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サンウルブズ、スーパーラグビー脱退。会見ほぼ全文読んであなたどう感じます?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:松尾/アフロスポーツ)

 国際リーグのスーパーラグビーを統括するサンザーは、2021年以降の同リーグ大会フォーマットを再考。日本から参戦して代表強化に寄与してきたサンウルブズが、2020年の契約満了を最後に除外されることとなった。

 正式決定後の3月22日、日本ラグビー協会(日本協会)の坂本典幸専務理事とサンウルブズを運営するジャパンエスアール(JSR)の渡瀬裕司CEOが都内で会見した。その詳細を読み、読者の皆様は何をお感じになるだろうか。

 以下、共同会見時の一問一答(編集箇所あり)。

坂本

「サンウルブズの2021年以降のスーパーラグビー参戦有無について、3月20日、サンザーより内示を受け、本日(22日)サンザーから正式な発表がなされた。サンザーからの発表はすでに皆様方のご覧になられている通りです。2021年からは、15チームの3カンファレンス制から、14チームの総当たりに変更する。それに伴い、2020年以降のサンウルブズの参戦はなくなる。サンウルブズを応援していただきましたファン、協賛社、関係者に申し訳ない。いきさつを説明させていただきたいと会見を開かせていただきました」

渡瀬

「今回こういう結果になったのは残念なことだと思っています。これまで多くのファンの方々に支えられました。応援していただいた方々に申し訳ないという気持ちでおります(深く陳謝)」

坂本

「2016年からのスーパーラグビーへの参加契約は2020年シーズンまでで契約満了を迎えます。これには継続の契約はございません。そのためサンザーとの間で新たな契約が必要でした。新たな契約のため昨夏以来、渡瀬を中心にサンザーと交渉をおこなってまいりました。スーパーラグビーの意思決定についてはサンザーという経営母体の理事会で決定します。その理事会はニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの協会幹部で構成されており、残念ながら日本協会は意思決定には関われないのが実態です。

 20年で契約は切れる。21年以降継続は何ら約束されたものではありません。15チームのなか、サンウルブズがきわめて特殊な参加条件で参加してきたとご認識いただく必要がある。2016年参戦においても放映権料収入は一切、受け取っておりません。日本以外のシンガポールでも3試合を行う義務を負っていると、他の14チームとも著しく条件が違う。日本協会としては不利な経済条件のなか、サンウルブズへの経済的支援をいまもおこなっているのがベースでございます。その背景のうえで、2021年以降の参戦継続のお話をさせていただいてきたのですが、サンザーから受け取られた経済的条件は以下の3つのものがございます。

・2021年以降に14チームの総当たりに移行した場合、グローバルでサンザーに入る放映権料が大きく拡大します。もしサンウルブズが21年以降参戦して15チーム3カンファレンス制を維持する場合、本来サンザーが総当たり戦にして得られるであろう放映権料が減る。その増額分をジャパンエスアール、日本協会が負担する。

・地理的に日本だけ離れています。いままでは全ての航空運賃は主催者側が負担していましたが、遠い日本に来る際の相手チームの移動、滞在に関わる費用についても今後、日本が負担をするように。

・以前と変わらず放映権料分配なし。

 これらの条件は不均衡かつ、現在参戦している他のチームとの格差をいっそう助長するものだと考えます。ジャパンエスアール、日本協会は、それらの要求をのむことはできないと結論付けました。サンウルブズは多くのファンに愛され、選手もインターナショナルレベルを経験できる大変貴重な機会であったと思っています。そういう事実を踏まえると、継続させないという結論を出したことは日本のラグビー界にとって残念な事態であると思っています。ただ、いままでご説明した通り、経済的条件が現在の世界のラグビーの現状だと認識したところでございます。

 サンウルブズ、また半年後に迫ったワールドカップ日本大会まで着々と準備をし、そういう選手たちを全面的にバックアップしたいと思っています。世界への挑戦をさらに続けていきたい。

 一方で、パスウェイが大事と言われていますが、ティア2の日本が今後さらに上にのし上がるにはパスウェイをしっかり作る必要があると認識しています。そういうなかで先日、私もダブリンに行きましたが、2019年以降、先手を打って対外的な交渉を始めています。

 代表という枠組みで言いますと、ネーションズ・チャンピオンシップ(※1)開催に向け各ユニオンと会話を続けていることはもちろん、大会の不成立が起こった場合であっても、世界ランキング上位国と安定的にマッチメイクをできるよう、ワールドラグビーと議論を進めていきたい。

