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日本代表入り後実質初の落選。立川理道が心境明かす。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
6月はジョージア代表戦に先発。(写真:アフロ)

 ワールドカップの日本大会を来年に控えるラグビー日本代表は、今秋、ニュージーランド代表やイングランド代表などと戦う。

 10月1日にはツアー参加メンバー35人が発表されたが、ここで注目されたのは立川理道の落選だ。過去55キャップ取得で現体制下でのキャプテン経験もある立川が選外となったことは、記者、ファンの間で反響を呼んだ。

 国内トップリーグのクボタでキャプテンを務める立川は、身長180センチ、体重95キロの28歳。天理大学卒業後の2012年春にエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチに抜擢されて日本代表入り。以後は主力に定着し、2015年のワールドカップイングランド大会では歴史的3勝を挙げた。

 ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは今回、「彼には個別にフィードバックをしています。彼のことを選手としてリスペクトしますし、今回の決断は苦渋の判断です」「彼は現状、(国内所属先のクボタやスーパーラグビーに在籍するサンウルブズで)10番(スタンドオフ)でプレーしていますが、私たちは彼を12番(インサイドセンター)として見ています。12番に求められるフィジカル、ディフェンスのキーエリアが不足していると伝えました」と発表しているが、本人の思いは。10月某日、千葉県船橋市内の本拠地グラウンドで単独取材に応じた。

 以下、単独取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――今度の選考結果は、どのタイミングでお知りになりましたか。

「(会見の)前日、ですね。ミーティングをして、話をして、という感じです。ジェイミーからは前日です(に話があった)けど、合宿(9月下旬の候補キャンプ)の時からブラウニー(トニー・ブラウンアタックコーチ)のフィードバックはもらっていました」

――どう受け止めましたか。

「言っていることは間違ってないと思います。そこを改善すればまた戻れると思っていますし、戻れるというか、戻らなきゃいけないという気持ちもあります」

――公式の説明では、首脳陣に出された課題は「フィジカル、ディフェンスのキーエリア」となっています。間違いありませんか。

「そうですね、はい。フィットネステストの数値も自分としてのコンディションもよかったのですけど、そういうところの問題というよりは、代表が12番に求めるスキルセットをもっと高く設定している、とは言われました」

――立川選手は飛び出す防御の裏側へのカバーなど、数値に表れぬ独自の強みをお持ちです。

「ただ…何と言うんですかね、それだけではなかなかというところもありますし、ディフェンスの部分でもタックルカウント(回数)ではなく、相手をドミネートする(向こう側へ倒す)タックルなど、そういうところでのフィジカルをもっと高めていって欲しいという話もあったので。そこを改善していくだけだと思います」

――ジョセフら代表首脳は「12番として見ている」なか、クボタでは10番(スタンドオフ)を任されています。

「そのなかでもできることはいっぱいあると思います。10番だからと言って12番と違ったディフェンスをするわけでもないですし、ドミネートする回数も変わらない。トップリーグで10番をやるにせよ、12番をやるにせよ、しっかりとアピールすれば問題ないと思っています」

――これから10、11月はどう過ごしたいですか。

「1試合、1試合、言われたところを頭に入れながらやっていきたいと思います。僕としてはそこをアピールするだけなので、そんなに難しいことじゃないです」

――何らかの数値目標を掲げていたり、トレーニング内容を変えたりといったことはありますか。

「個人練習としてタックル、ウェイトトレーニングは取り組まなきゃいけないポイント。取り組める時間がありますし、チーム練習とは別に個人として取り組んでいきたいです」

――2012年から日本代表に呼ばれ続けてきたなか、怪我や調整、若手組への不参加以外の理由で代表ツアースコッドに名を連ねないのは今回が初めてではないでしょうか。

「(ワールドカップの日本大会から)1年を切っていますし、焦りもあります。いろんな人たちの期待もあると思うので、しっかりとそこに応えられるように、いまは自分がやれることをしっかりやってアピールする。コミュニケーションを取っていきながらやっていくことも大事だと思います。いまは、置かれている立場で一生懸命やるのが一番。選ばれる人もいれば落ちる人もいますし、僕はそういうこと(落選)が今回初めてだったんですけど、選ばれた選手はしっかりとパフォーマンスを出して欲しいと思っています。日本代表は今、いい流れで来ていると思うので、そこをつなげていけるように。自分も、そこへ戻っていけるように毎日、毎日、ちょっとずつでもやっていくしかないのかなと」

――それにしても、まさか、とは思いませんでしたか。

「そうですね。ミーティングに呼ばれた時には、僕自身、(話の内容に)気づきましたけど。まぁ、今回のテストマッチはビッグマッチが多いので、それに出れない悔しさはもちろんありますけど、自分自身が成長できるひとつのポイントだと思います。何か理由があると思うのでそこを自分自身でクリアしていって、また強くなっていきたいなと思います」

――来年のサンウルブズへは。きっと、スコッドの大枠にはリストアップされているのでしょうが。

「トップリーグでのパフォーマンスを含めての選考になってくると思うので、いまはあまりそこ(サンウルブズ)を深く考えず、残りのトップリーグでしっかりとしたパフォーマンスを出す。それが(未来に)繋がっていくと思うので」

――今度の発表後初となるトップリーグの試合は、地元の奈良・天理親里ラグビー場でのリコー戦となりました。10月6日13時、キックオフです。

「天理で試合ができるのは、僕にとっては幸せなことです。観に来てくれる、期待してくれる方も多いと思う。リコーにも(自身と同じ)天理大学出身の選手が多いので、すごく面白い試合になってくれるはず。クボタとしては、カンファレンスの上位に行くための大事な試合でもあります」

 立川の務めるセンター(インサイドセンター、アウトサイドセンター)のポジションでは現在、ラファエレ ティモシーとウィリアム・トゥポウ、サントリーの中村亮土、梶村祐介の4名が代表スコッドに入っている。

 ラファエレとトゥポウは日本代表の兄弟チームであるサンウルブズで主戦級として活躍も、国内所属先のコカ・コーラでは勝ち星なし。また王者サントリーに所属する中村は今季、新人の梶村との定位置争いで出番がやや減少。さらに梶村は豪快な突破で際立つが、当の本人は「自分はまだキャリー(突破)しかできていない」と、プレー中の連携や判断力に伸びしろがあるとする。

 そんななか、今季ここまで2勝2敗のクボタで奮闘する立川はプレーのインパクトに関する領域で課題を示されている。単独取材後はすぐにジムに入り、下半身強化に着手。次のリコー戦では本職の12番で先発とあって、注目度を高めている。このままで終わるつもりはない。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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