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日本代表リーチ マイケルキャプテン、強化のために歴史の勉強。なぜ。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
取材に応じるリーチ(著者撮影)。

 ラグビー日本代表のキャプテンとして今秋のワールドカップ(W杯)日本大会を見据えるリーチ マイケルは8月3日、大阪・東大阪市花園ラグビー場でパシフィック・ネーションズカップ(PNC)のトンガ代表戦に挑む。これまでは恥骨を痛めて候補選手軍の試合にも出なかったため、今回が今季初先発となる。

 15歳で来日し、札幌山の手高校、東海大学を経て現在は東芝所属。スーパーラグビーのチーフスやサンウルブズでもプレーしてきた。日本代表としては、2015年のイングランド大会に続き2大会連続でW杯での主将を務めることとなりそうだ。ジェイミー・ジョセフ現ヘッドコーチ体制下でいま注力するのは、国のラグビー史をテーマにした講話だ。

 34―21で勝利したフィジー代表戦(7月27日)の前には試合会場となった岩手・釜石鵜住居復興スタジアムの歴史的意義などについて語り、今回は日本に数多く留学してきたトンガ人選手についてプレゼン。特に日本代表のナンバーエイトとして活躍したシナリ・ラトゥ(現在名はラトゥウィリアム志南利)のエピソードを語った。狙いを聞かれると、「潜在意識を強くしたい」と語った。その心は。

 以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――今季初先発です。

「少し緊張はしています。久々の先発なので。でも、すごく楽しみです」

――7月27日のフィジー代表戦を受けて。

「50分くらい出て、GPSのデータは悪くなかった。でもミスタックルは2回。そこは練習してきたので、タックルとワークレートを上げていきたい」

――フィジー代表戦。チームとしてもタックルミスが多かったが、どう改善するか。

「全体的な成功率は約75パーセント。後半のインパクト選手(リザーブ)だけだと約34パーセント。それは理解しています。ミスを減らすにはタックル練習するしかない。それと、きつい場面でいかにモーメンタムをコントロールするかが大事。80分飛ばしっぱなしでやると疲れる。自分たちがいい状態でプレーすることが大事。レストを入れたり、相手の勢いのある時にコントロールしたりするのが大事」

――この1週間の準備。今度はナイトゲームだが。

「ワールドカップと同じ意識はないです。テストマッチとして準備しています。月曜日にリーダーズミーティングをやった時、そういう(ナイトゲームに向けた)話が選手から出てきて、それをスタッフに伝えて、『1週間の流れをどう持っていくか』でプランニングをしています」

――トンガ代表で警戒するのは。

「ベン・タメイフナ。スクラムの重さもあってパンチ力があります。あとは、ヤマハにいた13番シアレ・ピウタウ。それと朝日大学にいたシオネ・ヴァイラヌ。2017年秋に対戦した時も彼が後半から出てきてかなりインパクトを残していた。彼はキーマンになる。意識しなくてはいけない。

 ただ今週のフォーカスは相手よりも自分たち。やっていることを理解してやっていく。相手を見過ぎず、自分たちのやっていることを精度高くやる」

――トンガ代表戦での精神面での準備。フィジー代表戦は岩手・釜石鵜住居復興スタジアムでおこなわれたことで、その領域の準備はしやすかったと思うが。

「いつもと同じテストマッチ。釜石には特別な意味があって、特別なミーティングをしてきました。今回の花園へは、いつものテストマッチの準備をやっていきたいと思っています。特別と言えば、花園は高校生の夢の舞台です」

――話の通り、会場の花園は全国高校ラグビー大会の開催地。リーチ選手にとって花園の思い出は。

「悔しい思い出ばかり。それがきっかけになった。高校1年の時に2回戦の正智深谷高校とやって、向こうの留学生にコテンパンにやられて、悔しくて北海道に帰りました。その頃は76キロそこから20キロくらいは増えて、高3の時には100キロを超えていました。原点は、札幌。ですけど、花園は気づくことの多い場所でした」