 ネーションズ・チャンピオンシップでは、ワールド・カンファレンスに日本とフィジーが入るのは報道される通り。これはサンザーも前向きに検討しているし、その機会を活かしていきたい。

 クラブレベルではトップリーグが発展的に改革を進めるのが鍵。グローバル、コンペティティブにというのが日本代表を押し上げるには重要。今後も各チームと議論をより重ね、大きな改革を重ねたい。引き続きご協力をお願いしたいと思っています」

※1 ネーションズ・チャンピオンシップ=世界各国が「ヨーロッパ・カンファレンス」「ワールド・カンファレンス(南半球主体)」に散り、各カンファレンスの国々が「ディビジョン1~3」とランク分けされる。実現すれば、日本代表は「ワールド・カンファレンス」の「ディビジョン1」でニュージーランド代表などと戦えそう。しかし、昇降格のあるシステムに一部の国が反発していると見られ、実現までのハードルが高い。ちなみに国内報道では正式名称と同義の「ネーションズ選手権」との表記あり。会見中、坂本専務理事は「ネーションズカップ」と表現。

渡瀬

「サンウルブズのCEOとしてサンザーと色々、話してきました。私がサンザーに言ってきたことはサンウルブズというチームがスーパーラグビーでユニークな価値を持つチームであると。さすがに初年度はパフォーマンスが悪く、その後も勝ち星で言えばそこまでではなかったですが、ユニークな、魅力的なアタッキングラグビーもできてきた。何より、他のチームにはない熱狂的なファンがついている。ホームゲームでの雰囲気が素晴らしい。スクラムを組む時は、狼の遠吠えを皆でする。こんなチーム他にないと思うんですよね。そのことを言い続けてきました。

 もうひとつ世界のなかでのラグビーについて。いかにラグビーを普及していくか。我々ラグビー人は自分たちのことだけではなく、ラグビーというスポーツの世界のなかでの立ち位置を、よくしないといけない。そのなかで、アジアでラグビーを普及するうえではサンウルブズが非常に鍵になると。残念ながら放映権のこととかで、我々の思いが通じなかった。

 一番、こういった件でショックを受けているのは選手、スタッフです。私は(チームが遠征中の)シンガポールで選手、スタッフに話をしてきました。我々としては、いままでファンの皆様に恩を返す機会がなかったので、恩を返していこうと。まだ2年間の猶予があるので、ひとつでも勝って恩を返していこうと。選手も後ろを振り返らずゴーフォワードでやると一致団結しています。ぜひ期待していただきたいと思います。今季、来季、残っていますので、ファンの皆様にも、是非いままで通りサンウルブズを応援していただいて、最後まで戦いたいと思っています」

――向こうから提示されたファイナンスについて、日本協会とジャパンエスアールは払うことができない。その結果、除外が決まったということでいいのか。

坂本

「おっしゃる通り、向こうの出した条件をのめないということ。支援をしないということではなく、出された条件をのめないということ」

――補填すべき金額はいくらなのか。

坂本

「秘密契約を結んで話をしていますので、答えることはできません(※2)」

※2 国内報道では約10億円と伝えられている。

――では、その「額」は日本協会、ジャパンエスアールにとっても払えない金額なのか。

坂本

「経済的合理性、他の強化を考えると負担できる金額ではないと判断しました」

――約半年後にワールドカップ日本大会がある。このタイミングでこの発表に至ったのはなぜか。

坂本

「特にこの時期にやられたのは我々の(範疇ではない)。サンザー側が去年から計画していて、想像するに、放映権の契約等、色々なことがあり、この時期を選んだのだと思います。我々としてはワールドカップ前に水を差すことはして欲しくないと随分言ってまいりましたけど、海外で報道があったように、色々な諸事情があってのことだと想像しています」

――サンザーの発表には、「2021年以降、日本がサンウルブズに財政支援をしないと伝えられていて、それが除外の理由になった」とありましたが。

坂本

「財政支援とは、いま言ったような、そういう(新たに)要求されたものに対して支援ができないと言ったわけで。いままでも支援をしてきたわけです。財政的にも色々なものについても支援をしてきた。そういうものを止めると言ったわけではなく、新たなオントップの要求に対してできませんと言ったのが、先方からのリリースになったのだと思います」

