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出場停止明けの茂野海人、古巣のスタンドにあいさつした気持ちは?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2016、17年のスーパーラグビーでもサンウルブズの一員としてプレー(写真右)(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 相手チームのスタンドに、一礼した。

 トヨタ自動車加入2年目の茂野海人は9月8日、東京・秩父宮ラグビー場で国内最高峰トップリーグの第2節に先発。古巣のNECを29-5で制し、今季初白星を得た。

 試合後は前所属先のファンが集まるバックスタンドへ1人で駆けてゆき、お辞儀をしたという。トヨタ自動車のスタッフが伝えた。

 茂野は身長170センチ、体重75キロの27歳。攻撃の起点、スクラムハーフを務める。NEC時代の2015年にはニュージーランドへ留学し、オークランド代表としてITMカップ(同国の地域代表選手権)に出場した。2016年には日本代表デビューを飾った。

 昨季はNECからトヨタ自動車への移籍時、前所属先から新天地へ出すリリースレターを受け取れず。リリースレターがない場合は移籍後1年間公式戦でプレーできないという当時の国内ルールにより、雌伏の時期を過ごすこととなった。今季からは副キャプテンとして、グラウンドに立てている。

 試合に出たくても出られない時期を経て、古巣と戦った気持ちは。試合後のミックスゾーンで語った。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――特別な感情は。

「お世話になったチーム。元チームメイトに支えてもらってきたところもあります。行った先で成長した姿を見せる。しっかり、いま自分ができるプレーをする。正面を見て戦う。それが恩返しになると思いました」

――相手チームのファンに一礼。

「いままでお世話にもなりましたし、きょうも『茂野!』と名前を呼んでいただいていた。試合が終わってからは感謝の気持ちで、簡単ですけれどもお礼をしに行きました。自分の決断で違うチームに行ったなか、それでも応援してくれる人がいる。そういった方には感謝の気持ちを込めてお礼をするのが礼儀だと思うので」

――ご自身のプレーは。

「むっちゃ、不満です。僕の思っているテンポでボールを出せていない。フォワードにももっと早くフォールドする(動き出す)ように言っていますし、ブレイクダウンの質、僕のディシジョン(判断)やパスの質ももっと改善しないといけないです。試合に関しては、すべてにおいて納得していないです」

――力強い選手たちを組織的に動かすためにも、接点からテンポよくボールを出せるようになりたい。

「サントリー、パナソニックのようなチャンピオンチームになったら、そういうところの精度が高い。細かいレースに勝たないと、上位には残れない。ただ優勝を目指していると言うだけではだめ。出た課題を真摯に受け止めて改善していかないと勝てないと思うので」

――この時期の試合は、日本代表入りへのアピールの場でもあります。

「(日本代表の)トレーニングスコッドに入れもらっているという意識はありますが、まず目の前の1試合、1試合でいいプレーをする。それが、結果的にそういうところ(代表入り)にも繋がってくると思います。まずトップリーグの1試合、1試合で役割を果たしたいです」

 望んでいたプロ転向が叶わぬことからNEC離脱を決めた茂野だが、古巣の関係者やファンへの感謝の念は消えないという。ワールドカップ日本大会を1年後に控えながらも、いまは目の前のタスクに没頭する。

 トヨタ自動車は15日、秩父宮で日野と第3節をおこなう。前節ではジェイク・ホワイト監督から高評価を受けていた茂野は、ベンチスタート。試合終盤にエナジーを発揮する。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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