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明治大学・田中澄憲監督が求める自己アピールの手段とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
6月2日には帝京大学と対戦(写真は一昨季の大学選手権決勝)(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 昨年度の大学選手権で22大会ぶり13度目の優勝を果たした明治大学ラグビー部は現在、関東大学春季大会で実験的な取り組みに着手している。

 昨季は加盟する関東大学対抗戦Aで4位だったため、今季の春季大会では各団体(対抗戦、同リーグ戦)中位陣が集うBグループへ参加。一昨季まで9年連続日本一の帝京大学をはじめとしたAグループのチームとは「招待試合」の形でマッチメイクしている。一方で春季大会では控え組に実戦経験を積ませ、選手層拡大を目論む。

 5月26日、東京・明治大学八幡山グラウンド。法政大学との春季大会のゲームを71―14で制した後、就任2年目の田中澄憲監督が手応えを語った。

 元サントリーチームディレクターの田中監督は、ヘッドコーチとしてチームに携わった一昨季は19シーズンぶりに大学選手権準優勝。監督1年目の昨季、頂点に立っている。取材を通して伝わるのは、「1人の人物に異なる立場を経験させる意味」「個性の発露と自分勝手との違い」だった。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――試合の感想を聞かせてください。

「どんな試合でも前半はタイトになるなかリードして、後半はリザーブメンバーが入ってきっちりプレーしてくれた。またひとつ、チームとして成長できたと思います」

――戦前、出場選手にはどんな期待をかけましたか。

「きょうは8名の初紫紺の(初めてファーストジャージィを着る)メンバーがいたなか、ゲームのテーマはユニティ。結束、繋がり、80分間助け合うといったことです。その意味できょうは、プレーが途切れた間に話す、次にどうするかの意思決定をするという部分で成長できたと思います。(これまで控え組でプレーしてきた)藤涼雅、田森海音、遠藤孝一、高(中が目)比良隼輝、武内慎といったメンバーがこういうゲームを経験したことは、チームの財産にもなる」

――対戦した法政大学も、点差を離されながらも食らいつく姿勢は貫いていました。「ファーストジャージィを着た選手に勝つのは見た目以上に簡単ではない」といった、スコアボードには表れない感覚が得られそうです。

「そうなんですよね。それもわかって欲しかったです。きょうはリーダーグループのメンバーでもある辻惇朗がゲームキャプテンをしました。彼はこの前の東海大学戦(5月19日の招待試合)ではリザーブで途中出場し、いいプレーができず、いいリーダーシップも出せなかったんですよね。ただ、大事な選手でもある。きょうみたいなゲームでリーダーの難しさを学んでくれたら。また、自分がリーダーをしていて、途中から入ってくるリザーブメンバーとしっかりコミュニケーションを取ったなか、(リザーブが)チームを元気づけるプレーをしてくれたら(漫然とプレーされる場合とは)違うと感じたと思うんです。では、自分がその立場(リザーブ)になった時にどうすべきか。それを理解してくれたと思います。色々プラスなことは多かったです」

――「ユニティ」がテーマだったと伺いました。ただ一般論として、この時期は個々の選手が「ただ試合に出たい」としか思わなくてもおかしくない時期です。

「その気持ちは大事。ただ、それをどうゲームのなかで(いい形にするか)。自分の評価を上げるには、誰かに助けてもらわないといけないんですよ。結局、チームワークがなかったらいいプレーはできないんです。自分勝手なプレーと自分のしっかりしたプレーは全然、違います。チームのなかで、自分を出していくという意識(が大事)」

 辻にゲームキャプテンを任せた背景には「1人の人物に異なる立場を経験させる意味」を伝える狙いがあったとわかり、自己アピールの過程に関する「チームのなかで、自分を出していくという意識(が大事)」という言葉には、「個性の発露と自分勝手との違い」を感じる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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