――サンウルブズは2021年以降、どうなりますか。存続させるのか。

渡瀬

「まだ何も考えていません。検討できていない。とにかく先般、言われたばかりでして。とにかく今週も試合がある。そこに注力しつつ今後を検討していく」

――2021年以降の代表強化策については。

坂本

「サンウルブズは代表強化のためのひとつの手段だった。その手段がなくなるとわかったわけですから、成立するかわかりませんが、ネーションズ・チャンピオンシップをはじめいくつもの選択肢があると思います。特にトップリーグはグローバル化してきている。トップリーグが認められたので我々はプロフェッショナルラグビー委員会に入ったわけですから、そういう意味ではそういうものをよりグローバル化しつつ、折角ここまでやってきたアジア、パシフィックの国々、アメリカ、カナダと一緒になって色々とやっていきたい」

――サンザーのリリースのなかでは、アジア太平洋での新リーグにサンウルブズが加入するよう提案されているようですが。

坂本

「あくまでそこに書いてあるのは、サンザーとしてお考えになっていることだと思います。我々が申し上げたのは別。今回もダブリンでいくつかの国と話をしていきましたが、我々として模索して色々なことをやっていく。言葉は重なっているが別なことです」

――森喜朗名誉会長は、著書でサンウルブズの設立に反対と書いている。この意向は、サンザーと交渉する日本協会に対して何らかの影響があったのでは。

坂本

「全くないと思っています」

――それは、どういう理由で「ない」と。

坂本

「いや、まったくないと言うのは、森名誉会長は本のなかでお書きになっているかもしれませんけれども、それがサンザーとの交渉に影響するということはないと思います」

――3月上旬、サンザー側は「日本協会は、『スーパーラグビーが代表強化のベストなパスウェイではない』と決定している」。ところが坂本専務理事は13日、「今後も(サンウルブズを)継続できるよう交渉していく」と話しています。

坂本 

「もう一度仰ってください」

――3月上旬、サンザー側に対して日本協会が「(スーパーラグビーが)代表強化のベストなパスウェイではない」と決定したとしている、とリリースに書かれていた。それに対して13日、坂本専務理事は「今後も(サンウルブズを)継続できるよう交渉していく」と話しています。

坂本

「ベストの道というのは、それが一番の道かどうかという意味で、一番ではないと申し上げた。その道を閉ざすと言ったわけではない。色んな選択肢があるなかで(スーパーラグビーが)ベストの道ではない、いっぱい選択肢があるなかでと申し上げた。それで『(13日、スーパーラグビー参戦を)継続するか(したいか)』と聞かれて、『継続します(したいです)』と答えた。矛盾はないです」

――13日、坂本専務理事は「代表強化に向けてベストの道だから継続したい」と話していたと思いますが。ただサンザー側には「ベストの道ではない(と捉えている)」と伝わっています。

(途中、関係者が坂本専務理事のもとへ1枚の資料を用意)

坂本

「ちょっと、はっきりはあれですけど、そういうようなことではないと思います。ベストの道…というのは、向こうが言っている文書ですよね。それはちょっと誤解があると思いますね。財政についてという意味。抜けてますよ。『代表強化のための最善のパスウェイではない』というのは、『お金のことを考えると最善のパスウェイではない』(という意味です)。私のコメントではなく、アンディ(・マリノス=サンザーCEO)のコメントですよね。私はパスウェイという言葉をあえて使いましたけども、そういうお金(冒頭で語った新たな参加費)を使ってそこ(スーパーラグビー)に残ることが最大のパスウェイではないと話しましたけど、そこの部分を取って(金銭面に関する見解を省いた結果)、そういう文章になった(のではないか)。全然、矛盾していない」

――冒頭で「サンザーで意思決定権がない」という旨で話していましたが、サンザーへ出資をすれば、同じレベルで発言権を持てたのではないか。

坂本

「逆に出資をしろというようなことは言われていません。今後そういう話が出てくるかもしれませんし、我々はいま不平等だと言っておりますので、その不平等だということに対し、先方から『出資』という言葉が出てくるかもしれませんし、『こういうことはどうだ』ということが言われてくるかもしれない。それは検討の余地はある」

