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2019年も注目。ワラビーズのイズラエル・フォラウ、来日中に見せた美技。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
大きくて速くて強い(写真:アフロ)

 10月27日に神奈川・日産スタジアムでおこなわれたブレディスローカップ第3戦で、オーストラリア代表ワラビーズはニュージーランド代表オールブラックスに20―37で敗れた。今季の同シリーズを0勝3敗としてしまう。

 もっとも負けた側も、随所にハイパフォーマンスを披露する。そのうちのひとつが、トライに繋がるループだった。アウトサイドセンターのイズラエル・フォラウが絡んでいた。

 3―17とワラビーズが14点差を追っていた前半39分。ウイングのセファ・ナイヴァルがトライを決めるまでの過程でのことだ。

 敵陣中盤右のラインアウトから攻撃を展開するワラビーズはまず、右から左に展開。ここからスタンドオフのバーナード・フォーリーが、右サイドにキックパスを通す。それを捕球したフォラウがオフロードパスをつなぐなどし、ワラビーズは22メートル線を突破。その後、フォラウはしばらく右端で待つも、自身の手前で味方が前進するのを見て左大外へ移る。

 そして6フェーズ目だ。フォーリーがゴール前左中間のフォラウにパス。ボールを受け取ったフォラウが球の出た方向へ一気に切れ込み、2人の防御を引き付ける。さらに自身の外側に回っていたフォーリーにパス。ループ完成だ。

 その後はフォーリーが左大外にいたWTBのマリカ・コロイベッテに山なりのボールを投げる。ここからチームはダイレクトプレーを重ね、ゴールラインの手前まで進む。最後は左端のナイヴァルがとどめを刺すなどし、10―17と点差を詰めるのだった。

 試合後のフォーリーは、例のループを当事者の目線で振り返る。

「ディフェンスが我々に向かって来ていた。さらに10番のフォーリーが左へ回り込んでいた。外にスペースがあると思い内に切り、彼にパスをしたという形です」 

 パスをした選手がその方向へ回り込んで再びボールをもらうループというプレーでは、当該の選手へボールを渡すリンク役の動きが重要となる。ここではフォラウがいかに防御を引き寄せるかが肝だったのだが、持ち前の大きなフットワークでフォーリーに十分なスペースを与えていた。

 身長193センチ、体重103キロ。最後尾のフルバックを本職としながら、この日はアウトサイドセンターに入っていた。チャンスメーカーとしての動きが重視されるなか、課されたタスクを遂行した。後半36分には自らもフィニッシュを決めた。

 国際的選手だ。置かれた立場を前向きに解釈する力を、身に付けていた。

「チームからは3つのポジションを任されています。フルバック、ウイング、そしてセンターです。それぞれチーム内での役割が異なります。きょうは13番(アウトサイドセンター)。フロントラインに入るので、ボールの奪い合いにもより加わっていく。逆にフルバックだとスペースのあるところでプレーする。両方のポジションに異なる楽しさがある」

 17歳で13人制のラグビーリーグでプロ選手となり、18歳で同オーストラリア代表入り。2011年からの2年間は、18人制のオージールールで激しさを身に付けた。2013年に転向した15人制でも、国際的選手となった。

 ランニングスキルの高さに加え、「しっかりとボールを捕り、チームのいいポジションを獲得するのが大事だと思っています」と空中戦での強さも誇る。

 現在29歳。2015年にはワラビーズの一員として、ワールドカップイングランド大会に出場。来年の日本大会でも注目されそうだ。今度のブレディスローカップの会場ではその日本大会の決勝も開催されるとあり、「試合までの1週間のなかでそういうイメージを持っていました」と語った。

「自分たちにとってはいい機会だった。サポーターの方たちが本当にいい雰囲気を作ってくれていました。素晴らしいスタジアムでオールブラックスと試合をする機会が与えられて嬉しかった。来年、戻ってくるのを楽しみにしています」

 今度の滞在では、日本の辛口ラーメンも堪能したという。「週の頭には、(首脳陣から)ラーメンを食べすぎないようにとお達しがあったのですが」と笑い、スタジアムを後にした。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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