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早稲田大学が慶應義塾大学相手に乗り越えた「怖さ」とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
佐々木(写真左)が逆転トライ。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 今季創部100周年を迎える早稲田大学ラグビー部は12月22日、大学選手権での5大会ぶりの4強入りを果たした。東京・秩父宮ラグビー場で慶應義塾大学とおこなった準々決勝で20-19と辛勝。終盤は度重なるミスでチャンスを逃しながら、後半ロスタイムに逆転した。

 後半38分ごろに敵陣中盤左でのラインアウトをノットストレート(球をまっすぐ投げ入れない反則)で失いながら、直後の相手ボールスクラムで慶應義塾大学がコラプシング(塊を故意に崩す反則)を取られる。以後は早稲田大学が敵陣ゴール前左のラインアウトから攻め続け、最後はウイングの佐々木尚が持ち場とは逆の右隅に回り込んでトライを決めた。

 1月2日の準決勝では昨季準優勝の明治大学と激突。史上最多記録を伸ばす16回の大学日本一を目指す。

 試合後、相良南海夫監督、途中出場した佐藤真吾キャプテンが会見した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

相良

「とにかく一言だけ。勝ち切れた。勝てたことが全てだと思います。ありがとうござました」

佐藤

「えー…。正直、早稲田大学の内容としてはあまりよくなかったのですけど、最後に勝ち切れたところがよかった。課題はたくさん見つかったので、まだまだしっかりやっていかなきゃいけない。気持ちとしては、嬉しいというよりもほっとしました」

――ビハインドを背負って終盤を迎えた時は。

佐藤

「多分、僕が入った時はビハインドを背負っていた。(試合終了後のロッカールームで)皆も喋っていたのは、『非常に怖かった』と。ゴール前であのような練習もしてこなかったですし。でも、最後に粘り強く勝てたというのは、今年のチームの強みでもあるのかなと思いました」

相良

「僕は、最後、ホーンが鳴るまで勝つことを信じ、選手を信じて観ていました。キャプテンは『怖かった』と言いましたけど、今週は選手の方から場面ごとのシチュエーションを作った練習をして欲しいという話があって。残り数分でビハインドを背負った状態でのアタックディフェンスという想定練習もしていました。それがよかったのかどうかはわかりませんが、最後に(トライを)獲りきる意識(が出た)。選手が絶対に勝つという信念を持った結果がこういうことに繋がったのかなと思っています。

 ただ、慶応さんがここ4年間(早稲田大学に)勝っていないとか、この間(11月23日の対抗戦での試合)も負けたということを考えると、相当な気持ちの入れようでくることは想定できました。また、慶応高校のメンバーとして花園(全国高校ラグビー大会)に出ているメンバーが多い。しぶとさ、執念があるという怖さはあった。厳しいゲームになると思ったなか、本当に厳しいゲームになった。勝った選手たちは…すごいなと思います」

――課題は。

相良

「我々が何を強みにしているか。ディフェンスです。ただ前半20分までは何となくふわっとディフェンスしていたというか、アグレッシブさが足りていなくて前に出られていなかった。あと、何はさておき簡単なミスが多すぎた。確かに(相手の)プレッシャーはあったと思うんですけど、『ここを獲れば』というところでの大事な局面での大事なミスが多かったので。懸念していたのは、ここ3週間、ゲームライクな練習ができていなかったこと。それが試合に出てしまったと思います」

――決勝トライを決めた佐々木選手について。

相良

「練習でのパフォーマンスが上がっていた。もともとディフェンスで課題があったのですが、早慶戦、早明戦もリザーブから投入されたところで流れを変えるディフェンスをしてくれていた。そして今回は頭から。また彼は高校時代、慶応に負けて終わっています(桐蔭学園の一員として全国大会神奈川県予選決勝で敗退)。その思いに賭けたというのはありました。(左ウイングは)古賀由教か、佐々木かというところでしたが、4年生・佐々木の思いと彼のパフォーマンスが起用の理由です」

佐藤

「佐々木が久しぶりに先発した。彼は前の試合で途中から入ってもいいパフォーマンスをしていた。信頼はありました。試合中に脳震盪のような形になりましたけど、80分、身体を張ってくれた。誇りに思います。彼は部内イチ、ストイックな選手。ラグビーにおいては一番、ストイックな選手だと認識しています。

 毎日の3食以外のものも含め食事に気を遣っていたり、試合のメンバーはおとといからウェイトはないんですけど、彼は今日も朝6時半に起きてやっていたり、自分だけのメニューを足に装着して筋トレしたり、練習後のウェイトは必ず色んな部位をしていたり。他の人から見ても凄すぎるという声が上がるくらい、ストイックな選手です」

――明治大学戦へ。

相良

「2日まで間がある。一度、死んだ身という立場。自分たちができることをやって、どれだけ成長して明大にぶつかれるかに尽きます。久しぶりの正月なので、自分らの力を出し切りたいと思います」

佐藤

「自分たちがやって来たことをただやるだけなのですけど、最近、試合の入りが悪いことを意識してやらないと次の選手権もそこで…ということもある。あとは、明大さんはセットプレーが強い。きょう、うちのセットプレーは安定しないところもあった。まだまだこだわり続けられる部分はたくさんあると思うので、さらにここからこだわり続けたいと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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