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日本代表のリーチ マイケル&田村優、ペナルティーゴールなぜ選んだ問題を語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
左からリーチと田村(写真:アフロ)

 ラグビーワールドカップの日本大会が、9月20日、東京スタジアムで開幕した。史上初の8強入りを目指す日本代表は、2大会ぶり出場のロシア代表に30―10で勝利。アイルランド代表など強豪のひしめく予選プールAにあって、4トライ以上獲得でもらえるボーナスポイントを含め、勝ち点5をマークした。序盤から緊張などによるミスを重ねたが、地力の差を示した。

 一夜明けた21日には、都内ホテルでリーチマイケルキャプテンと田村優が会見。試合終盤のペナルティーゴールなどについて振り返った。

 以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――緊張もあったなか、勝ち点5を獲得できた。

リーチ

「そうですね。もちろん緊張もあって、この試合に関しては緊張する試合だと考えています。この緊張が明けて、次のアイルランド代表戦へよりいい準備ができていると思います」

田村

「同じく、緊張しました。でも難しい試合で勝ち点も取れましたし、あの、欲しかった結果というか、ポイントもしっかりとれて、ほっとしています」

――ロシア代表戦について選手同士で話し合ったことは。

リーチ

「昨日は試合後すぐロッカールームで自分たちワードを挙げたりして。ホテルに帰ってからは、もう遅かったのでご飯を食べて寝ました」

田村

「この後、すぐグループごとにミーティングをするので、できるだけ早くこれ(会見)を終わらせたいと思います!」

――課題と反省は。次戦以降へそれをどう修正するか。

リーチ

「相手はほぼ同じことをやって来ると思います。私たちの強みを消すためにどんどんボールを蹴ってきています。それに対応するには、いまからミーティングして、もらったボールをどう使うかをポイントにすると思います」

田村

「プレッシャーがかかる状況でもあるので、そこで昨日、あれだけ独特の雰囲気のなかでそれを跳ね返す場面もたくさんあった。これから続く3試合はビッグマッチ。そこ(プレッシャーへの対応)は課題で残ると思いますし、皆で協力してやっていかなきゃ越えられないと思います」

――改めて、昨日の試合は楽しめたか。

田村

「緊張して死ぬかと思いました。まぁでも、ミスもありましたけど、ボールを動かす時間もたくさんありましたし、楽しめましたけど、緊張から解き放たれて、次の試合のほうがより楽しみではあります」

――もともと「潜在意識で勝ちたい」と言っていたが。

リーチ

「潜在意識はとてもよかったです。1週間を通してロシア代表の分析ができて、リーダーたちも意思統一できて、先週の準備に関してはよかった。優が言ったようにプレッシャーがかなりかかった試合で、開幕戦はいつも緊張する。この緊張には慣れていくしかない。昨日の試合はそのなかでも楽しめました。姫野(和樹)もすごい楽しいって言っていました」

――眠れなかったと聞くが。食事はどうだったか。

田村

「食べるのはたくさん食べています。寝られないのは、オフの時くらいから、何か、寝れませんでした。昨日はちょっと寝れました。でも、これもワールドカップの一部だと思っています。もう大丈夫です」

――ウォーターボーイは徳永祥尭選手だった。

リーチ

「彼はすごく落ち着いている。興奮しない。声もかけてくれるし、賢い人。彼がウォーターボーイでよかったです」

――満員のスタジアムでプレーできた。

リーチ

「満員のスタジアムで白と赤のジャージィ。とても感動しました。最後に安倍晋三総理がロッカールームで言葉をかけてもらって、日本のラグビーの盛り上がりを感じます。いまも道を歩いていたら声をかけられることもたくさんあるし、外国のファンも多く、これからいい大会になると思います」

――後半、修正したところは。

リーチ

「正直、変わったことはなくて、ひとつかわったのは僕たちのラインアウトを組んだ時。相手のディフェンスがフォワード(の周辺)を狙っていて、そこにぶち当たるとゲインラインを越えるのは難しい、と。それを踏まえ、モールを組んで、10番とラインアウトの間を狙うのを意識しました。大きなことは変えてないです」