 ここからは、前日までも各所で報じられたトンガ人にまつわるプレゼンテーションに話が及ぶ。

――今週はトンガ出身の日本代表選手の歴史についてレクチャーしたようです。狙いは。

「潜在意識を強化している。そこで相手との差をつけないといけない。フィジカル、メンタルはもちろん、考えていないところのメンタルでも差をつけたい。その意味では歴史を(頭に)入れたら潜在意識(の強化)に繋がると思っています」

――自作のスライドを使って話しているのか。

「そうです」

――元日本代表のシナリ・ラトゥさんについての話をしたようですが。

「ラトゥのことを調べてプレゼンしたのですが、結構、間違った情報もあって(一同、笑う)! 僕はラトゥが最初だと言ったのですけど、その前から来ている人もいました。ただラトゥはワールドカップに3回も出て日本ラグビーにいいインパクトを残している。だからトンガと日本の繋がりを1回、皆にプレゼンしました。

 ラトゥはトンガ出身なのに日本代表になって、(1990年4月には)トンガ代表と戦った。その時の宿澤広朗監督がインタビューのなかで、『いつもの闘争心を母国に対しても同じように出せるのかが心配だとラトゥに話したら、問題ない、日本代表にロイヤリティを持っている、と言われた』と。実際に大活躍して、28―16で勝った。あとは、日本でトンガ人はでかく、強く、激しいというイメージを持っているという話もしました」

 はじめて日本に留学生のラグビー選手を招いたのは、大東文化大学だった。「そろばん留学」という名目で1980年にノフォムリ・タウモエフォラウとホポイ・タイオネが来日し、続く85年にはワテソニ・ナモア、そしてラトゥが加入。ラトゥらは86、88年度の全国大学選手権で優勝を果たし、社会現象にもなっている。

 現在の日本代表では、リーチをはじめ多くの元留学生選手が活躍。チームの大義を明らかにするにあたり、当該選手にとっての先輩について話す意味は小さくなさそうだ。

――「潜在意識」を高めようと思った背景は。

「1週間の準備をする時、『激しく行こう』とかそれぞれのマインドセットがあるけど、自分のなかでは『小さい声』をどう鍛えるかが大事(だと思っている)。昨年、イングランド代表戦は人の会話、自分の思考の部分でいい準備ができて(前半をリードで折り返すなどし、善戦と言われた)、次のロシア代表戦になった時は人の会話の質が変わって、映像を観て思うことも変わった(思わぬ苦戦を強いられた)。(相手の)映像を観て強さを感じなかった時、自分の会話、人との会話でちょっと違ってくる。そうなると、少しパフォーマンスが落ちる。そこを鍛えなきゃいけないと思っています。心配事があってもポジティブに切り替えられるように…」

――リーチさん自身は、ラトゥさんの歴史を調べてどんなイメージを持ったか。

「彼が残したレガシーはとても大きい。凄い人です。彼やその前の留学生選手が日本に来ていなかったら、僕みたいな人もいないと思うし、彼が成功していなければ(各大学で)『留学生を獲ろう』という繰り返しはなかった。彼のレガシーは相当に素晴らしい」

――リーチさんはワールドカップでは2大会で主将を務めるかもしれません。自分も「レガシー」になりたいか。

「意識はないです。ただ一生懸命、やる。そうすると自然といいものを残せる。このチームには2008年に入っていますが、どんどんレベルが上がっているし、それは皆の頑張り(のおかげ)。外国人コーチが来てレベルを上げて、選手もどんどん海外に行って強くなって帰ってきて、日本ラグビーのレベルが上がってきている。そういったレガシーを残すのは、僕らの頑張り次第です」

――ワールドカップ開幕まであと50日前。

「毎日、あとちょっとだなと感じます。試合が週末にあると1週間の流れが早く感じます。残り3試合。トンガ代表戦、アメリカ代表戦、南アフリカ代表戦でしっかりレベルアップをしないといけない。いまはフィジカリティでもメンタルもいい。あとは試合の流れをどうコントロールするか。それがリーダー陣の役割です。そこでレベルアップしないと」

 共有することで、戦う意味や理由を見つめ直す日本代表。ワールドカップの前哨戦とも見られがちなPNCでも、一戦必勝を誓う。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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