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春にはブランビーズ留学も。サントリー田村煕、出場停止明けのシーズンへ。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
日本代表スタンドオフの田村優を兄に持つ(写真:アフロ)

 サントリーに移籍して2年目となる田村煕が、出場停止明け最初のシーズンに挑む。

 おもに司令塔のスタンドオフを務める24歳で、国学院栃木高校、明治大学を経て2016年度に国内最高峰トップリーグの東芝入り。ルーキーイヤーから活躍し、同シーズン終了後の2月からはスーパーラグビー(国際リーグ)の日本チームであるサンウルブズへ帯同した。

 現在はサントリーに在籍し、8月下旬に開幕するトップリーグを見据える。春にはスーパーラグビー(国際リーグ)のブランビーズへ短期留学。15人制の国内タイトルを2シーズン連続で制覇している強豪チームの一員として、「去年優勝したチームに入ってどこまでできるか。まずは自分がいまできることをしっかりとやる」と誓う。

 5月28日、練習後に心境を明かした。まずは実り多きオーストラリアでの日々についてだ。

 

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――3月下旬から4月下旬まで、ブランビーズへ留学。いかがでしたか。

「色々と忘れないよう、ラグビーのこともそれ以外のこともメモをしてきました。一番、感じた事は、日本人はもっと自信を持ってやっていいんだということです。僕も最初は――サンウルブズでの最初の頃もそうでしたが――日本人対外国人ということでどうしても受け(身になっ)てしまったんですが、スキルだけを見たら向こうの選手よりもうまい日本人はいっぱいいる。それこそ強い、速いという選手は向こうにいっぱいいるんですが。パンフレットを見たら、選手はほとんど年下。もう、(自分は)若くないんだなと思いましたし、もっと自信を持っていいなと思いました」

――自信を持って戦えば、通用する実感もあったのですか。

「向こうでは言葉があまり通じないというマイナスの点もありましたが、やれないことは、なかったですね。スーパーラグビーレベルの試合には出ていないので何とも言えないですが、一緒に毎日練習していくなか、自分が要求するプレーについて(チームメイトに)しゃべれないなりに伝え、連携が取れた時は、(相手防御を)抜けたりもした。そういう部分で自信は持てました」

 スーパーラグビーのシーズン中だった2017年の3月31日、田村はわずか1季での東芝退社を発表。まもなくサントリーへの移籍が伝えられたが、当時の規定に伴い1年間の出場停止を余儀なくされた(サントリー移籍の田村煕が、1年在籍の東芝の仲間から受け取った言葉。【ラグビー雑記帳】https://news.yahoo.co.jp/byline/mukaifumiya/20170606-00071756/)。

 戦列を離れていた頃は、東芝への贖罪の気持ちを示しながら「支えてもらった分、プレーで返すしかない」と再起を誓っていた。注目のカムバックに向け、改めて意気込みを明かす。

――今季から、公式戦出場が叶います。

「去年は悔しい思いもしながら1日1日を積み重ねてきていましたが、振り返ってみると、長かったな、と感じます。最後にトップリーグに出たこともかなり前のことに感じられていて、(今季は)ルーキーのような気持ちで臨める。いいシーズンにしたいです。

(オーストラリアでは)ユニノースというクラブチームの試合に出ていたのですが、なかにはただラグビーが好きだというおじさんもいたり、横でバーベキューを始める方もいたりという環境のもとでプレーしました。だから改めて、トップリーグでやるのはすごいことなんだと改めて思いました。試合はキャンベラでやっていたので、マット・ギタウ(※)も見に来てくれたりしていました。彼もこういう場所から這い上がってきたんだということ、そういう選手とトップリーグで一緒にプレーできていて恵まれているなということを感じました」

※スタンドオフ、インサイドセンターとしてオーストラリア代表103キャップを獲得。田村とはサントリーのチームメイトでもある。

――東芝時代に候補入りした日本代表への思いは。

「最初に(サントリーから)声をかけてもらった時も、期待して呼んでもらっていたものの実力があったわけではなかった。振り返っても、そう思います。結果も残せていない。だからまず、これまでサントリーで積み重ねてきたもの、自分の強みをしっかり出す。(代表入りは)いい意味でイメージし過ぎず、自分のやることに集中し、楽しみながらやっていきたいです。サントリーは去年優勝しているチームで、コスさん(元日本代表の小野晃征)、ギッツといういいスタンドオフがいる。そんななかでも(沢木敬介監督に)出したいと思われる選手にならないと意味がない」

――2人はきょう(取材日の5月28日)が合流初日。練習後、田村選手の方からたくさん話しかけていました。

「海外に行って特に思ったんですけど、2人はプロ選手としてチームに来てもらっていて、この先お互い10年、20年もやれるわけではない。いる時にできる限りのことを聞かないと、と思っています」

――ギタウ選手、実戦練習に混ざれば防御の隙間へあっさりとパスを通していました。

「きょうはまだ、3割ぐらいの力でやっているんじゃないですか。僕らから見たらすごいと思いましたが、本人に聞いてみたら『まだ全然、感覚が戻っていない』ということだったので。そのあたりは繊細で、やっぱりプロの選手だなと思いました」

 

 チームは17日に東芝と練習試合をおこない(東京・東芝グラウンド)、21日のNECとのトレーニングマッチ(東京・サントリー府中グラウンド)を経て9月1日の開幕節(対トヨタ自動車、愛知・豊田スタジアム)に臨む。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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