 プレー選択の判断に注目が集まったのは、20―10とリードして迎えた後半20分のシーン。

 敵陣10メートル線付近右中間でロシア代表が反則した際、タッチラインの外へボールを蹴りだして4トライ目を狙うか、ペナルティーゴールで3得点を加算しにゆくかの判断でリーチは後者を選択した。

 4トライ目を奪えばボーナスポイントの勝ち点1をもらえるなか、それまでゴールキックを2本外していた田村にスコアを託した。

 このシーンを田村は「リーチが僕に勇気を持たせるチャンスをくれた」と振り返った。圧力下で持てる技術を発揮するチャンスを与えられたと、司令塔は捉えたようだ。

リーチ

「ワールドカップでは点数でプレッシャーをかけないといけない。40メートルくらいで風が難しいくらい舞っていて、優も調子が悪くなくて。正直、どっちでもよかったですけど、最終的にショットを狙って、決めてくれたことにすごく感謝しています」

田村

「まずリーチが僕に勇気を持たせるチャンスをにくれて、よかったです。結構、風も強くて、僕は最初、トライとボーナスポイントが欲しくてタッチって言ってたんですけど、リーチがちょっと怒って『狙え』って。開幕戦でプレッシャーに向き合うというチャンスを、キャプテンにもらいました」

――フル出場が多い2人だが、昨日は途中交代した。

リーチ

「開幕戦が一番プレッシャーのかかる試合で、プレッシャーを味わうことが大事。僕と優も同じくらいのタイミングで下がって、代わりの選手がどれくらいプレッシャーのあるなかで慣れていくのかが大事になりました。2人とも30歳。連戦が続いてコンディション重視で準備していかないといけない」

田村

「もちろん80分出たかったですけど、それはコーチの判断。僕たちが一番きつい最初の60~65分、しっかりプランを遂行して、元気のあるフレッシュな選手へ引き継げたと思っています。もう30歳ですけど、まだまだ若いんで」

――次戦へ。9月28日に静岡・エコパスタジアムで戦うアイルランド代表についての印象。警戒する選手は。

リーチ

「アイルランド代表は世界ランク1位で、とても強いチーム。ミスはあまりない。警戒する選手はたくさんいます。一番、気を付けるのはセットピースの安定。スクラム、ラインアウト、モール。そこで自分たちの精度を高くしてやっていかないと、試合の流れを掴むのは難しくなります」

田村

「相手というよりは、もっと自分たちのことにフォーカスしたいと思っていて。これからコーチが出してくるプラン、戦術を信じて遂行しきれるかどうかにかかってくる。僕は相手より自分たちの準備、プレッシャーにどう対処するかにフォーカスしていきたいです」

リーチ

「準備からしっかりやっていかないといけない。大きな壁にぶち当たります。優が言ったように自分たちにフォーカスを当てて、どれだけ自分たちの強みを出せるかが大事になります」

田村

「まったく同じです。まぁ、100パーセント全開で、ここから残り3試合、僕とリーチもキレキレの状態にしていきたいなって、さっきエレベーターで話しました」

――22日にはスコットランド代表対アイルランド代表があります。どう見ますか。

田村

「どんなプレーをしてくるかをしっかりと見たいです。まぁでもあの、お互いタイプが似たチームで、僕らとは戦術も戦い方も違うチームなのでどこまで参考になるかはわからないですけど、どこにこだわりを持っていてどういうところが強み、弱みになるかは見えてくると思う。相手の弱みを自分たちのプランでどう突いていくかというのは、見たいなと思っています」

――強豪国(ティア1)を相手にトライチャンスを作るには。

リーチ

「そうですね、ティア1になるともちろんディフェンスが厳しくなる。でも、キックの重要性が大事になる。あとはもらったボールをどう使うかが大事になる。ティア1の国になると、自陣、敵陣…ということが大事にとなる」

 フランカーのリーチとスタンドオフの田村は同級生。日本代表では田村が初選出された2012年からともにプレーしてきた。自国開催のワールドカップでは、その2人がリーダー格としてチームをけん引。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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