――日本協会側からサンザーへの出資を提案したことは。

坂本

「出資をすると言ったことはありません。皆様方ご存知のように、当初は『18チームでスーパーラグビーをやります。南アのカンファレンスに空きがあります。手を挙げますか』というところから始まった。あくまで募集している球団に手を挙げた。それが5年間の話で変わってきたわけです。もともと18チームで5年間やると言っていたのに、もうすでに途中で3チームなくなっているわけですよね(2017年を最後にキングス、チーターズ、ウェスタン・フォースが除外)。そういうなかでサンザーというそのものの組織がどうかというところで、色々な議論がありますけれど、出資はどうかという提案を受けたことは…(聞き取り不可)」

――削減を予防すべく、日本協会から戦略的に出資を持ちかけるという発想はなかったのか。

坂本

「それはあるかもしれません。色々なやり方があろうかと思います。それは継続的に話していきましょう、ということは、そういうこともあろうかと思います。今回は、スーパーラグビーに2021年から参戦しない、というわけで、サンザーと我々が会話をしないというわけではない。ユニオン対ユニオンでも議論をしているわけですから、サンザーに属している国とも議論をしている。そういうことは続いてくと思います」

――日本協会から出資の提案はしていない。

坂本

「我々から申し上げたことはない」

――今回、金額提示されたのはいつか。また、ジャパンエスアールはその金額を工面する努力をしたか。またはその時間はあったのか。あまりにも不利な条件だったので最初から突っぱねた、ということなのか。

渡瀬

「正直、そんなに以前から言われていたことではないというのがひとつ。それと…」

――待ってください。それはいつ頃ですか。もし数週間前に言われたのであれば、常識的に動くことは難しいと理解できますが。

渡瀬

「正式にそれが確認できたのは数週間前です。そういうなかで確かにそうですけど、ただでさえ色々とスポンサーを募るのは、いままでも色々なご協賛をいただきながらやってきていますが、それ(増額)も難しいことなんだろうと思っていますし、そういったなかでの判断だと思います」

――シンガポールでの試合開催を負担のひとつとして挙げていますが、それはそもそも日本側がスーパーラグビー参戦権を勝ち取るまでの過程で「同じく立候補していたシンガポールのスタジアムでも試合をする」と提案した結果なのでは。これを「不利」と指摘するのはおかしい。

坂本

「シンガポールでももっと集客もあり、色々と協力を得られるというのでおこなったのですが、実際にシンガポールでやってみると、動員、グラウンドと色んな意味で経験をしてきたなかで、結果として、うまくいかなかったと申し上げた。もともとアジアに広めるのも大きな目標でしたし、アジア経済圏にスーパーラグビーを含めたラグビーを浸透させようとしていた。ワールドカップに向け、アジアをキーワードにしていましたから。ただ、なかなかそういう経済的事情でいうことについては実を結ばなかったとご理解いただければ」

――サンウルブズがスーパーラグビー入りを決めたのは、実際にチームを発足させるより1年半前。そう考えると、2021年のことを決めるのはいまの時期になることは想定できた。それまでの間、日本協会が出資金を出していないこと、それまで放映権料をもらっていなかった。そのなかでサンザー側と契約を更新するには、アジアで新しいマーケットを生めるかどうかが重要だったはず。新しいマーケットの可能性は示せなかったのか。

渡瀬

「いままでの3年間でアジアでの広がりは示せたかというご質問ですか」

――経済的な側面で。そうでなければ、サンザーは判断できない。

渡瀬

「経済的というところまではなかなか出なかった。ただ、もともとスーパーラグビーがアジアのなかったところ、昨年は香港で試合をした。そういう意味ではアジアのなかでの広がりは出てきたと思います。あと、これはやってみるとわかりますが、そう簡単に経済的メリットは取れません。本当に。日本の興行だって苦しいですから、本当に大変です。長く、地道にやっていかないといけないことだと勉強したし、まだまだ続けてやっていくべきだと勉強しました」

――本当に参加継続を希望しているのなら、5年間かけて継続のための努力をしてきたはず。具体的にどんなことをしたのか。

渡瀬

「思い起こして欲しいのは18チームが15チームになる時、あれは私がCEOになってすぐのことで、サンウルブズが外されるんじゃないかということで、一生懸命、日本の試合の状況、観客、パフォーマンス…勝たないとだめだったので。何とか最後ブルーズに勝って結果がついて生き延びたのが現状。まずは勝たないといけなかった。『コンペティティブネス』とは、ずっと言われてきましたから。今回サンザーのメディアリリースでは言われていませんが、サンザーはずっと『強くないとだめだ』と言ってきています。昨季は結果的に3勝しましたが、『もっと勝たないと』と。高い競争力を保ったリーグだからこそ世界で…という彼らの論点。そこに追いつくために必死にやって来たのは事実。パフォーマンスは短期間でかなり改善できた。それ以外では、単なる集客ではなく、会場の雰囲気作り。毎年、サンザーの幹部には試合を見に来てもらっていますけど、そういった努力はしています」

