート。大学選手権では決勝で早稲田大学に敗れて準優勝に終わり、ラストイヤーへ「とりあえず(試合が)あると信じて、いまやるべきことをしっかりやっていくしかない」と静かに燃える。

 パナソニックに在籍の兄・拓也は、深谷高校3年時に日本代表候補となった経歴の持ち主。京平は以前、「自分自身、お兄ちゃんと比べられても自分は自分と思えるタイプ。その辺のプレッシャーはなかった。お兄ちゃんは、純粋に誰が見てもすごいじゃないですか。お兄ちゃんがすごいと(周りに)言われても、そりゃ、すごいもんと開き直れるというか」と敬意を示している。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――4月、チームは一時的に解散しました。

「やれることをやろう、みたいな感じですかね。チームとしての春のフォーカスだったフィットネスと、スキルは個人(練習)でもできる。

 僕個人としては怪我があるので、そこをいい方向にもっていく。怪我は右肩の後方脱臼です。これは大学1年の時からちょくちょくあって、去年も結構、きつかった。(大学選手権の)関西学院大学戦も、それで出なかったりとか、去年もシーズンを通して、練習を抜けたり、試合に出なかったりとかがたくさんありました。で、手術をしました。

(メスを入れたのは)1月末。選手権決勝が終わってちょっとして、です。今年とこれからのことを考えたら、いま(当時)しかないと思って。(現在は)コンタクトはまだまだ。でも最近、ハンドリング(の練習)には交ざれるようになってきた」

――改めて、その「選手権決勝」について伺います。前半から早稲田大学に大量リードを与えた試合展開について、「経験不足」といった旨で反省していましたが。

「あの試合で本当に経験のなさが身にしみてわかったというか。

 自分たちの思い通りじゃない時の試合の運び方とか時間の使い方、ボールの動かし方のところ(に課題があった)。あの試合、自分では緊張とかあがるというのはなかった。そこの部分(引き出し)のところ(の差)が大きく出たな。

 あの時も『こうしよう』という考えはあったんですけど、それを味方にうまく伝えられなかったことと、選択肢を数多く持てなかったこと(が反省)。ひとつ、ふたつ、と、それくらい少ない選択肢のなかで(しか)プレーしていなかったところがあったので、選択肢を増やして、そのなかからいい判断を下せるようになっていたらと思います。

 これが活きている部分は…。いま、自分たちで色々と考えながら練習をやっている。全てにおいて考えるようになりました」

――普段から「考える」習慣をつけることで、本番で余裕を持っていい判断ができるようになりたい、というイメージか。

「判断とか、そういう部分では試合と(練習で)は違いますが、考える(ことが重要である)部分では繋がる(試合と練習で共通する)ところがある。考えてやっていきたい」

――関東大学対抗戦は10月開幕を目指しています。もっとも、予定された通りに試合があるかはわからない。

「そこはあまり考えないで、とりあえず(試合が)あると信じて、いまやるべきことをしっかりやっていくしかない。

 この生活に飽きというのはどうしても出てくるんですけど、ウェイトの部分、怪我の部分(を見直すこと)がいまのモチベーションのようなものにはなっている」

――大学4年のタイミングで、未曽有の事態に直面しています。そのことはどう捉えますか。

「最終学年でこういうのは…結構…悲しい、じゃないですけど、きつい部分はあります。春の試合では課題を出して克服していったり――自分は試合に出られないですけど――色々な意見を言っていったりしたかった。それができないのは残念ですね。でも、その分、個人にフォーカスはできるので…と考えています」

 思うに任せぬ状況でも、心を乱さない。少なくとも、心を乱さないでいようと意識する。そんな雰囲気が伝わった。卒業後はプロアスリートとなる可能性が濃厚な山沢。時代の変化を真正面から受け止め、「やれること」に集中する。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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