日野のトップリーグ初勝利、後藤翔太コーチどう見た?【ラグビー旬な一問一答】

試合直後に応じてくれた(著者撮影)。

 国内最高峰トップリーグに今季初昇格した日野は8月31日、東京・町田市野津田公園陸上競技場で宗像サニックスとの開幕節をおこない、33―3で同リーグ初勝利を挙げる。元日本代表スクラムハーフの後藤翔太・新テクニカルコーチが歴史的な一戦を振り返った。

 この夜の日野は防御で力を魅した。大外の選手が飛び出すことで相手をインサイドに封じ込めたり、一枚岩の防御網を敷いて強力なタックルを放ったり。

 前半36分に決まった橋本法史のトライは、自陣22メートルエリアで守り続けた先で相手のミスボールを前方に蹴り出したのがきっかけで生まれた(ゴール成功で17-3)。

 2トライを決めたことなどでマン・オブ・ザ・マッチに輝いたであろうアッシュ・パーカーは、杭を打つような突進とタックル、後半3分のペナルティーゴール獲得に繋げたジャッカル(接点で相手の球に絡むプレー。寝たままボールを手放さないノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘った)など渋い動きで光った。

 現役時代は早稲田大学、神戸製鋼で活躍した後藤コーチは、追手門大学女子7人制ラグビー部ヘッドコーチを経て現職。CSスポーツ専門チャンネル「J SPORTS」での体系だった試合解説でも人気を博した。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――まずこのゲーム、どう感じましたか。

「神戸製鋼でプレーヤーをしていた時は当たり前のようにトップリーグでプレーしていましたが、この試合に向けた準備のなかでは『トップリーグで勝つのは難しいことなんだ』と感じていました。いろいろな計算をした結果として、選手が(目指すプランを)体現してくれました。ただ、甘くない。もともとなめてはいませんでしたが、『勝てるかなぁ』なんていう世界じゃない」

――「トップリーグで勝つのは難しいことなんだ」。準備期間中のどの場面で、そう感じましたか。

「どうやって勝つかをシミュレーションしようと思った時、『あ、ここでも崩れない』『そこでも崩れない』と、相手をどう崩すか(の具体的な方法)がすぐには出てこなかったんです」

――自軍と相手のメンバーや戦術を照らし合わせても、トライを取る具体策が見えづらかったのですか。

「そうです。自分たちの武器と相手の能力を相対的に見て、(点を取るまでの道筋が)出てこなかったので。計算しながら、『簡単じゃないな』と思いながらやっていました」

――きょうは防御での我慢がゲームの軸になっていたような。エリアを取って、しっかりと防御網を敷く。極端な言い方をすれば「宗像サニックスの得意な点の取り合いに付き合わない、いわば面白くない試合展開に持ち込んだ方が優勢になる」というイメージでしょうか。

「それは、確かに。面白いかどうかではなく勝つかどうかで考えていますが、夏場のゲームはこうなる(ミスが増える)と決まっているので、勝つための選択をしたという形です。相手の防御システム、相手のアタックのオプションや考え方という情報は頭に入れていたつもりです。相手よりも、対戦相手のこと(日野にとっての宗像サニックス)のことを知れていたとは思っています」

――前半の防御局面では、鋭い飛び出しでタッチライン際のスペースを埋めていましたが。

「…あ、あそこは、もうちょっとうまくディフェンスをしたかったんです。内側に(相手を)入れ込んで抑えようというより、(むしろ)内側を開けすぎないようにしたかったんです。狙いとは違うところがありました」

――確かに後半になると、接点周りのタックラーが飛び出して相手を前方で跳ね返そうとしていました。修正をかけたようですね。それはそうと先程、スーパーラグビー2連覇中のクルセイダーズとのパートナーシップ契約締結が発表されました。コーチングメソッドの共有や選手の行き来などが期待されます。

「世界のノウハウが入るのは、スーパーポジティブです。彼らは、下部リーグからトップリーグに上がったことはないと思いますし、潤沢な資本のもとでやっています。日野と背景の違いはあります。ただ、世界一のマインド、ウィニングカルチャーがちゃんと(根付いて)、日野もそこの『一員』なんだという認識でできるようになればいいなと思います」

 感激の勝利にも決して浮かれないリアリストは、早くも次を見据えているだろう。日野は9月8日、愛知・ウェーブスタジアム刈谷で豊田自動織機との第2節をおこなう。