――参戦決定時と現在では、日本協会での交渉役が変わっている(※3)。引継ぎはどうだったか。サンザーとの交渉はできていたのか。日本協会に足りないところもあったのでは。

※3=日本のスーパーラグビー参戦を決めた当時の日本協会専務理事は矢部達三氏。後に日本協会副会長となるも2016年3月31日付で同職退任。

渡瀬

「そういう意味では、私は後から来た身ではありましたが(正式にジャパンエスアール入りしたのは2016年。CEO代理、CEOを歴任)、不平等を巻き返すのに必死でした。かなり巻き返しはできたし、連絡は密になった。そのひとつは、シンガポール(での試合)はひとつこちら(東京開催)に持ってこられた。そういうのはひとつひとつやらないといけなかった。ひとつわかっておいていただきたいのは、サンザーは4つの協会によってできていますから、一枚岩じゃないってこと。サンザーでは、皆が違った意向を持っている組織だから、なかなかやりにくいところがあった。それは改めて感じていましたし、それがやってきた者としての実感です。ただ決して何も改善していないわけではない。ダイレクトな話が彼らとできるようになった」

坂本

「アンディからのコメントにもあった通り、会話してきたからこそ『今後も継続的に』という話が出てきている。今回も、サンウルブズ参戦について折り合いがつかなかったというだけ。(会見中)3月上旬にという話が出ましたが、2月にも会議を持ったり、渡瀬さんが海外に飛んだり、色々なところで話したりと、直接会話の機会を持ってきました。サンザーだけではなく、各ユニオンとも直接の話をしながら踏み込んでいけると思います」

――サンザーでは、南アフリカがサンウルブズ参加継続に難色を示していたとされます。そのひとつの要因として、「2023年のワールドカップ開催地を選ぶ際、日本協会は立候補していた南アフリカにではなくフランスに投票した」ことがあるとされる。なぜ、ここまで南アフリカに嫌われているのか。

坂本

「もともとスーパーラグビーに入る時、最初に交渉した相手がマーク・アレキサンダーさん。ワールドラグビーの理事を務められている方で、私も長く付き合っていますけど、一緒に会っている時に関係が悪いわけではない。ただ、色々なことを振り返ると、いま仰られたように、日本でのワールドカップ開催が決まり、(建設予定だった)国立競技場でやると発表した2日後に国立競技場(で開催できる可能性)がなくなった。その後、ワールドカップがロンドンで開催され、その時に『南アフリカが日本の代わりに(2019年のワールドカップを)やります』というようなことがあり、キーのところで南アフリカと日本が出てきた。その大会でも初戦で南アフリカに日本が勝ったということもあって。

 南アフリカが日本を敵視しているわけではないと思います。いま、トップリーグで南アフリカのスタッフ、コーチは40人くらい来ているんです。ある意味、協力関係。南アフリカが代表チームを作る時、リリースしているから試合もできる。そういうところではwin-win。色々なところですべてコンフリクトを起こしているわけではない。現実的に(今年9月に)壮行試合を南アフリカとやるわけですから、色々な意味で色々な駆け引きをしているところがあってそういうところが出るところもありますが、手を繋いでいるところもあります」

渡瀬

「お互いに誠意を持って。白か黒かじゃないと思うんですよ、人間関係も。海外の人と付き合うって、そう。海外のそういうところとビジネスでやり合ったことで言えば、スーパーラグビーで勉強になったことがある。日本の財産として残さないといけない。普段、お酒を飲んでいる時とビジネスの時では違います。人は。そういうところで海外とやり合えるよう、もっともっと勉強してパワーアップしないといけない。経験を糧にしないといけない」

――サンウルブズが作った新しいファンの受け皿について、日本協会はどう考えるか。

坂本

「新しいファンができていると思います。現実的にあと1年半続くわけですから、そのなかでさらにファンになっていただくと同時に、サンウルブズに代わる新しい日本のラグビーの形を作って、それでファンの方たちが逃げていくのではなく、さらに入っていただくことをしっかり考えなきゃいけない。代表の試合をいかにやっていくか。いままでと違う枠組みも考えられているので、そういうのをマージ(融合、併合などの意味)しながらやっていきたい」

