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多くの部員が一時帰省。明治大学ラグビー部、新型コロナ感染拡大の影響は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
今年もやりたい大観衆の前でのビッグゲーム(写真は昨年度)(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 人々の暮らしを変質させた新型コロナウイルスの感染拡大は、日本ラグビー界にも多大な影響をもたらした。

 昨季まで大学選手権で3シーズン連続の決勝進出を果たしている明治大学ラグビー部の田中澄憲監督が、6月中旬までにオンライン取材に応じ、日本政府が緊急事態宣言を発令した4月上旬以降の状況を説明。選手の帰省に見た学生ラグビーの普遍的な特徴、自主性を重んじる学生へのアプローチなどについて語った。

 

 明治大学の現役学生時代は主将を務め、卒業後はサントリーの選手、チームディレクターとして清宮克幸(現日本ラグビーフットボール協会副会長)、エディー・ジョーンズ(現イングランド代表監督)といった名物指揮官、オーストラリアのジョージ・グレーガンやジョージ・スミス、ニュージーランドのアラマ・イエレミア、日本の小野澤宏時ら各国を代表するレジェンドとともに仕事をしてきた。現役引退からチームディレクター就任までの間は同部の採用も務め、当時大学選手権を連覇していた帝京大学からも多くを学んだ。

 

 以下、単独取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――4月上旬、多くの選手が寮を一時的に離れたと聞きます。

「4月5日に解散しました。緊急事態宣言が出る前でしたが、判断は早い方がいいと思いました。あの時期はテレビでも寮のある世田谷区の感染者数が多いと言われることもあって、何人かの保護者から『(我が子を自宅に)帰して欲しい』という要望がありました。1人が2人に、2人が4人にと五月雨式に(感染者が)出てくる可能性も考えられたので、いったんチーム活動を中止に。それぞれ親と話し、帰省するなら帰省しろと話しました。ここで50人くらい、帰りました。逆に40ちょっと残ったので、もともと100人近く入っている寮でしたが、部屋でも、食堂でも、自然とソーシャルディスタンスが取れるようになりました」

――帰宅するか、寮に残るかはあくまで自己判断に委ねた。

「特に、1年生は判断が難しいと思うんですよ。入寮して1か月ぐらいの時期で、まだまだ最近まで高校生でした。自分のこれからのことを考えるより、親に帰れと言われたら帰る、という感覚もあったかもしれません。チームへの帰属意識は、年月を経ることで高まる。だから今回は下級生がほぼ帰って、上級生がほぼ残った感じです。わかりやすいけど、そうなるんじゃないですかね、大学生って」

――その間、選手とはどのようにコミュニケーションを取りましたか。

「寮にいる選手とは直接、会うので、面談、声掛けができる(田中監督は自家用車で自宅から通う)。帰省した選手には個人的な(オンラインでの)面談、何かあればラインで発信を。時にはコーチから簡単な宿題も出します。ラグビーや明治大学から(選手の意識を)離さないよう心がけている。ただ、もう、実家にこれだけ帰ったら、こちらが管理できる状態ではない。だから、あまりしつこくがちがちにはやりません。

 コーチングし過ぎても自分で考える余地がなくなる。S&CコーチによるZoomでのトレーニングも週に3回、やっていますが、強制はしていません。全て、自分の意志でやるかどうか、というところですかね。

 解散時には、この状況をプラスに捉えて自分自身と向き合って欲しいと話していました。成長したい選手はそれを実践していると思いますし、活動再開した際に後悔する選手もいるかもしれません。ただ、それならそれで、そこから焦って頑張ればいい」

――練習再開へは。

「結局、大学と話し合って決めていくこと。(感染リスクが)ゼロになるのはなかなか難しいと思うので、どう極力ゼロに抑えられるように活動していくかのプラン、ガイドラインのようなものを自分たちで作って、大学側に提出して、調整してゆくことになる。それを作っていっている最中。体育会ラグビー部としてどういう決め方をしていくか、外野にも示さないと」

――夏合宿や秋の公式戦実施に向けては。

「夏合宿も予定はしていますが、我々は(宿泊に)大学の施設を使っていますので、そこが今年も使えるのかどうか(が焦点)。あとは、すでに組んでいる練習試合が実施可能な時期なのか、これは大学間だけの話で決めてもいいことなのか(などの議論がある)。練習試合にもレフリーの派遣が必要ですが、ここで『関東ラグビーフットボール協会がレフリーを派遣できません』という風になったら、うちの学生レフリーを使うことになるのか。部内(でのゲーム)ならそれで問題はないのかもしれませんが。

 僕らとしては(公式戦が)ある前提で準備は進めています。あとは情勢ですよね。今回スーパーラグビー(ニュージーランド、オーストラリアの国内リーグ、取材日は同開幕前)が始まります。向こうでは季節が秋から冬になっていくというなか、どうなっていくのか。国の人口規模は違うんでしょうけど、ひとつ、参考にはなるのかなと」

 今回、話題に挙がったスーパーラグビーから派生したふたつの国内リーグは大盛況の様子。鋭い視点を持ちながら活動休止中の選手の管理は最小限にとどめる指揮官はいま、何を思うか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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