Yahoo!ニュース

日本代表リーチマイケルキャプテン、オールブラックスとの「差」を語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
イングランド代表戦でも華麗なトライを決める。(写真:ロイター/アフロ)

 ラグビー日本代表のリーチ マイケルキャプテンが12月中旬、都内で取材に応じている。

 

 15歳で来日して札幌山の手高校、東海大学を経て現在は東芝でプレー。2008年から日本代表入りし、ワールドカップには2大会連続で出場中だ。南アフリカ代表などから3勝した前回のイングランド大会では、キャプテンを務めている。

 この日は、2019年のワールドカップ日本大会に向けた共同取材を実施。本稿では、2018年の日本代表の活動などについての談話を紹介する。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――2018年の日本代表活動で大変だった部分。

「(間を置いて)今年は割と、スムーズにやってきました。2015年が大変だったのですが、その時といまを比べたらそんなに大変ではないです」

――代表のツアー中は、共用スペースに鎧や刀を置いています。意味と効果は。

「自分たちのチームが目指すものとして作っています。名前も『勝元』とつけた。映画『ラストサムライ』で最後まで戦ったサムライです。その人を理想の人間としています。彼を目指してチームを作っていく。そのなかでも日本の文化、サムライの文化をチームに入れています。どう刀を持って、磨いていたか、刀を出す時に何を意識していたか…。それをラグビーに置き換えてやっています」

――例えば今年11月は何を。

「刀を抜く時は人を殺す覚悟(を持つ)。これをブレイクダウン(ボール争奪局面)にタイアップさせています」

――前回大会時、リーチさんは日本代表に「厳しさが足りない」と指摘。現在、それは改善されたか。

「2015年以降は、『気にするな』とかいうマインドはなくなっています。チームのスタンダードが上っています。2015年にあったような課題はいま、チーム内にもないです。いまのチーム内の課題は、お互いにどれだけ厳しくできるかだと思います。お互いにだめなプレー、できていないところをフィードバックし合うチームにしないといけない。いまはどちらかというと、コーチに言われている。言われないようにするよう、指摘し合う。それでもうひとつ、チームのレベルは上がります。

 今年11月のツアーではかなり成長できました。同月上旬にニュージーランド代表(オールブラックス)を相手にブレイクダウン(ボール争奪局面)でやられてから、『ジェイミーたちに言われる前に、俺らで言い合いましょう』と。それで結構、よくなっていました」

――2015年の経験、得られた財産はどう受け継がれている。

「勝つための準備。それが鍵になっています。そのノウハウをそのままいまの代表に移ってきました。(試合までの)1週間のなかでの準備。何を大事にしないといけないか、コーチの言われたことをディテールまで積み上げて、どう試合に出すか。その大切さは、前回の大会から続いています。戦術面では、ボールを持ってのアタック。それもいまの代表のプラスになっています。いまの日本代表ではキックが多いですが、その割合は試合中の判断で変えなきゃいけないところがあって。ボールを持って攻め続ける能力をこれから入れなきゃいけないと思います。2015年のスタイル。蹴らずにずっとアタック、アタック、アタック…」

――それはジョセフヘッドコーチやトニー・ブラウンアタックコーチとも話しているのか。

「はい」

――そのモデルチェンジが必要と感じたのはなぜ。

「80分を通して、勝っているか、負けているか、相手がどんなディフェンスをしているか(によって)オプションを増やさなきゃいけない。いまは蹴ってカオスの状態を作るのがひとつ。あとは、ボールを持ってアタックしなきゃいけない時もある。もうひとつオプションがあるのはいいと思います。前回イタリア代表に負けた試合でも、蹴らずにアタックしようとなってからもいいアタックができてきた。あともうひとついいパスがあったらトライになっていた…(という場面もあった)」

――11月のイングランド代表戦でも…。

「イングランド代表戦も蹴りすぎたという反省がありましたね」

――前回大会と違って、コーチ陣にワールドカップ経験者がいません。カバーしたいところは。

「(ワールドカップ)経験者の経験が、活きています。ただ2016、2017年ころに比べて経験値は減ったけど、いいグループができています。スタンダードが上がってきている」

――12月中旬発表のラグビーワールドカップトレーニングスコッドおよびナショナルデベロップメントスコッドから、2015年組の立川理道選手、真壁伸弥選手が落選しています。

「ワールドカップを経験した人は確かに減ってきていて。僕ら経験した選手には、経験していない選手に(本番に向けた注意点などを)言わないといけないという仕事があります、それは前回からやってきています。ハル(立川)と真壁に関しては、僕も寂しい気持ちがあります。2人ともとてもリスペクトしている選手だし、代表のために200パーセント(身体を)張り続けた2人です。今回名前がないのは寂しいですけど、まだ戻って来るチャンスはあると思います」

――「トランジション(攻守の切り替え)を世界一に」が目標。達成されたか。

「あと少しです。まだ足りないです。上に行けば行くほど、その大事さはわかってきます。できてないわけではないですが。動き出しの速さって、トレーニングでも(作れ)ない。いくらフィットネスがあっても、(普段から)『動き出しを速く』と考えていないとそうはできないです。いまの課題です。動き出しの速さ。オールブラックスはひとつひとつのミスのあとの動き出しが速かった。日本は2~3歩、遅れています。そこを世界一にしないといけない」

――そのためには何をすべきか。

「予測。ボールが落ちるだろうな、と、いう時には動いていないといけない。目で追っているのでは遅い」

――2019年の上半期はラグビーワールドカップトレーニングスコッドやナショナルデベロップメントスコッドと呼ばれる代表候補メンバーが合宿や遠征を実施。一部はの兄弟チームであるサンウルブズに加わり、国際リーグのスーパーラグビーで戦います。例えばサンウルブズでの活動をどうワールドカップに繋げたいですか。

「そのトランジションのところ、タックルした後の立ち上がりを大事にしたい。その2点を絶対、ワールドスタンダードにしないといけないから。それを(代表とサンウルブズで)ひとつのスタンダードにしてやっていきたい。そのためには厳しい練習をして、厳しくレビューをしないと」

 次回掲載記事ではオフの過ごし方、ワールドカップイヤーの活動、本番への展望などに関する談話を紹介する。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事