――2020年のスーパーラグビーとトップリーグは同時期におこなわれる。選手はどう割り振る予定だったか。普通に考えたら難しかったのでは。

(坂本専務理事への質問だったが、渡瀬CEOがマイクを取る)

渡瀬

「総論で考えるとそうですが、各論で考えて各トップリーグチームと話すと決してそうではない。サンウルブズの海外でのチャレンジは素晴らしいと思ってもらっていますし、どうやったら共存できるかを考えましょう、となっていた。例えば3試合スーパーラグビーでやって1週休んで3試合国内…とか。時期が重なったからそりゃ無理よというのはおかしいと話してきました。これまでもそういう話をしてきましたし、特に来年は本当にいいチーム作っていいシーズンにしたいと思っている」

坂本

「そういう話し合いを渡瀬さんとして、ああいう形にしたわけですから。一心同体でやっている。どういう形でやるかというのは、サンウルブズだけでやる選手もいるでしょうし、色々な選手が色々な選択肢を選ぶと思います」

――残された2年。他のプロフェッショナルリーグへ参加するか、新たなリーグを作るかなど、サンウルブズの継続に向けて。

渡瀬

「そこは検討しなきゃいけない。いままでは日本代表強化のため(の組織)でしたし、日本協会と一緒に考えないといけないし、トップリーグとの兼ね合いもあります」

――2021年以降もサンウルブズを残したいのか。アメリカのリーグやグローバルラピッドラグビー(※4)への参戦も期待されそうですが。

※4グローバルラピッドラグビー=オーストラリアの鉱山富豪、アンドリュー・フォレストが開催する国際大会。スーパーラグビーをはじかれたウェスタン・フォースなどが参加。

渡瀬

「一個人では残したいと思っているし、ファンの方もそう思っていると思います。ただそれは感情的には発し得ない。ラピッドラグビーについても我々も知らない部分もある。それと、日本代表強化のためじゃないチームになると整理が難しいと思うんです。色々と坂本さんと話をしながらやっていかなければいけない」

――サンザーからの提示された条件について。「移動費」は相手チームの分も持つ、ということか。

坂本

「全て。日本が一番遠いので。いままでは向こう側が持っていたのですが、(定められているであろうエリア)圏外の差額については、日本チームが持つ。向こうでやる場合の宿泊費は、もともとこちら持ち。それは変わらない」

――日本協会は、2021年以降もサンウルブズを残したいか。

坂本

「日本代表の強化に寄与するのであればそういう風になると思います。どういう形で残すかは世界の動きのなかでどう動かしていけばいいのか、1年半の間、日本協会の中でも議論する。日本が強くなるためのパスウェイだと思っていますので、また、ファンの方にもそう見えるようにしなければならないと思います」

――ファンは除外を残念がっている。そして除外の理由は経済面。金額を発表しないのでは、ファンの理解は得られないのでは。

坂本

「契約でお約束なので。おおもとのサンザー側が言えば別ですけど、我々は条件を出された側なので、言うことはできないです」

――提示された条件で一番困ったもの、予想外だったもの。

坂本

「放送権料がないのはもともとの条件でしたから不平等条約とはいえ、協会、スポンサーとして支援すると。ただ、放送権料で(本来)彼らが得られる(はずとされた)もの(積み増し分)を用意しろというのは」

渡瀬

「どちらかというと、条件を出すのに苦労した。相手がなかなかそれを言ってこなかった。結局、何を聞いてもパフォーマンスについて言われていたから、パフォーマンスに集中していたのですが…。私自身、チームが強くなれば残れると思っていましたから」

――その結果出てきた条件が、思いのほか厳しかった。

渡瀬

「個人的にはそう思います。…関係ないですけど、先日のレッズ戦(ホームゲーム)。去年のレッズ戦の映像が流れていて、勝った時に少年ラガーマンが泣いているシーンがありました。ああいうのを見ると、あの子は将来サンウルブズでやりたいと思ったかもしれないので、なくなっちゃうのは残念で申し訳ない」

 サンザーへの恨み節とも取れる発言を繰り返していた坂本専務理事の表情はあまり変わらず、金銭面よりも強化面について発言した渡瀬CEOは自身の発言時以外では何度か顔をしかめていた。今後も引き続き、この件の分析記事を紹介する。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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