Yahoo!ニュース

日本協会・清宮克幸副会長、「レガシー」をどう残すか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
副会長としては国内リーグ改革などに着手か。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 早稲田大学、サントリー、ヤマハのラグビー部で監督を歴任してきた清宮克幸は、今年6月29日から日本ラグビー協会(日本協会)の副会長を務める。森重隆新会長のもと、国内リーグの改革などで手腕が期待される。

 7月1日に取材に応じた際は、「そういうこと(日本協会での要職就任)は私の仕事ではないと、(待望論を)否定してきました」。事実、ヤマハの監督退任会見をおこなった1月下旬、女性向け総合スポーツクラブであるアザレア・スポーツクラブの立ち上げを発表。今秋のワールドカップ日本大会後にイベントのレガシー(遺産)を残すべく、具体的な策を取っていた。

 本稿では改めて、同クラブの意義に関する当時の見解を振り返る。

「静岡のエコパスタジアムで、ワールドカップ(2019年の日本大会)がおこわなれます。このレガシーを残したい、作らなきゃいけない。その思いから、静岡県ならびに静岡の企業の皆様と、新しいスポーツのあり方を考える組織を立ち上げました。アザレア・スポーツクラブです。女性と子どもに特化した総合スポーツクラブで、トップチーム(の育成)と子どもたちの競技普及が柱になります。

 初年度、このアザレア・スポーツクラブに、女子ラグビーチームを創設します。それから、新しく作っていくスポーツは限りなくあるわけですね。イメージですと、ボルダリング、卓球、野球、スケートボード、ウィンドサーフィン…。色んなスポーツに可能性があって、トップ選手と地域を結びつけるクラブを作っていきたいです。地域貢献というところでは、スポーツと切り離せない食育、英会話、子どもへの教育事業をやっていきます」

――初回のトライアウト、選手の採用について。

「どういう選手を採用するかというと、基本は3種類を考えています。プロ、地域で雇用していただく準プロ、クラブメンバーとしてアカデミー生としてプレーする選手。トライアウトに来た選手たちをこの3つのパターンに分けます。私のほうで選別させていただければと思います。新しい組織でチャレンジする女性は、例えば、静岡はサッカーどころなのでドロップキックのものすごい上手な女性、バスケットでリバウンドを獲るのがうまい女性、100メートルを12秒で走れる女性と、さまざまな強みを持った女性がトライアウトに参加いただけるようになれば」

――目指すのは何か。

「目指すべきはチャンピオン。他競技のチャレンジャー、地元の選手を中心に、海外選手も雇用しようと思っています。新しい選手を発掘しながら、オリンピック選手を輩出できれば何よりです」

――地元の中学、高校に女子ラグビー部を作る計画は。

「アザレアのやるべきことは子どもたちへの普及とトップチームを持つこと。中学、高校のチームを作ることがその枠に入るのであればするでしょうが、そうでなければサポートをする形になるでしょう。一緒に練習をするとか。静岡でラグビーを続ける環境は大きく二つありますが、ここでプレーした女性がラグビーを続ける場合、ほとんどは県外流出しているわけです。アザレアができることで、ラグビー選手が県内にいられる状況。これはかなり嬉しいはずです。昨晩(会見前日)も静岡の商工会議所の賀詞交換会があったんですが、そこでお話をさせていただいて、会議所の親分たちが『面白いね。今度話を聞かせてよ』と話していて、地元から盛り上げていけたらなと思います」

――県内でのラグビーの普及について。

「静岡県ではレガシーづくりの一環で、授業でラグビーを年に4回、展開する。教育委員会で認めていただきました。教科書、参考になるものを作成中です。つまり、数万人の子どもたちが学校でラグビーを学ぶ。その後にワールドカップを観るんです。何も学ばずに観るのと学んだあとに観るのとでは大きな違いがあります。少し熟した子どもたちのところへヤマハラグビー部のメンバーやアザレアのメンバーが出張し、ラグビー、食育を教えたり。そんなことがこれから増えていきます。ラグビー文化に触れた子どもたちがいる県って、将来、楽しみじゃないですか。10~20年経った時にその子たちが『ラグビーボールが何で楕円球なのか知っているよ』『トライって、何でトライって言うか知っているよ』という人がたくさんいる…。種をまくまではいかないにせよ、地面を耕すのがいまの段階だと思っています」

――この活動は、ワールドカップを通じて全国へ広がるべきとお考えか。

「出来る形でやっていく。静岡は川勝平太知事が素晴らしいビジョンをお持ちで、強い言葉で素晴らしいリーダーシップを発揮している。それで、このように立ち上げることができました。それぞれの場所でのやり方はあるでしょうが、参考にはして欲しいですね。アザレアを立ち上げるに際しては、すでに活動する長手、三重、熊谷の活動を相当細かくリサーチしました。その中で、静岡らしい形はこうだよね、ということで、いまに至っています。ラグビーに限らず、様々なスポーツと子どもたちの未来を変えていく存在だと表明します。色々な形で日本中に夢や希望を与えられたら」

――クラブハウスなどについては。

「施設を充実させるのは今後数年後。既存のメリットとしてエコパスタジアム内の施設をうまく活用していく。グラウンドであればメイングラウンド、サブグラウンド、芝生広場と色んなラグビーをやる環境がある。それを使いながら、一般市民の使うパウダールームなどを一緒に使用していく形で進んでいきます。もちろん地元業界の方と連携し、クラブハウス、トレーニングルームの充実も図りたいとも思っていますし。ただ、全てはこれからです。ママさんアスリートが子どもを預けられる託児所も(計画)。協力をしていただける人を探してはいます。考えられることをひとつひとつ潰してゆく感じになります」

 

 清宮副会長は7月1日、「(協会の要職に就かない思いは)この1か月で覆った」と説明。アザレア・スポーツクラブについては「もう船は出ている。できるところのサポートはやりますし。優秀な人間は向こうにもいますのでね」とした。ちなみに同クラブの広報担当理事の谷口真由美も日本協会理事に就任。新しい団体を立ち上げた同志が、日本ラグビー界全体の「イノベーション」にも着手する。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事